【感想・ネタバレ】上海、かたつむりの家のレビュー

あらすじ

中国じゅうを熱狂させ、突如打ち切りとなったテレビドラマ『蝸居』の原作。
中国人さえ「大事実了!(あまりにもリアルすぎる!)」と驚愕した大ベストセラー小説。

地方出身、大卒、共働き、離れて暮らす子どもひとり……。
上海で暮らす若いカップルのささやかな夢は、
“かたつむりの殻のような狭すぎる住まい”から一刻も早く抜け出すことだった。

貧富の差の拡大、拝金主義、住宅問題、官僚の汚職、ローン地獄……。
上海を舞台に、中国人男女4人の可笑しくてやがて切ない夢と希望と現実を
100%リアルに描く、かつてない問題作。


──中国人は年収の100倍近い家をどうやって買うのか?
──発覚すれば厳罰なのに、なぜ公務員は汚職を繰り返すのだろう?
──中国人のホワイトカラーは日系企業をどう見ているのだろう?
──中国人のイメージする「日本人」とは?

「中国の不思議」を解き明かしてくれる本書は「小説上海現代史」の側面をもつ。
小説としてはもちろん、中国に、上海に関わり関わろうとする人、
今のリアルな中国を知りたい人の参考書がわりとなる1冊。


【目次より抜粋】
■貯金の増える速度は物価上昇の速度に、永遠に追いつかない
■処女のような新築の家が欲しいの
■消費は欧米にならえ、収入は南米・アフリカにならえ
■先に豊かになった人のために奉仕する
■結婚なんて、つまりは金勘定よ
■彼女にとって、家とはお墓なんです
■残業はアジアの文化だ
■愛人のいる男の生活はブルーカラーと同じである
■心の傷はなんとかなっても、面子をなくしたら男は終わり

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ハイビンの自己中心的なマンション購入資金集めに驚くが、子供を親に預けた状況や夫のアルバイト事件、良い子で彼氏にも恵まれていた妹の不倫などが立て続けに起こり、どれも他人事でなくひきつけられる。宋スンミンの結末はハッキリ言って大満足。これかとことん誠実になるかでなきゃ納得できない。人の心は石ではない。妻を、小貝を、傷つけたことを思い知って重く終わって良かった。
マイナス1はハイザオがあまりに性におぼれて色ボケになってしまってた点。性的には満足していなくても心がすっかり持ってかれてるとかだとさらに深かったと思う。

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2016年10月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

中国でこのドラマが大ヒットしたらしい。それだけ民衆の共感を得た、実体験に近い本ということなのだろう。

結婚して、子供を育て、家を買う。みんなが憧れる幸せの家庭のカタチ。でも、中国では物価がどんどん上昇しているので、家を買うために給料が追い付かない。だから、知り合いから借金をする、賄賂を渡す、グレーなものに手を染める・・・そんな姿を生々しく描いた一冊。目の前にドラマが広がり、一晩で一気に読み切ってしまった。

中国人は、「自分のために人を出し抜く」とか「見栄っ張り」とか言われるが、それは少し語弊がある気がする。過酷な競争社会の中で「自分達一族の生き残りをかけて」、少しでも有利になるように又は生き残った勲章として「価値のある(と思われている)ものを持つ」というのが本当の姿ではないか。

日本も競争社会だと言われたが、少しくらい競争に敗れたからといって、食べるのに困るわけではない。住む家がなくなるわけではない。でも、貧富の差が激しく、一時の判断が命取りになりかねない中国の状況を思うと、必死に家・地位・特権にしがみつく登場人物たちに涙せずにはいられなかった。

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2013年05月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

海萍,海藻,蘇淳,宋思明がメインキャラクター。

海萍,蘇淳の夫婦は家賃8500円、10平米(7畳程)の家にくらす。小さい子供がいるが、お金を稼ぐために祖母に預け切り詰めた生活をする。
海萍の妹海藻は一人っ子政策の中望まれない形で生まれ、唯一自分の存在を喜んでくれる姉を中心に生活する。恋人の小貝とは結婚の約束をしている。
宋思明は有能な公務員。妻子を持つが海藻に恋をする。

まず描かれるのは上海(中国)のお金事情。中流階級ながら海萍と夫の収入・貯蓄の驚くほどの低さ、半端ない生活の切り詰め方。海萍は有名大学に猛勉強の末合格し卒業したが、彼女が貰える月給はたった4万5000円。
対照的に宋思明の動かすお金の額は桁違いで、彼が海藻や海萍のお金の問題を軽く解決していまう。それだけではなく、人脈・コネの力で彼女たちのあらゆる問題を解消していく様子は、前半で描かれた海萍のお金を貯めるための苦悩だらけの生活との差はとてつもない。
次に描かれるのが宋思明と海藻の恋愛。始めは宋思明の一目惚れによる可愛らしく純粋な恋愛だったが、客観的に見るとやはりそれは宋思明にとっては不倫、海藻にとっては二股であり、途中から徐々にドロドロした複雑な状況になって行く。
後半は宋思明が汚職に染まり、苦しめられる。

《感想》
私はまだ19歳で社会に出たことがないというのがあり、また社会を知らなさすぎるというのが原因だと思うが、宋思明の汚職というのは最後まで何が悪かったのか理解することができなかった。
ただ宋思明のコネを魔法のように使いこなして厄介事を解決していくのが印象的でなんというか、それこそ魔法使いのように見えた、というのが単純な感想である。
海藻と宋思明の恋愛は、大いに共感・応援する気持ちはあったが、方やそれは非難されるべきものなのだということも理解していて、ジレンマを抱えながら読み進めた。私もこれから同じような状況に置かれるかもしれない。そして私も同じ穴に入ってしまうかもしれない。作中の2人の気持ちを十分に理解できるからこそ、考えさせられるものがあった。
結末は衝撃的だったが、小貝が幸せそうだったことはとても安心した。また海藻や宋思明の家族は深い傷を負っただろうが、強く生きて欲しい。というのが全て読んで思った感想である。(笑

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2020年11月20日

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