あらすじ
原爆で全滅したクラス全員の死までの足どりとさいごの姿を求めて、
8月6日から15日までを再現する。
1985年第33回日本エッセイスト・クラブ賞&1985年日本ジャーナリスト会議JCJ賞奨励賞受賞作
8月6日、勤労動員にかり出された級友たちは全滅した。当日、腹痛のため欠席して死をまぬがれた著者が、40年の後、一人一人の遺族や関係者を訪ねあるき、突然に逝ったクラス全員それぞれの足跡をたどりながら彼女らの生を鮮やかに切り取った貴重な記録。「(遺族の)辛すぎて話したくない気もち、その後の40年間の苦しみも含めて、全員のことを書き残したかった。また同じ組で机を並べていた私が書く以上、単なる被爆記録でなく、一人一人を人間として書きたかった。」(あとがきより)
解説=山中恒
「広島市に住んでいる人が、雑魚場地区(爆心から約一キロの地点で多数の少年少女が死んだところ。第二県女の碑もここにある)の碑を見て、こんなところに碑があるなど知らなかったと驚いていた。風化に、私も衝撃を受けた。文庫版六刷を多くの人に、できることなら中、高校生に読んでもらい原爆の実相を知ってほしい。年若い、少年少女たちが犠牲になったことを忘れないでほしいと願う。(……)私が心の傷を忘れられる日があるとすると、それは、核兵器が完全に廃絶される時と思っている。被爆者のできることは実相を後世に残すことしかない。戦争を知らない若い人々にとりあえず、この本を読んでくださいとお願いしたい。」(「文庫版六刷にあたって」より)
【目次】
序章 8時15分―広島市雑魚場町
第1章 炎の中で
第2章 学校に帰った級友たち
第3章 “南へ”―業火に追われて
第4章 島へ
終章 8月15日
章外の章(1)耐えて生きる
章外の章(2)原爆と靖国
“スキャンダル”のあと―『広島第二県女二年西組』余聞
62年目の再開―『広島第二県女二年西組』余聞②
解説 生涯にひとつの作品 山中恒
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Posted by ブクログ
爆心からほど近い地点にいて被曝し、大火傷を負って亡くなった女子生徒たちの壮絶な記録。少しの差で生き残り、それに負い目を感じている人たちの苦しみの記録でもある。
当時庶民がどんなふうに日常生活を送っていたのかがよくわかる内容だった。地域差もあるだろうけれど、国民みんなが戦争に駆り出されていたと言っていいのだろう。使えるものはなんでも使うといった状況だったようだ。今ではやっぱり考えられないことが沢山起きていた。
なにより、筆者のクラスメイトひとりひとりの行方を追っているのが凄かった。「普段はこういう子だった」という思い出とともに語られる死の間際の姿は、あまりに苦しくて何も言葉にならない。最期の瞬間まで「お国のために」と信じていた子や、周りにお礼を言って死んでいった子の、その純粋で高潔な心を利用した権力者には激しい憎しみが浮かんでくる。筆者は終戦当時自分の国の不正を知り、騙されたことを知った、とあった。それが怒りに変わるのは自然なことだと思う。
この記録の中で、自分自身も大変なところを食べ物や飲み物を分けて親切にしてくれたり、被曝した子どもを家に帰そうとしてくれる大人たちがいたことに涙が出た。
水道が出ていた・電車が動いていたという話があり、その裏でおそらく使命感を持って仕事をしていた大人がいることにも救いを感じた。
戦争はもう二度と起こしてはいけない。遺族がその経験を話せる・聞けるようになるまで何十年とかかっていることを、みんなで受け止めねばならないと思う。
筆者の語るクラスメイトみんなの個性が、本という形で残されてよかった。