【感想・ネタバレ】摂氏千度、五万気圧のレビュー

あらすじ

第13回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作。灼熱地球のポスト・アポカリプスSF!

深刻な高温化で人類がほぼ死に絶えて数百年――異星人が設置した密閉ドームで少数の生存者たちと暮らすエリー、高温の外界に適応した女系民族〈結晶の民〉の娘アサヒ、一族を失い人類の殲滅を決意するユズリ……過酷な環境を生き抜く者たちの罪と復讐の物語!

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Posted by ブクログ

本作品は第13回ハヤカワSFコンテストで優秀賞を受賞した。おめでとうございます。ちなみに今回は大賞は該当なしとのことなので、今回の応募作の中での最高位となる。著者の関元聡は、日経「星新一賞」2年連続グランプリ獲得という輝かしい経歴を持つ。帯にも「短篇SFの名手が挑んだ初挑戦!」と書かれてある。今回は初の長編作品での応募ということから、自然と期待感は高まる。

まず目次を見ると全体の流れが三部構成となっていることが判る。この三部構成、SFで記憶に新しい所では春暮康一の「一億年のテレスコープ」が挙げられる。SF以外でも、複数のストーリーを並行させて最後に一気に伏線を回収して収束させる手法を得意とする人気作家伊坂幸太郎の例もある。この二人以外にもストーリー並行の手法はいろいろな作品で見られる。従って今回の作品もそれらの流れを用いた作品とも言えるのだが、審査員達はどうやらこれを好意的には取らなかったようだ。私は情景描写が少し過剰に感じたが、審査員達は作者の文章力を一様に認めている。伏線の絡み合いも伏線の回収方法も大小含めて秀でたものがあるが、審査員達はそこは評価せず、科学的設定にいちゃもんを付けてくる。毎年毎年こいつらには本当に怒りを禁じえない。私はこれに対抗して、東京創元社で次の作品を発表してみてはいかがと毎年アドバイスしているのだが、ちょっと空しい。

小川一水の選評で、最後に「ただ、タイトルには詩情が欲しい」と書かれてあったが、これには激しく同意。確かに、人工ダイアモンドの製造条件をタイトルにするのではなく、人工ダイアモンドでは成しえない体内ダイアモンドの物性・特性を美化するタイトルにすると良い・・・売れるかもしれない。少し内容に影響する可能性もあるが、それを犠牲にしてでもタイトルをもう少し吟味するのもありかと考える。

本作品を読んでいる間は本当に深く作品に没頭できた。随所に見られる登場人物たちの激しい心の動きや静かな葛藤が絡みあい、読者を飽きさせない展開に見事に嵌ってしまった。これが文章力の素晴らしさの証なのだろう。次の長編への期待がもう止まらない。

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2026年01月15日

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