あらすじ
3・11後の被災地で語られた「幽霊」の噂を丹念に取材。
亡き人を身近に感じ、ともに生きる “スピリチュアルな復興”の記録!
昔話や民間伝承と重ねつつ「死者の声」に寄り添う試み。
(目次より)
迫りくる危機と虫の知らせ/生死を分けた不思議なできごと/「私に気づいて」という訴え/「この子だけでも」という切なる願い/あの日に帰りたい/止まった時間/「私たちは生きているのでしょうか」/復興が気になる霊たち
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
被災地で、その土地の人々、また復興などの作業に当たる人々の中で語られる幽霊譚を集めた1冊。過度にホラー·オカルトに傾倒することもなく、かと言って冷淡でもない絶妙な温度感で描かれている。
「抗えない強い力により、親しい人々と引き剥がされ生死を分かたれた人間の心理」としての幽霊譚、いわば「生きている人間による『こうであってほしい(非業の死ではあっても死後幸せに暮らしていてほしいなど)』という心理の投影としての幽霊」というものを考えており、そういった話を期待して読んだが、身内などの生存や幸福を願う幽霊、遺体の発見や帰宅を願う幽霊、自身の死に気付いていない幽霊など、幽霊側に願望のある話が多かった。期待したものと違ってはいたが新しい発見もあり興味深い。筆者が幅広い分野に造詣を持つことが察され、神話や民話、民俗学的知識などを織り込み分析している部分も多く、しかし読みにくいということもなくするすると読めてよかった。
読みやすくわかりやすく興味深く、温度感距離感も適切で全体としては良書といえるのだが、本書の中で靖国神社を「死者を悼むための施設」として描き、参拝するのも自然なことではないかと述べており(A級戦犯の合祀や近隣諸国への加害の歴史、またそれに関わる諸国民感情などには一切触れていない)、配慮が無いこと、そもそも靖国神社に言及する必要があったのかも疑問であり気になる点である。
また逆に触れられておらず気になったのは遠野物語の津波で亡くなった妻の幽霊の話である。遠野物語のエピソード自体は各所で引用されているので筆者が知らないはずはないと思うが、有名すぎるためわざわざ掲載せずとも良いと考えたのだろうか。少し残念に感じる。
Posted by ブクログ
読みたいと思っていた本が文庫本になったので買いました。
複数の人が見た、と言った事実からすると、本当にその時期にそういうことがあったのだと、思います。
荒俣宏の帝都物語を読んだこともあったので、ベースに流れている、神、仏と日本の関わりに関する記述は、違和感なく読めましたが、人によっては苦手かもしれません。
亡くなった方にまつわる不思議な出来事の数々は、亡くなってもなお、人は人なのだと再確認させてもらいました。
Posted by ブクログ
宇田川敬介『震災後の不思議な話 三陸の怪談 増補文庫版』飛鳥新社。
東日本大震災を民間伝承や民話、不可思議から描いた作品。恥ずかしながら怖いもの見たさの興味本意で読み始めたのだが、作品全体に暖かさを感じる秀作であった。
あの未曾有の大震災により我々は自然の猛威と人間の無力さを痛感した。思い半ばで死を受け入れざるを得なかった多くの方々、家族を失い、故郷を失い、生きることに罪悪感を感じている多くの方々……思い出せば哀しい気持ちになるが、前を向いて生きていきたい。
本体価格700円
★★★★