あらすじ
「苦難に遭っている人に、慰めとなれば」との思いで綴られた日記形式の愛と信仰のエッセイ集。
「一人一人の命は限りなく貴重なものである。私の難病など取るに足りないものと思うが、苦難に遭っている人に、本書がいくらかでも慰めとなれば幸いである」(「あとがき」)。足がしびれ、硬直するなど難病・パーキンソン病との闘いを基調に、しかしその中でも多くの喜びを見つけ、感謝する日々を日記形式で綴った愛と信仰のエッセイ集。
「三浦綾子電子全集」付録として、立松和平氏が編んだ「こころに響く日記」に収められた綾子氏の日記の一部を収録!
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Posted by ブクログ
手に取った動機は「同病相哀れむ」気持ちから。
そう。僕自身がつい最近、晩年の著者を苦しめた難病、パーキンソン病の診断を受けたことが大きい。同じ病と闘いながら、後世に「日記文学の名作」とも評される本書を遺した著者の足跡に惹かれ、一気に読み終えてしまった。
著者・三浦綾子の名と、彼女の出世作「氷点」のことは知ってはいたが、著作を読んだのは本書が初めてでは無かったか。そしてこれが驚くほど読み易い。それが、単に平易で簡明な文章であるからのみならず、著者の一貫した、決してブレることのない価値観(信仰と云ってもよい)と洞察に裏打ちされた、表裏の無い無垢な視座、心情から湧き出た文章であるから、ということをつくづく感じ入る。
そして感服するのが、本書に描かれる夫の妻への献身ぶり。誰が真似できようか。
冒頭から最終ページまで絶え間なく綴られるパーキンソン病の症状や苦しみ。当時から30年超を経た現在と比べれば、治療法の効果や選択肢も大きく異なり、患者の苦しみも如何ばかりだったか。それでもその病を決して苦にせず、神が与えた使命と受け止め前向きに生き続けようとする著者の姿勢、眼差しには、キリスト教とは全く無縁の自分でさえも、甚く感銘を受け、尊敬の念を禁じ得ない。
同病の一人として、大いに勇気と力を与えられた。