あらすじ
大人気エコノミストが放つ、本年最高のビジネス教養書!
先行きの見えない激動の時代、
歴史に立脚したマネーリテラシーが新しい知の羅針盤となる――。
資源戦争、貿易戦争、基軸通貨戦争、技術戦争という4つの軸から、
マネーがもたらす「破壊と創造」の本質が見えてくる。
・ローマ帝国崩壊とデナリウス貨の劣化
・異次元の金融緩和の「呪い」スペイン
・マネタリーシステムの歪みと「明治維新」
・アメリカ関税史が示す「トランプの行動原理」
・“すべてのバブルは崩壊する”歴史法則
・資源をめぐるパワーポリティクス「第一次世界大戦」
・米中シン半導体戦争
・ガザとアメリカの中東戦略
・基軸通貨戦争とマネーの未来……etc.
経済×地政学の歴史知が未来を照らし出す!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
とても良い本です。今起こっているウクライナ戦争の背景や、なぜアメリカがイスラエルを支持するのか、なんてことがとてもよくわかります。現象面だけ見て、マスコミの報道だけ聞いていると本質がわからない。現在の半導体がどんな競争になっているのかとかもよくわかった。
Posted by ブクログ
この著者の本は最近気に入っていて、これで5冊目となりました。私の好きな歴史を地政学とお金(マネー)に関する観点から解説してくれています。共産主義に対抗して自由主義を推し進めてきた、アメリカのトランプ大統領が、関税を導入していることは、歴代の第二次世界大戦後の考え方を覆すもので、今は歴史的な転換点にあると理解しました。
更に、マネーが果たしてきた役割の変化を、歴史に沿って解説してあるのが興味深かったです。現在ゴールドの価格が上がっていますが、世界中で使用されている通貨の役割が見直されている最中なのかもしれません。しかし、本書の中でアメリカの優位はしばらく続く、と強調してあったのは記憶に残るモノでした。
以下は気になったポイントです。
・マネーは人間の欲望の 加速装置である無限の豊かさや 富へと人を駆り立て、しばしば 深刻な格差や戦争を生み出す 破壊的エネルギーとなってきた。その一方で マネーがもたらした交換の効率化は、人間の労働に価値を与え、社会を飛躍的に 発展させ、グローバルな交易を促進し、技術的イノベーションを加速させ、ビジネスの新陳代謝を生み、 文化・芸術の交流を支える想像的な力の源となってきた、貨幣は単に経済的交換の道具にとどまらず、文明の興亡と深く結びついた触媒としての役割を果たしてきたのである(p2)
・本所では 世界史を読み解く際に際して 4つの補助線を引くことにしたい、 1) 資源戦争、2) 貿易戦争 、3)基盤 通貨戦争、4) 技術戦争(p5)
・お金には3つの普遍的な役割がある、1)価値の尺度、2) 交換手段、3) 価値の保存である(p18)
・鋳造貨幣は民主制 が 生まれ、機能するための社会的・経済的基盤を整えた、それ以前の社会では 富は土地や家畜といった形でその多くが 世襲の貴族階級に独占されていたが、貨幣 より 商人や職人でも自らの仕事で富を蓄積することが可能になり、市民の経済的地位が向上した。貨幣により各ポリスが税を徴収し、公共事業や軍の維持ができるようになったことで、貴族の権力基盤 も 弱まった(p26)
・基本的に横に長い 国・地域というのは、気候条件から移動が 比較的多いで貿易が発展しやすく、文面も発展しやすいという地理的な特徴を持っている。対して 縦に長い 国・地域といえば、南米やアフリカ大陸が思い浮かぶだろう。ユーラシア大陸を中心に文明が発展する一方通点 歴史的に 南米やアフリカの国々の近代化が立ち遅れたのは、地理的・ 気候的な条件による影響も大きいのではないだろうか(p32)
・ローマ帝国は、建築や 土木 など一部の分野では 高度な技術を持っていたが、 安価な奴隷労働に依存していたため、生産技術への関心が薄かった。イノベーションに投資することなく、翌週から 収奪した資源に財政基盤を置いていたため、労働力不足や 財政難に対する 突破口がなかった (p35) ライブ 崩壊を加速させた大きなファクターは、銀貨の懐中によるインフレであったことは確かである。ローマの経済的基盤は、奴隷制 や 職種からの搾取 といった長期的には持続不可能な、不安定なシステムに依存していた(p43)
・歴史的に見て、無節操にお金をすることで豊かになった国は一つもない。 ローマの史実が伝えるように、物を仕入れて売る 商人たちは 貨幣価値が目減りした分を補うため、物を販売する際の価格を釣り上げていった(p38)
・ベストがヨーロッパ社会にもたらした インパクトは当然 教会の権威の失墜 である。いくら 祈りを捧げても周りの人々の命はどんどん 奪われていく。その中でキリスト教教会と教皇の権威は失われ、後の宗教改革の予備率となった。それとともに 儀式で使われていたラテン語が衰退し、英語・フランス語・ドイツ語が主要な言語となっていった。宗教的権威の失墜 は、人間中心主義のへの 思想的転換を促すことになる、 人間の理性や個性を重視する 思想で、 ルネサンス期の芸術や 文化、 科学を生み出す母体となった(p63)
