あらすじ
日本漁業が危うい。担い手は減り続け、生産量は40年前から7割減、30年後には漁業者がいなくなり、日本人の食卓から国産魚が消えるという声もある。中国との漁獲競争、温暖化による環境変化、エネルギーコスト上昇など、かつて世界一の漁獲量を誇った漁業を取りまく状況は極めて深刻だ。輸出拡大や企業進出、資源管理など、国が進める水産業改革は本当に有効なのか――漁業と魚食文化を守るために、渾身の論考!
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Posted by ブクログ
本著は、日本漁業の構造的問題を鋭く突いた前著から10年を経て上梓された、著者の第2作である。私自身が前作を読んでいないため、これは想像のになるが、前著がマクロな視点からの問題提起であったとすれば、今作はそこから派生した個別具体の課題を掘り下げた「各論」としての性格が強いのではないか。そのため、一見すると論点が多岐にわたり散漫な印象を受けるが、それは変革期にある漁業現場の複雑さを反映しているとも言えるだろう。
内容は一貫して、近年の官邸主導による水産改革(漁業法改正など)に対し、批判的論考が目立つ。著者の立ち位置は、既存の漁協組織や漁師の営みを、単なる効率化の対象ではなく、地域社会を支える不可欠なインフラとして捉える「現場主義」に根ざしている。養殖業や海業の推進など、拙速な市場原理の導入が、長年培われた漁業秩序を破壊しかねないという著者の警鐘は、持続可能な一次産業のあり方を考える上で極めて示唆に富む。
一方で、批判の矛先が行政側に偏っている感は否めず、提示された論理を鵜呑みにすることには慎重でありたい。背景知識を補完するためにも、水産庁の公的データや、異なる立場(市場開放推進派など)の論考をあわせて参照し、多角的な視点から日本漁業の進むべき道を検証していく必要があると感じた。