【感想・ネタバレ】心臓に毛が生えている理由のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

◎印象的な言葉
「隣人は引っ越すけど、隣国は引っ越さない。お互い隣国は選べない」P36
それでも、この時のナショナリズム体験は、わたしに、教えてくれた。異国、異文化、異邦人に接したとき、人は自己を自己たらしめ、他者と隔てている全てのものを確認しようと躍起になる。そして自分に連なる祖先、文化を育んだ自然条件その他諸々のものに突然親近感を抱いてしまう。これは食欲や性欲に並ぶような、一種の自己保全本能、自己肯定本能のようなものではないだろうか。~中略~でもコスモポリタリズムや普遍主義の名のもとに、それがあたかも存在しないかのような言動は、良くて偽善、悪くて欺瞞。抑制されたナショナリズムが暴走する恐怖を20世紀は、イヤというほど経験したではないか。P57
文学が旧いというか普遍的な真実を常に新しい方法で伝えようとするものとすれば、新聞は新しい真実を旧い方法で伝えようとしている。ともいえる。P142
愛する女に花を贈る習慣は、愛のみが生を少しばかり豊かにし生の完遂の先に新たな生の可能性を添えてくれることを思い出すためなのかもしれないP154
ある日別な本でロシアは異教徒のトルコ系民族を支配するのに、自分たちと同じキリスト教正教会のアルメニア人に任せていたという記述に巡り合った。そうか、直に支配を履行する彼らは本来ロシアが買うべき恨みを全部引き受けさせられていたのか。長年の理不尽の謎が解けたこの時以来、今世界中で勃発する民族紛争や、地域紛争で直接憎悪し、殺しあう人々を今現在の論理のみで裁いてはならないと思うようになった。その背後に、おそらくもっと大きな理由と、そのまた理由が幾重にも潜んでいるに違いないのだから。P160

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2013年04月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最後のエッセイ集。
コラムが多いからか、まとめて読むのには向かない。
こんなに、日本人の自覚を持ちながら、国際感覚に優れた人は、もうでてこないのではないか。

「わたしの中でルーマニアは10パーセント以下,もう完全なイギリス人なの」「国境なんて21世紀にはなくなるのよ」「民族とか言葉なんてくだらない」などという。番組はアーニャの言葉を追認し美化する形で終わっている。国や民族や言葉から自由になる,なんて格好いい生き方なのだろう,という感じで。
 しかし,わたしにはこのアーニャの発言が心に引っかかった。番組を録画したビデオを見たリッツァやヤスミンカの反応は,さらに過激だ。「胸くそ悪くてアーニャの発言のところでスイッチを切ったわ」。
 どうして二人の優秀なテレビウーマンが納得し,多くの日本人視聴者が感動したアーニャの発言に,わたしや他の旧友達が欺瞞と偽善の臭いを嗅ぎ取ったのか。そこに日本人の考えるグローバル化と本来の国際化のあいだの大きな溝があるような気もした。
~『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』を書いた理由~より

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2011年06月02日

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