あらすじ
グラフィックデザイナーの斎木が取引先で紹介されたのは、画家として成功した幼馴染みの神成だった。斎木が羨望してやまない才能を持ち、今は亡き斎木の姉・朋と魂で繋がっていた男。朋の死は斎木に罪の意識を、神成には斎木への憎悪を植えつけていた。そして死者が見える斎木の左肩には、今もなお朋がいるのだ。十年ぶりの再会は、斎木を過去に……まだ神成が斎木を慕い、姉が生きていた葛藤の日々へと引きずり戻していく……。文庫2冊分の超大作で読み応え充分!! 梨とりこ先生の口絵・挿絵収録。
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Posted by ブクログ
手に取った分厚さに思わず怯み積ん読してましたが、
勢いで佐田さん作品3冊目。
今回も凄まじい執着攻でした……というか、この執着攻は
もう佐田さんデフォなんでしょうか。
読んだ作品が全て同じ傾向だったので、正直食傷気味
というか、またこのパターン??
という気持ちではありましたが、悔しいかな読み
始めるとあっという間に惹き込まれてしまいます。
内容はもうとにかく重い。
知的障がいでありながら類い希なる画才のある双子の
姉を持ち、隣家の幼なじみもまた天才的な画才を持つ。
そんな受は健康体だけれども画才はなく、プロの画家
であり絵画教室を開く父は才能のある姉と幼なじみ
である攻ばかりを溺愛。
そして母もまた姉にばかり愛情を向け、寂しい気持ち
を抱えながら受は姉と攻に対して激しく嫉妬する。
姉を疎ましく思うあまり、とんでもない過ちを犯して
しまった受は、自分を取り巻く環境の全てに苦悩し
逃げるように東京で生活をしてたんですが、なんか
もうこの受の環境が完全に蟹工船状態でBLではない。
再会した攻からは過去のことや学歴詐称を引き合いに
脅迫され関係を持つんですが、今回も同じ展開。
ステレオタイプの攻で、同じように受が毛嫌いし
拒絶しまくりでも最後にはほだされる、という流れ
なんですけど、評価を高くしたのはBLを抜きにした
部分に凄く共感したから。
就職難や過酷労働、才能の限界に、嫉妬や羨望と
いったどす黒い感情に振り回される人間。
そして障がいを持った家族をとりまく環境。
決してきれい事でなく、目を背けたい部分をガンガン
ついてくるお話に胸が痛みます。
そしてラストが個人的にとても好きでした。
過去の姉と攻の日常のワンシーンを、受が攻と一緒に
その場面を再現するかのように演じる。
とても美しく、映画の中のようで、透明な光がキラキラ
と降り注ぐようなあたたかいものを感じました。
霊としてそばにいた姉が消えていくシーンは、涙なし
には読めませんでした。