あらすじ
板橋拓己氏推薦! 民主主義の再生への道を提示
ベルリンの壁崩壊から三六年、今秋十月にドイツ統一から三五年を迎える現在、「東西ドイツの差」は依然として様々な分野で残り続け、とりわけ東ドイツ各州では、移民政策に異を唱える右翼ポピュリズム政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が多数の議席を獲得している。本書はこの現状への強い危機感のもと、統計やデータを駆使し、その背景にある東ドイツの社会的、政治的、文化的状況を統一前夜から現下まで論じる。
民主主義の凋落、権威主義の台頭は、米露をはじめとする欧州各国や地域で見られる現象だ。東ドイツの右傾化もこれに連なる問題として考えられる。東ドイツの状況は、資本主義の西ドイツと合体することによって冷戦を終えた旧共産圏の地域の実例としても貴重だ。もともと西ドイツで誕生したAfDが、東ドイツ各州で深く浸透している現実は、それが「東」の問題であると同時に「西」の問題でもあることを如実に示している。そのような観点から、民主主義の衰退、移民問題や排外主義に危惧を抱く日本の読者にも、本書は大いに示唆に富む。
実績多数のドイツの社会学者による、警世と提言の書。「バイエルン書籍賞」受賞作品。
【目次】
凡例
はじめに
第1章 適応の代わりに骨化
第2章 制止された民主化
第3章 起こらない一九六八年
第4章 東ドイツ人のアイデンティティ
第5章 政治的な対立状況
第6章 民主主義の漸進的損害
第7章 参加の実験場
謝辞
訳者あとがき
原注
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
この手の本は早く読まないと、すぐ情報が古くなってしまう。なのでかなり急ぎ目で読んでみた。
完全日本人の私でも、これまで言語化こそしてなかったにしても2つのドイツが未だにあるような違和感はずっと感じており、それを今回、社会学者らしい視点や切り口で論じてあったので、モヤっとしていたものが見える化された感じだ。
元々同じ国だった国に、ある日突然国境線が引かれ、別々の道を歩む事になって、いざまた1つに戻ると言っても、元さやにはスッキリ収まらない、と言うのは、ある意味、誰にでも想像にたやすかったはずなんだけど、、、、。でもやっぱり、当時のあの映像 (壁を壊してるやつ)を実際私もテレビで見てて、歓喜の中、1つになるぞって感じだったのに、、、
現実は厳しく、そして今、更にこんがらがっている感じなんだろうなぁ…
1990年代半ばに当時学生だった私は、何度か旧東ドイツ地域を旅行したけれど、東にいるんだなぁという感覚は物凄いあった。学者でも何でもない私レベルでも、この本に書かれている事が、あぁそうだろうなぁと実感として認識できる。
国境や国家、政治体制ってこんなにも人を変えるものなのか?壮大な実証実験を見てしまった感じ。
個人的には、東が劣っていて西が優れていたと、パキッと割り切れるものでは無いと考えています。東ドイツには東ドイツとしての良さがあり、色々あってもそれなりに穏やかに日常生活を送ってきた訳で、それらの過去や尊厳を踏み潰すような事なく、三方よし、というようなVereinigungであって欲しいと思っている。
元さやに戻ったカップルだって、そんなに嫌なら別れれば良いのにといっても、喧嘩しながらずっと付き合い続けている人たちもいたりして、なんかそんな感じで、AfDみたいな変な誘惑に惑わされる事なく、最終的には戻るべき所に、あるべき姿に再構成される事を願っています。
大好きなドイツ