【感想・ネタバレ】高熱隧道のレビュー

あらすじ

黒部第三発電所――昭和11年8月着工、昭和15年11月完工。人間の侵入を拒み続けた嶮岨な峡谷の、岩盤最高温度165度という高熱地帯に、隧道(トンネル)を掘鑿する難工事であった。犠牲者は300余名を数えた。トンネル貫通への情熱にとり憑かれた男たちの執念と、予測もつかぬ大自然の猛威とが対決する異様な時空を、綿密な取材と調査で再現して、極限状況における人間の姿を描破した記録文学。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

・あらすじ
昭和11年8月中旬、日本電力株式会社は黒部第三発電所の建設を開始した。
豪雨、豪雪、急峻な崖。
人を寄せ付けない大自然を相手に、欅平から仙人ダムまでの約6キロの隧道工事に命をかけた男達の話。

・感想
超絶面白かった…!!
立山黒部アルペンルートに旅行へ行く前に工事が過酷を極めたという黒部ダムとかその辺りにある発電所の背景でも知っとくか〜くらいのテンションで読み始めたんだけど、面白すぎて(内容的に面白いと言ってしまって良いのか分からないけど)あっという間に読み終わった。
(作品はクロヨンでも黒部ダムでもなくそれより前の黒部第三発電所建設時の話)

ずっーーーと「昭和11年っていつよ…ほぼ90年前じゃん…90年前にこんな人を寄せ付けない大自然相手に大規模工事を行った当時の人々すごすぎ。まじ感謝…ていうか自然恐ろしすぎ…。90年前って思ったより規則とかきちんとしてるんだなぁ」って思いながら読んでた。

高熱断層により166度の岩盤から熱湯が噴き出す隧道工事、危険なダイナマイト作業、襲いかかる大自然。
手に汗握る展開と人間描写が素晴らしい。
そしてあのラストに唸ったわぁ…人夫達の目覚め。
センチメンタルな人間ドラマな描写はなくて、対自然に挑む男達の戦い?(なぜここまでの犠牲を払いながらも工事を進めたのか。)がメインなので変なストレスがなくてそこも読みやすかった理由かも。
わかりやすい悪役がいたりとか、主人公が咄嗟の機転で窮地を脱して万々歳!みたいな作品ではない。

根津とか結構理想的な上司、責任者だった。
「ここで起こったことは俺が許可した、俺に全ての責任がある」的なセリフがあって、職場の責任者のくせに責任とらない無責任役職者とは使命感とか責任感が雲泥の差だなぁ爪の垢でも煎じて飲ませたいと思ってしまったw

好きな登山YouTuberが下の廊下(まさにこの作品の舞台になったルート)を歩く動画を以前みてたんだけど、今回この作品を読みながらその動画を改めて視聴しつつ、地形や位置関係を把握しながら読んでた。
文中に描写されている険しすぎる環境や断崖絶壁のあの場所はこんな感じなのかな?昔は絶対もっともっと危険な道だったはずと想像をめぐらせたり。
そんな場所を開拓し命をかけて工事してた人たちの凄さたるや尊敬しかないよーーー心の底から感謝の念を伝えたい。
まさにこの作品の舞台となったキャニオンルートは本来なら今年開通する予定だったんだけど地震の影響で延期になったので開通したら絶対にこの本を携えていくわっっ。

現代の人間の便利な生活は90〜100年前に現役だった先人達の血と涙と汗によって築かれたものなんだなと実感して改めて感謝しかなかった。
でもそうやって便利な世の中が当然で当たり前になってしまった私たち…黒部ダムにも犠牲となられた方々の慰霊碑があるんだけど色々な思いが胸中を過った。

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2025年03月19日

ネタバレ 購入済み

目を離せない展開

作者の徹底した現実感の表現は、どの作品でも心を捉えて離さない。関係が薄いのではないかと訝るプロローグが物語の大きな問題と深く関わってきたり、物語の中では些細な出来事に過ぎないのではと思っていると、皮肉なエピローグにつながったり。単なる事実の羅列のように見えながら、小説としての構成の見事さもその一因かと。

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2020年10月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

圧倒する自然と人間との戦いの記録。
ダイナマイトすら自然発火で爆発してしまう高熱な環境と、最後の人間の持つ冷たいまでの感情の余韻がすごかった。

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2024年12月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

黒部渓谷は、人間が挑むのは到底不可能な世界
この渓谷は、人の住みつくことを頑強に拒否している。雪崩を起し崖くずれを発生させて、人の近づくことを許さない

そんな中、あなたはなんで働くのですか?
「国のため、トンネル掘師技術のため、金のため」
それぞれの思いをもってこの黒部第三に挑む

死者300内佐川組233名ノンフィクション
今では考えられない人柱国家公認プロジェクト

トンネル開通するまでは、それぞれが一つの薄い目標に向かっていたが、開通後の老人夫頭に寒気を感じた
■長い年月人夫たちを使ってきた経験、阿曾原谷事故以来はっきりとした形をとってきた人夫たちの異様な空気とダイナマイトの紛失の間に関係があるらしいと言うのだ。そして、根津、天知、藤平の三人は、急ぎ工事現場をはなれるべきだと言う。その人夫頭の眼に、暗い憎しみの光がただよっているのを見た根津の顔から笑いの色が消えた

自然は屈強、目先の人間や組織を恨むしかない

終始藤平目線が目立ったが、人夫目線のルポがあれば是非読んでみたい

今の平和ボケを目醒せてくれた

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2024年05月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

壮絶。。ここまでして工事をする必要があったのか?見直さない、鼓舞して続けるというところに、軍国主義真っただ中の日本がどういう社会であったかを物語っている。。色々とひどいことが多すぎて、呑気に観光なんてする気分じゃなくなりそう。。この工事がもたらした経済効果っていったいどれだけあったんだろう。この時代、人の命がほんとに軽すぎる‥。合掌。

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2023年09月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

死体の描写が生々しいですが、過酷な工事を語るには、必要な描写なのだと思いました。

人夫たちがどんなに頑張っても1日1mしか進めないということがお話の途中でわかり、気が遠くなる思いでした。

実際に起こったことに基づいて書かれたお話だということで、真剣に受け止めて読み進めなければならないと思いながら読みました。

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2024年12月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

昭和10年頃黒部渓谷上流の仙人谷から下流の阿曽原谷付近の水路・軌道トンネルの掘削について、工事過程をベースに描かれた物語。阿曽原谷側から掘削を進めるにつれて上昇する岩盤温度。熱気。冬季も作業を進めるために起こる、谷での雪崩。全工区での死者が300名超のところ、佐川組請負工区で230名。非常に厳しい環境でトンネル工事が進む様子が叙述的に描かれている。
いっそトンネルなど開通してほしくなかった。

とは言いつつ、いつか水平歩道と下ノ廊下を歩きたいと思う。

三ノ輪の吉村昭記念館オススメ。

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2024年05月29日

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