あらすじ
青木冨貴子、9年ぶりの大作ノンフィクション刊行
■没後45年 ジョンの生と死の真実を明かす
音楽と政治、ヨーコ・オノとの出会い、精神世界への傾倒、日本への関心…本人は何を考え、ファンは何を見ていたのか?
狙撃犯・チャップマンが著者に語った「空白の真実」とは?
40年間の取材の果てに見出した執念のノンフィクション!
■英雄の魂、殺人犯の運命
「イマジン」に裏切られた男は、刑務所でいま何を語るのか?
彼は笑みを浮かべ、握手を求めて来た。差し出した手が氷のように冷たいのには驚いた。「君は誰より粘り強いリポーターだよ」
開口一番こう言った。親しみを込めて半分冗談めかしたような口調だった。
(本文より)
〈本書の内容〉
第1章 チャップマンからの手紙
第2章 運命の出会い
第3章 ヨーコからの電話
第4章 魂の源流
第5章 音楽と革命
第6章 軽井沢の夏
第7章 殺害パンフレット
第8章 グローリア洋子の証言
第9章 ジョン・レノンが死んだと想ってごらん
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Posted by ブクログ
あのジョンレノンを殺した犯人に逢いに行って「なぜ殺したのか?」と、それを聞きたいがために40数年もの歳月を経て実現させた青木冨貴子という女性はいかなる人物なのか、と興味を唆られた。
犯人のマークチャップマンは慢性妄想型統合失調症であった。妄想が妄想を生み、こうあらねばならぬと思い込み、思い込んだら突っ走る以外に道はない、そういう病氣であった。判決では20年以上の無期懲役が言い渡された。
著者は、ジョンレノン、ヨーコオノ、マークチャップマン、グローリア洋子(チャップマンの妻)の4人の生き様を実に克明に描いておりジャーナリスト魂を感じさせる。その鋭敏な感性はドキュメンタリー映画を観るような一見サラッとした中に、核心を突いた表現力が散見しているのだ。
ジョンの祖父がジョンレノンと同じ名前であり、この祖父がアメリカに渡ってプロの職業歌手として人生の大半を送ったことや、父のフレッドは船乗りで1年の殆どを海上で過ごした。だから、ジョンとの接触も少なかったと思われる。ジョンの才能はむしろ祖父の血を引いているのでは•••
小野洋子の育った環境は、所謂、上流階級で生活には何ひとつ困らなかったが家の仕来りと教育過多に悩んで両親の愛情に窮屈なものを幼心に感じながら育った。
他方、著者とチャップマンとの電話でのやり取りの中で、際だったシーンがあった。チャップマンが「今度逢う時はあなたの写真を持参して欲しい」と言った。憧れのジョンを殺し、時に悪霊となって自失状態で暴君と化すその男の言葉に著者は戦慄を覚えたのである。それから途方もなく長い時間が流れて再び刑務所でインタビューすることになる。
妻のグローリアとの接点も一筋縄にはいかなかった。世間からの誹謗中傷、罵詈雑言、非難の嵐は連日の如くグローリアを襲った。殺人犯を夫に持つ宿命なのか。長い間、人と逢うことを拒絶してきた。著者がグローリアに宛てた手紙の内容に触発されたグローリアは、著者と逢うことを決心する。
この本には感動する場面がいくつもあり、単なるルポルタージュに終わっていないところに価値がある。いずれこの本を文庫化して永遠に読みつがれることを期待してやまない。
さいごに、チャップマンはなぜジョンを殺したのか?という問いに対して、妄想の果ての「ジョンを殺さないと前へ進めない」という呪縛から逃れることが出来なかったことが真相である。