【感想・ネタバレ】ワイルドランド:アメリカを分断する「怒り」の源流(上)のレビュー

あらすじ

連邦議会襲撃に至る20年間の軌跡

2013年、米主要紙誌の特派員として十年に及ぶ海外生活から帰国した著者は、熟知していたはずの祖国アメリカが大きく変貌してしまったことに驚愕した。自分が浦島太郎になったかのような感覚を覚えるほどに、そこかしこで変化が起きていたのだ。その変化をもたらしたものは何なのか。トランプを大統領にまで押し上げたうねりの源はどこにあるのか。混沌の中から何か新しいものが生み出されようとしているのか。それを突き止めようと取材を開始する。
著者は、自分の人生で大きな関わりを持つ三つの場所(コネティカット州グリニッジ、ウェストヴァージニア州クラークスバーグ、イリノイ州シカゴ)を再訪する。取材対象は医師からヘッジファンド業界に転身するもインサイダー取引で犯罪者になったかつてのエリートに始まり、兵役を終えて帰国するも精神を病み殺人を犯してしまう元海兵隊員まで多岐に及んだ。彼らの人生の軌跡をたどることで、アメリカに「分断」や「怒り」をもたらした生々しい現実が浮き彫りになる。

「トランプ再来」に揺れるアメリカを理解するうえで重要な視座を提供する傑作ノンフィクション。

[目次]
プロローグ
1 ゴールデン・トライアングル
2 遺憾の意
3 丘の上の宝石
4 泥の街
5 みんながやっていることだから(その1)
6 みんながやっていることだから(その2)
7 みなさまがた
8 ヤク漬け
9 購買力
10 タマなし野郎
情報源についての解説

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Posted by ブクログ

1990年代石炭を採掘する安価な方法『山頂除去』が企業によって編み出される。山の頂を爆破して吹き飛ばし、石炭を採掘。ドリルドリルドリルの始まり。企業誘致のため、州民に分配する税制の導入は阻止され、環境破壊を促進する全ての規制、税制、平等、そして政府そのものの正当性に対する国民の意識が変革。この変革こそがのちにトランプの政治的主導権獲得に道を開くことになる。

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2025年03月26日

Posted by ブクログ

本書のタイトルは、2018年カリフォルニア史上最大の原野火災が直接の原因(牧場主の過失による火花の発生=州から免責された)だが、本当の原因は何十年にも及び積み重なった要因が極限に達したことによる結果であり、アメリカの国家ないし価値の変容=荒野のような現状を象徴している。
本書の対象とされる期間は、2001年9月11日の同時多発テロ襲撃から2021年1月6日の連邦議会襲撃事件の約20年間。
著者は2003年から「シカゴ・トリビューン」の特派員としてイラク戦争を取材した後、北京支局長として赴任し2008年から2013年まで「ニューヨーカー」の特派員だった。
著者が帰国後、多くの国内の変化に戸惑い、適応する過程で広範囲な変化の要因についてその全体像を探るため、著者自身のゆかりの土地ウエストヴァージニア州クラークスバーグ、シカゴ、コネチカット州グリニッジに立ち返り調査、取材を試み政権だけでなく地域の成り立ち、シンボリックな住民から個人の目線で描かれる。
1、5、9で主にグリニッジでの経済的自由という教義が如何にアメリカ資本主義の抱いていた信念を変え、適切な価格を払いさえすればどんなことでも可能になるという状況をもたらしたかについてMIT出のエリートでヘッジファンドマネージャーの転落やブッシュ家の変容が描かれる。
3,10で主にクラークスバーグでアメリカで最富裕層に属する者が最貧困層に属する者の家の下で天然資源(=石炭)を採掘した時、何が得られ何が失われたかが描かれる。
8で主にクラークスバーグでアフガニスタン戦争から帰還した兵士の悲劇が鮮烈だ。
4,6、7で主にシカゴの街の成り立ちと地域格差、国の人種隔離政策が保健や財産、個人の救済への期待にもたらした影響が描かれる。
本書で取り上げられたエピソードは具体的で、リアルだ。
アメリカの今に迫るドキュメントとして大変興味深く読める。

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2024年12月01日

Posted by ブクログ

20240906-0915 ワイルドランド「野生の王国」かもしれない今のアメリカは。グリニッジに集う成功者たちの建てる家は、トイレが8つもあったりベッドルームが沢山あっても、なんか滑稽であんまりうらやましくはならないなあ。

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2024年09月27日

Posted by ブクログ

もしトラとかほぼトラとか確トラとかまだトラとか言われているので、トランプが生み出したと言われるアメリカの分断について読んでみた。
 金持ちと政治のwin-winにより庶民層が金銭的にも生活的にも政治的にもダメージを食らい、政府への不信感を生み出すのは、アメリカという国の必然ではないかと思う。
 アメリカ人の根底に大なり小なり独立心とリバタリアニズムがあるとすれば、政府に頼らない、政府の定めたルール遵守心が薄くなり、ひいては道徳よりも利益を偏重、ルールを変更してでも、ルール遵守の向こうにあるものを無視してでも、利益を得ようとするという行為の果てに、庶民層のルサンチマンが貯まる仕組みは必然であり宿命としか言いようがないのではないか。

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2024年08月06日

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