【感想・ネタバレ】なぜ貧しい国はなくならないのか(第3版) 正しい開発戦略を考えるのレビュー

あらすじ

【開発経済学のベストテキスト 待望の全面改訂版】
貧しい国々はなぜ浮上できないのか。それは誤った戦略がとられているからだ。適切な政策さえとれば、途上国も成長可能だ。本書は、貧しい国を浮上させる術について知りたい人々のための書。経済成長の最適な戦略を、理論と現場を熟知した経済学者が最新のデータに基づいて解説し、日本の衰退を回避するための提言「低迷する日本経済への応用」を新規掲載。


【目次】
第I部 何が問題なのか?
第1章 開発経済学とは何か?
第2章 貧困は減っているか?
第3章 なぜ貧困を撲滅できないのか?
第II部 何が起こっているのか?
第4章 飢餓は是が非でも避けたい
第5章 東アジアから何を学ぶか?
第III部 してはいけないこと、しなくてはいけないこと
第6章 途上国がしてはいけないこと
第7章 途上国が「豊か」になるためにすべきこと
第8章 低迷する日本経済への応用
第9章 世界がもっと真剣に取り組むべきこと

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Posted by ブクログ

豊富な統計データを基に事例を紐付けて解説していく統計解析本。テーマはタイトルの通り、「なぜ貧しい国はなくならないのか」。開発経済学的な見地からその問いに挑む。

貧しい国は、この世界における貧しい役回りを担わされている。教育・医療・インフラ・制度が弱く、税収が増えず投資ができない。先進国による知財、ブランド、金融やルールの存在。仮に国内にエリートが育ったとしてもと国外の利益と結びついてしまう。そうして貧困国は構造固定され、モノカルチャー化されていく、というのが今まで読んだ本からの私の認識。本書もそこから大きく逸脱するものではない。

この構造固定だが、クラスメイトのヒエラルキーや社会的身分の固定など、国家単位ではなく、民間レベルでも存在する。勝者がルールを作るという残酷な現実が弱者の身分固定を齎す構造は、単位の大小に関わらず、競争し合う対象にはついて回る摂理だ。だからこそ、それを修正する社会的な仕組みがある事が望ましいのだが、ほとんどの国家や社会では「従順な大衆の階層固定」を前提としている。ある程度の収入や「健康で文化的な最低限度の生活」をセーフティラインとした生存権を掲げ、最低限度を定義しながら。

ー 技術水準が低いときには、技術水準の高い先進国の技術を模倣することによって経済は急成長するが、模倣の余地が相対的に減少し、自前で技術開発をしなければならない先進国段階に到達した時期には、経済の成長のスピードは鈍化するように思われる。また皮肉なことに、技術水準が高まった時期には経済の成長力は鈍るが、これは自前の技術を開発するとなると「生みの苦しみ」があるからであろう。

ー 日本のODA 総額は1970年から80年代を通じて増え続け、1989年から2000年までほぼ毎年のように世界第1位であった。私見だが、そのことが「日本はODAを出しすぎである」という国民の意識につながっていったように思う。ちょっと冷静に考えればわかることだが、ある国が援助に熱心であるかどうかは、ODAの総額ではなく、GDPに対するODAの比率、あるいは国民1人当たりのODA 負担額で考えるべきである。人口が多いために総額でのODAが多くても、1人当たりの負担が少なければ、その国はODAに積極的であるとはいえない。日本が、まさにそのケースであった。ODAの国民総所得に対する比率は、1990年ごろで0.3%であり、決して国際的に高い水準ではなかったが、そこから減少を続け2007年以降はしばしば0.2%を切っている。つまり「日本はODA大国ではあったが、ODAに特に熱心ではなかった」というのが、正しい認識である。

ー バングラデシュのアパレル産業の発展の経験が貴重なのは、海外から学ぶことの重要性を示したことにほかならない。しかし別の言い方をすれば、そうした「東アジア的発展」が「南アジア」でも起こりうることを示した点で重要といえる。その後バングラデシュでは、製薬産業も「海外から学ぶ」ことをベースに発展している。なお大宇は、バングラデシュ経済には莫大な利益を与えたが、ビジネスには失敗した。だからバングラデシュでは、従業員を徹底的に研修するような第2の大宇はいかなる産業にも現れてはいない。

ー 産業の発展の源泉が「革新」にあるという点では、先進国と途上国で相違はない。異なるのは、途上国が先進国から科学や技術や経営のノウハウを学ぶことができるのに対して、先進国は「革新」の大半を自力で開発しなければならないことである。

革新が必要だが、模倣のような他者からの学習だけでは革新は得られない。オリジナリティのある学習分野を見い出さねばならない。

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2025年12月29日

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