あらすじ
東天高校文化祭初日、開会式直後にDJネガポジと名乗る男子生徒による校内ラジオ放送「FM東天」がスタートした。リレーインタビューと軽快なトークで盛り上げていくが、どこか怪しい。早速DJにのせられた野球部の元エース・山則之は、壊れた大時計の針を動かそうと硬球をぶつけ始めるが……。一方、DJの発言に腹を立てた斉藤優里は、文芸部員の古浦久留美と共に彼の正体を突き止めるため、校内を奔走する。DJの目的はいったい何なのか? 華やかな文化祭に懸ける高校生たちの一日を、生き生きとした筆致で描いた青春ミステリの決定版。
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Posted by ブクログ
東天高校の文化祭を舞台とした青春ミステリ。青春ミステリといっても,ミステリとしての側面は弱めで,この作品の主たる謎は,「DJネガポジ」の正体は誰か?という部分である。
青春ミステリの「青春」の側面は,盛りだくさんである。野球部の元エースである山則之の斉藤優里への恋心,自分の投げたボールで壊れた大時計を改めて動かそうというチャレンジ,東天高校の文化祭の各種イベント,そしてこれらを盛り上げるDJネガポジによるラジオ放送…。すっかりおっさんになってしまった社会人にとっては,完全なるフィクションの世界として,気楽に楽しむことができた。こういう作品を,高校生時代に読んでいると,作品に登場する主人公,ヒロインと自分との境遇の差に凹んでしまうんだろうけど…。
しかし,完全に爽やかな作品という訳ではなく,やや重いテーマが裏には存在している。
DJネガポジの正体は,心の病と体の病により,学校を病欠している放送部の青石という少年。DJネガポジと放送部のメンバーは,文化祭一日目で大時計を動かすというイベントを成功させた。そして,二日目は,何らかのカタチでの復讐を計画していたという。その計画を見抜いたのは,この作品の探偵役を務めた古浦久美子という地味な少女
最後は,少女の脅迫により,復讐はしないと約束するところで終わる。文化祭の二日目は描かれないが,これは描かずに楽しい文化祭の様子を想像させるのが狙いだろう。
古き良き時代のアニメや漫画のような雰囲気の作品だが,最近ではこういう作品はライトノベルに多いのだろうか。ミステリ的な弱さはマイナスだが,作品の雰囲気は好み。登場するキャラクターも魅力的なので,★3としたい。