【感想・ネタバレ】高熱隧道のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

黒部の自然の脅威に立ち向かい、隧道工事に挑んだ熱き男達の物語、それがこの小説を手に取った時のイメージ。
そのイメージは間違っていた、とまでは言えないけれど、そんな生易しいもんではなかった。荒れ狂う黒部の自然の前に、人を使う側の技師も使われる側の人夫も狂っていく様はまるでパニック小説。
そんな困難も乗り越えてのトンネル開通、完工で大団円…とも行かず、ラストの後味の悪さは最早ホラー。でもあれだけのことがあって終わり良ければ全て良しで片付けるのも、それはそれで後味悪いよなというのも確かで…最後の数ページは緊張しながらめくりました。
ラストは創作だそうだけど、綿密に重ねられた取材に基づいて書かれたとのことなので取材先からそういうこともあり得るという空気をビンビンに感じ取ったんだろうな…

0
2023年04月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ラストシーンの敗北感が印象的。

自然の脅威に翻弄され、多大な犠牲を払いながらも、やっと隧道を通すことができた。それなのに、逃げるように去らなければならなかった藤平たち。

今度は人夫たちの怒りが発火しそうになっている。これまでのことを思えば、とっくに発火していてもおかしくはない。臨界点はとうに越えている。今までは騙し騙しやってきただけにすぎないーーダイナマイトの自然発火と重なる描写だなと感じた。

すごい物語を読んだ。

0
2023年04月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

とても面白かった。

最初の方は、半沢直樹とか八甲田山みたいな感じかなーと思っていた。権力を持ったヤバイやつが金と力で推し進めていくのかと、で、この課長の藤平という人が苦労する話なのかと思って読んでいた。

違った。特に悪役は出てこない。読んでると、本当に工事中止が残念でならなくなってくるから、天皇と軍の力で無理矢理続行になった時はよかったとも思えた。

雪山に藤平と越冬隊を残して根津が山を下って行ったあたりは「あのヤロウ・・」と思ったけど、その後の自然発火事故でバラバラになった遺体を血まみれで運んでいるところでは藤平と同じように感動した。

しかしそれも違ったらしい。

藤平目線で話が進んでいくからか、藤平に感情移入して読んでいるけど「どうして人夫たちはあんなに熱くても働くのか」とか「人夫たちをまとめる秘訣はあるのか」という質問で、なるほど、自分は藤平じゃなくてその質問をしている発注者のような、もっと遠くにいる傍観者なんだなと実感する。

小説の最後は、あんなに惨たらしい目に合わせておいてタダで済むと思うなよという怨嗟の声が聞こえる気がしてくる。申し訳ない、と心に過ぎったところで発狂した千早を思い出した。

読んでる時は藤平から見た景色を見ているようだったのに、読み終わると人夫の事が気になって仕方がなかった。

人夫とかボッカとか結局誰なんだ、どういう経緯でそこにいるのかと。ネット検索ではいい書籍や記事を見つけられずにいたけど、そういえばこの前行った相模湖記念館で見た「このダムの建設には中国人捕虜と朝鮮人が」っていうのを思い出した。(もちろん日本人もいる)
それでまた検索すると“黒部・底方の声 : 黒三ダムと朝鮮人”にあたった。

この本はすごい。きっと私はこの先、黒部や仙人谷、志合谷、阿曾原谷などをテレビか何かで目にしたらこの小説を思い出すと思う。読み進めるのが恐ろしかったけど読んで良かった。

0
2023年02月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

会社の読書会仲間に紹介された本。
土建業の厳しさ、社会的責任を再確認しようと手に取ったが、衝撃を受けた。山岳工事におけるタコ部屋労働の話は想像していたが、ここまで人間に酷いことをさせていた時代があったとは。。

「僅か数十センチの断崖絶壁の道を吹雪の中歩く」
とか、
「地熱でダイナマイトが自然発火し、作業員の死体が散らばる」
とか、
「数階建の宿舎がまるごと宙を舞う」
とか、
とにかく想像を絶する世界である。
これだけの犠牲者が出続けているにも関わらず、国、発注者、技術者、そして作業員までもが、工事を放棄せずにトンネルを完成させることに執着するという精神状態も信じられない。

・「ここにトンネルを作りたい」という人間のエゴ、
・「死の危険を犯しても大量のお金が欲しい」という欲望、
・「技術者のプライドに掛けて貫通させたいから突き進め」という思考停止、
・「今の環境から抜け出したければ、とにかく完成を急ぐか、死ぬしかない」という極限状況は、
是非この本を読んで体感頂きたい。

2024年から、この高熱隧道も一般利用が可能になるという。もちろんいつか通って見たいという興味はあるのだが、この本を読んでしまった今としては、犠牲になった方々や、工事に従事した方々に恐れ多くて近寄りがたい。特に、今も廃墟として残っている当時の宿舎の写真をネットで見つけ、鳥肌が立った。

厳しい自然の力を利活用したいが故に、大自然に挑んだ結果、尋常ならざる犠牲を出した黒部川電源開発。戦争へと突き進む日本の闇を見せつけられた。

0
2022年08月26日

ネタバレ 購入済み

目を離せない展開

作者の徹底した現実感の表現は、どの作品でも心を捉えて離さない。関係が薄いのではないかと訝るプロローグが物語の大きな問題と深く関わってきたり、物語の中では些細な出来事に過ぎないのではと思っていると、皮肉なエピローグにつながったり。単なる事実の羅列のように見えながら、小説としての構成の見事さもその一因かと。

0
2020年10月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

壮絶。。ここまでして工事をする必要があったのか?見直さない、鼓舞して続けるというところに、軍国主義真っただ中の日本がどういう社会であったかを物語っている。。色々とひどいことが多すぎて、呑気に観光なんてする気分じゃなくなりそう。。この工事がもたらした経済効果っていったいどれだけあったんだろう。この時代、人の命がほんとに軽すぎる‥。合掌。

0
2023年09月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

黒部第三発電所でなくて,黒四ダムに行く前に読んだ。

いやー凄い工事だったんだ。

2022年11月に再読開始

0
2022年12月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

黒部渓谷は、人間が挑むのは到底不可能な世界
この渓谷は、人の住みつくことを頑強に拒否している。雪崩を起し崖くずれを発生させて、人の近づくことを許さない

そんな中、あなたはなんで働くのですか?
「国のため、トンネル掘師技術のため、金のため」
それぞれの思いをもってこの黒部第三に挑む

死者300内佐川組233名ノンフィクション
今では考えられない人柱国家公認プロジェクト

トンネル開通するまでは、それぞれが一つの薄い目標に向かっていたが、開通後の老人夫頭に寒気を感じた
■長い年月人夫たちを使ってきた経験、阿曾原谷事故以来はっきりとした形をとってきた人夫たちの異様な空気とダイナマイトの紛失の間に関係があるらしいと言うのだ。そして、根津、天知、藤平の三人は、急ぎ工事現場をはなれるべきだと言う。その人夫頭の眼に、暗い憎しみの光がただよっているのを見た根津の顔から笑いの色が消えた

自然は屈強、目先の人間や組織を恨むしかない

終始藤平目線が目立ったが、人夫目線のルポがあれば是非読んでみたい

今の平和ボケを目醒せてくれた

0
2024年05月11日

「小説」ランキング