【感想・ネタバレ】夫婦茶碗のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

これはもう、発表された時の衝撃度は、ホンマに本当に、でえれえものがあったのでしょうね。

町田康さんの文章!としか言いようのない、あまりに独特の文体。頭の中の、いまこの瞬間の一瞬一瞬に思い浮かべている気持ちを、そのまんま、ホンッマにそのまんま、地の文にした感じ。言葉と気持ちと文章が、全部直結してる感じ。

でも、それが決して読みづらいわけではなく、ああ、わかるわかる!って、こうこうこの感じ!って、納得できちゃう感じ。なんなんでしょうね、このシックリくる感。まさにコレ!って思えちゃう感。

町田さんが、めちゃめちゃ推敲に推敲を重ねて、吟味に吟味を重ねてこの文章を生み出しているのか、それとも脊髄反射のように、思い浮かんだ言葉を文章にしているのか、それは私にはわからないのですが、とにかうもう、自分の気持ちそのものを伝えるには理想の文章だと思います。

日本語を理解できて良かった。日本語ってこんなに表現力豊かなんだ、それを心の底から知らしめてくれたのが、僕にとっては、町田さんの小説なのです。本当に、この文章は文体は、素晴らしい発明だと思います。

0
2016年09月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

昭和の貧乏な夢みる若者夫婦の話。
だいぶ前に読んだのでうろ覚えですが、夫は元ミュージシャンで現無職。この物語の中で一時、職に就いて働くことに喜びを感じる瞬間もあるが、ニヒルな性格から再びふりだしへ。
一時裕福になった時、デパートで物色する夫婦のシーンがなんともほほえましかった。共に生きるということは浮いたり沈むこともあるってこと。と良いように解釈しましたが、おそらく作者自身のダメな部分を作品化したものかと(笑)
憎めない…。

0
2017年02月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「夫婦茶碗」と「人間の屑」の2本立て。
そういえば子供の頃の映画って2本立てだったなと思い出した。
なのでこれは2本立てなんだと思った。
帯に又吉の写真が載っていて、そのせいかどっちの主人公も又吉でイメージが浮かんでしまった。
でもそれがまた合ってるな〜と思った。

◎夫婦茶碗
無職。妻と二人暮らし。お金がない。食べるものにも困る。
何か仕事をしなくちゃとは思っている。
各家庭の茶碗洗い業はどうか、脳内で収支計算。
塗装の仕事にありついて順調にお金もたまってきたのに辞めてしまう。

冷蔵庫の卵の並べ替えには笑った。
手前から使って、減ったら新しい卵を手前に補充したら、賞味期限が滅茶苦茶になってしまう!!と
毎日必死で並べ替えてる。
この卵賞味期限問題って皆さんどうしているのだろう?
私はパックのまま保存して、古いものがなくなってからパックから出す。
または出さない。並べるの面倒なんでパックから1個ずつ取って使う。賞味期限問題は起こらない。

家庭にうるおいが欲しいと妻に訴えて、妻が言ったのが、
「床の間の布袋様にお着替えになって無職の反対になさいませ」
布袋様⇒置物⇒お着物 無職の反対⇒有職⇒夕食
童話作家になることにして作品を考える。子熊のゾルバ。
会話に俳句が出てきたり、妻に指輪とか買ってあげようとして冷蔵庫になってしまったり、百貨店のエレベーターの係の人が、
「あっ、2階、あっ、婦人服売り場で、あっ、ございます」と言うところとか、笑ってしまう。
引き込み線路、なぜか成人映画館のスクリーンに妻、妻が出産。
この人は奥さんが大好きなんだなーと思いつつ、 笑ってしまう。

◎人間の屑
これはもう、なんというか、テキトーに行き当たりばったりに生きるとこうなるというサンプル。
劇団、パンクバンド、「暴力の上手そう」な男から片山が持ち逃げしたアシッドを喜んでほぼ全部食ってしまい、祖母の旅館に逃げ込んだ清十郎。
庭に来る野良猫があまりに多くて、柄によって家系図をつくってみる。
チーヤ、スサノオ、アニキ、などと名前を付けて眺めていた。
旅館の従業員だった岩田、その友達の女性、小松とミオ。
婆ぁの旅館を逃げ出し、小松のところに転がり込んで子供が出来たと知って逃げ出し、ミオのところに。ミオにも子供が出来て、一緒に実家に戻り店を開く。
「うどん串カツ鉄板焼きのミオちゃん」それをやめてナイトクラブ「アナルインパクト」爆笑