・16世紀後半から17世紀前半にかけて、スペインはアメリカ大陸の植民地 、 ポトシ銀山・サカテカス銀山から膨大の量の銀を採掘した。この銀の流入は、スペインをヨーロッパで最も裕福な国家へと変貌させると同時に、深刻な副作用をもたらした。商品供給の増加を 伴わない貨幣供給量の急増 は、スペイン 国内の異次元の金融緩和が行われたのと同じことになる。当然 通貨としての価値が下がっていき、 インフレーションが発生した(p90) 植民地から労せずして 富が流入する状況下で、国内産業への投資・育成はおろそかになり、外国製品の輸入に富は 向けられた 当店 さらに 絶え間ない 戦争により、莫大な 戦費がかかったことにより、 ついにスペインは財政破綻 を招いたのである(p90)
・ イギリスでは1774年に 機械輸出禁止令が出されたが、植民地政策を推し進めるよりも 自由貿易にした方が経済的利益も大きいのではないかという論調が強まっていった、1825年に一部廃止 そして1843年には全面的に機械輸出禁止令が廃止された。こうして他の国々にも 工業化が波及していく、1830年代には ベルギー・フランスで、1840年代には ドイツ、1860年代にはロシアとアメリカ、そして1868年以降は明治維新を達成した 日本で 機械 革命の流れが広まっていった。これらの国を中心に、19世紀末から20世紀にかけて 帝国主義へと舵を切っていった(p110)
・江戸時代に日本の豪商と呼ばれていた人たちは、資産を銀で保有していたため、銀の価値 下落による影響をかぶってしまった。江戸時代末期にかけて こうした理由から日本国内の多くの豪商が相次いで 倒産してしまい、幕府に対する不満が高まったことも明治維新の原動力になったと考えられる 当店時代の変わり目には、必ずと言ってよいほど経済的な理由がある(p147)
・ 日清戦争終結の翌年、ロシアは清国との間に 密約を結び、日本から攻撃された際の相互支援を約束し、東進鉄道の敷設権・輸送権を得る。1897年にはドイツが 宣教師殺害事件を口実に青島を 選挙 当選 翌年 膠州湾を租借する、 これに刺激されたロシアは 路順と大連を租借、 イギリスは 九龍半島を 、フランスは 広州湾を租借した(p157)
・1912年 世界最強のイギリス海軍が、軍艦の燃料を 石炭から石油に転換した、石炭に比べて エネルギー効率の高い石油燃料にすることで、軍艦の速度は上がり、行動範囲も広がった(p166) 第二次世界大戦により、 重要 試験が石炭・鉄鋼から、石油・アルミニウム・ゴムにとって変わった(p168)
・ 1929年の大恐慌で 世界の GDP は推定 15%も低下、 アメリカでは30%も低下、全世界の失業者は 5000万人を超えた。ちなみに リーマンショックの時は GDP の下落率は2.1%程度(179)
・ 世界恐慌の真っ只中で、 フーバー大統領によって制定された 「スマートホーリー 関税法」 は恐慌を拡大させ 世界貿易の急激な減少を招く 結果となった、 だからこそ 第二次世界大戦後 アメリカは他の22か国とともに 1947年にGATTの設立を主導し、 ブレトン・ウッズ体制のもと自由貿易の時代へと舵を切った。 1995年に設立された WTO において 多国間の世界 貿易のルール作りを主導することになった。 しかし 現在のトランプ 政権の関税交渉を巡る 揺り戻しは、 マッキンリー大統領をロールモデルとするトランプによる、戦前の保護主義的な潮流への回帰の証 である(p184)
・1933年 ドイツに国民の熱烈な支持を受けて ナチス政権が成立し、 党首だったヒトラーは公約として掲げていた ヴェルサイユ 耐性の打破 頂点 並びに 賠償金支払いの拒否を実行に移し、ドイツの戦争賠償はこの時点で うやむやなものになった 当店 ヒトラーは 賠償金を踏み倒したのである(p192)
・日本では日銀を通じた 戦費調達への過度な依存により、ハイパーインフレを招くことになった。戦争末期には米・砂糖の価格 インフレーションが最も深刻で、 戦後には さつまいも・じゃがいも・卵のインフレーションが最も激しくなった。 1934年 卸売物価をベースにすると 、 1949年までに約220倍、1945年 ベースで見ても 約70倍 という インフレが発生した(p198)
・ 第二次世界大戦において、 イギリスは 総額501億ドル ほど 食料・石油・軍事物質を供与された。ニューファンドランド・バミューダ諸島・イギリス領西インド諸島の基地を提供することと引き換え であった(p199)
・ トランプ大統領は正式に 2期目の大統領に就任する前、2024年11月30日に BRICS諸国 が 脱ドル化を推進した場合、 100%の関税を課すという確固たる姿勢を打ち出した(p219)
・中国の半導体が世界の主流になることはないと私は見ている、 なぜなら 半導体 製造には非常に複雑なサプライチェーンが必要だから。素材 から始まり、 半導体チップの材料となるシリコンウエハーの製造・洗浄・乾燥・酸化などの行程があり、各工程作業を担う専門的な会社と、製造装置をせいぞうする会社がサプライヤーとして参加していて、幾つかは独占的な技術である。更に、半導体を設計するソフトウェアを提供する会社は限られ、アメリカの傘下にある(p253)
・各ジャンルの基礎的な知識を持ち、 AI に何をどう質問すれば良いのか 当店を知っている人には AI は強力なアシスタントになる。逆に、基礎協業や考える力がない人にとっては脳機能が衰退するツールになる(p262)
2025年10月31日読破
2025年10月31日作成