【感想・ネタバレ】能登半島地震 あのとき見た星空の下で 復興へ向かう5つの物語のレビュー

あらすじ

◆著者より◆
事実を早く広く端的に報じる新聞記事からは、ときにこぼれ落ちてしまうものがあります。でもその中にも、どうしても伝えたい話があります。この本は、それをまとめたものです。
朝日新聞の駐在記者として能登に来てから、たくさんの方に、2年前の元日のことを詳細に聞かせてもらいました。その中で度々、夜の寒さと澄み切った空気、停電で街の明かりがすべて消えたこともあったのだろうと思いますが、場違いに美しい星空のことを耳にしました。
「おとろしいほど、星が見えた」
「冬銀河が嫌みなぐらい、それはもう気持ち悪いぐらいのきれいさだった」
「飲まず食わずで、とにかく寒くて……。空を見上げたら真冬の星空がとてもきれいでした」
大きな余震が続く中、絶望と不安に押しつぶされそうになりながら見上げた星空のことを、多くの人が鮮明に語ってくれました。本書のタイトルには、そういった一つ一つの経験を書き留めて残したいという気持ちが込められています。
能登半島の先端にある50世帯100人の小さなまちの住民たちによる「復興会議」の歩み。地震と豪雨で「二重被災」したまちで再起の道を探るスーパーと、住民による住民のためのラジオ局。震災をきっかけに生まれた交流と未来をつくる拠点――。
能登に来て出会った人たちのこうした5つの物語を通して、ここで生きる人たちのいとなみの尊さが伝えられるといいと思っています。


◆目次◆
第1章 能登半島の先端、100人のまちの作戦会議
第2章 二重被災のまち 唯一のスーパーと新たなラジオ局
第3章 映画「幻の光」の恩返し 届けた1万人の気持ち
第4章 能登の悲劇も、やさしさも 海色の列車の「語り部」
第5章 茅葺き屋根から結んだ内と外 未来を耕せ

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Posted by ブクログ

1 with NOTO 能登の記者ノート
上田さんは,もちろん,毎日の新聞記事を書いているのだが,新聞で記事になったこと以外にも,朝日新聞社のデジタル連載企画「with NOTO 能登の記者ノート」にたくさんの日記を書いてきた。本書は,その「能登の記者ノート」を大幅に再編集し,まとめたものだという。
残念ながら,デジタル連載をすべて読むためには,有料の会員登録(朝日新聞)が必要だ。

2 5つの物語
本書に紹介されている〈5つの物語〉は,1度や2度の取材でできあがった〈物語〉ではない。それこそ,地域住民の中に入り,お互いに顔も名前も分かるようになるほどのお付き合いの中からできあがった〈物語〉ばかりだ。
収録されている〈5つの物語〉は以下のとおり。
 第1章 能登半島の先端、100人のまちの作戦会議
 第2章 二重被災のまち 唯一のスーパーと新たなラジオ局
 第3章 映画「幻の光」の恩返し 届けた1万人の気持ち
 第4章 能登の悲劇も、やさしさも 海色の列車の「語り部」
 第5章 茅葺き屋根から結んだ内と外 未来を耕せ

第1章は,珠洲市狼煙町が舞台。地震前から狼煙町に住んでいるIターンの若い女性と地域住民たちとの交流が描かれる。
第2章は,輪島市町野町が舞台。「もとやスーパー」と災害FM「まちのラジオ」の物語。
第3章は,数十年前に撮影・上映された輪島市が舞台の映画『幻の光』に関わる人やロケ地を訪ね歩く物語。
第4章は,「のと鉄道」に乗りながら,乗客たちに震災体験を語る「語り部列車」を巡る物語。
第5章は,輪島市三井町にある茅葺庵周辺に集まってきたさまざまな人たちの連携の物語。

著者による〈5つの物語〉の簡単な紹介を転載しておく。

■第1章では、能登半島の先端にある50世帯100人の小さなまちが経験した2024年元日の混乱と、その後1年以上にわたる住民たちの「復興会議」の歩みを描いた。第2章は、地震と豪雨で「二重被災」したまちを舞台に、再起の道を探るまち唯一のスーパーと、住民による住民のためのラジオ局を取り上げた。第3章は、元気だったころの輪島で撮られた映画を通した30年ごしの「恩返し」。第4章は、被災者自らが震災の記憶と教訓を語り継ぐ試み。 第5章では、震災をきっかけに生まれた交流と未来をつくる拠点について書いた。(本書「はじめに」6~7ぺ)

いずれの物語も,その物語の前提となる〈地域の歴史〉にも触れられており,これらの舞台について,まったくの初見の読者にもよくわかると思う。
そして,すべての物語がちゃんと未来を向いていることに勇気づけられた。

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2025年12月14日

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