新幹線で出会った、孫のコー君を溺愛するじいちゃん。笑える。
町田氏は、たまたま隣に居合わせた人を詳細に描くのがうまい。
登場人物や物語とはカンケーないんだけど、その言動に主人公はいちいち心の中で反応する。
これ、実をいうとワタシもそうで、つい人間ウォッチングしてしまう。よって苦笑い的に面白い。

清十郎は、なんとかしなくちゃと思っている。働こうと思っている。
だけど毎日同じ単純作業だと飽きてしまう。面白くないの。つまんないの。
で、こんなんどうかなって思いついてしまう。
面白そうなことと、ラクそうなことに行ってしまう。で、真剣に反省する。その繰り返し。
  (よく裁判とかで「被告は反省している」って
   言うけど、だからなにって私は思う。
   反省したからって、2度としないわけ
   ではないし、反省なんて何回でも出来る)
心を入れ替えて働こうとするけど、浴びるほど酒をのんでしまい、朝5時かと思ったら夕方5時だったとかになる。本や雑誌を買って読みふけってしまう。
ミオの娘・蝶々はかわいい。小松の娘・清子は不憫でならない。
こんな父親でごめん、と、ビデオを撮る。気持ちはピュアなんだけど、行動がアホ過ぎて笑える。


2作とも、うわ、ほんとクズだわ〜とか言いながら、メロンパンを食べて、
隣で猫が腹をだして転がってるのをナデナデして、
ケラケラ笑って読んでいるワタシは、なんなんだろうと思ったりする。
あ、そっか、たまたま隣に座った変なヤツかのように、主人公を「なにこの人」ってまじまじと見てる感覚なのかなあ??
面白いです。
どっちか選ぶならば、人間の屑のほうが好き。

0
2023年08月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『夫婦茶碗』
 働かないと金がない。金がなければ夫婦の会話が成り立たない。会話がなければうるおいがない。高度資本主義の社会では、働かない男は人間ではないとも言えるような世知辛い話である。
 主人公の男はある日一発逆転の活路を見出す。ずばりメルヘン執筆。メルヘン業界への参入。メルヘン作家になってこます。小熊のゾルバの冒険物語、構想段階でえらいことになっていき、文字を追うわたしの頭もグラグラしてくる。
 夫婦茶碗に茶柱を立ててこます。

『人間の屑』
 演劇→パンクロッカー→ニート(愛猫家)→ヒモ→餃子屋(売れない)→うどん屋→ナイトクラブ(アナルインパクト)→港湾労働者→・・・
 金に女にドラッグに、都合が悪くなったら逃げて逃げまくるまさに「人間の屑」のお話。最後の娘に当てたビデオレターで、等身大の自分を自覚するシーンは印象的。ほんまに清々しい屑やねんけど、猫を愛でている姿なんかはいとおしい。

 個性的、という言葉では表し足りない。町田康にしか書けない文章、物語だ。なんでこんなおもろいん。最高かよ。

0
2016年10月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

うまい具合に世の中と やっていくことが出来ない
ろくでなしが一念発起すると ろくなことをしないというお話。
呑気で楽天的、何をやっても失敗ばかりの落語の与太郎噺なのだけど、
一人称で紡がれるので、可笑しみの中にも“近くの哀しみは悲劇”な お話です。

常識と非常識を対比させているので、“堕ちていく感”は強まり、
常識人は読んでて一層不安を掻き立てられます。
でもね。軽妙な語り口と相まって、なんせ語り手が呑気な与太郎なもんだから、
ははは、とあっけらかんと読めてしまうのですよ。
主人公は、エレカシの宮本浩次のイメージがぴったりです。

「夫婦茶碗」では良くできたかみさんが
与太郎亭主に引き摺られて堕ちていく様子に不安と怒りを覚えるのだけれど、
最後は“気”という字の垂れが最後にひゅっとはねるような、
南佳孝の眠れぬ夜の小夜曲の男が一張羅の服を来て結婚の挨拶にいったような、
清々しさを感じます。
「人間の屑」のミオは常識を知らないから非常識な生き方が普通なのです。
一方 小松は常識を知っているから清十郎の非常識に気が狂ってしまったのです。
清十郎本人は常識人です。でも与太郎です。だから現実から逃げ続けます。
嘘をつき続けます。子供への自分の愛には嘘をつけませんでした。
たまらなく恥ずかしくなって、誰か殺してくれと叫びながら
彼はヤクザに突撃したのです。でもこれも妄想かも知れないお話でした。

筒井康隆が解説してます。

0
2013年11月14日

「小説」ランキング