あらすじ
バイリンガルの人が羨ましい? 子どもはバイリンガルにしたい? けれどもそこにはさまざまな「壁」が立ちふさがっている.内外の研究の最新成果をもとに,乳幼児期に子どもが母語や第二言語をうまく獲得するために必要不可欠な環境とは何かを問う.周囲の大人にできること,すべきこととは? 大人の外国語学習の驚くべき効能も!
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Posted by ブクログ
我が子をバイリンガルに育てたいと願う保護者は多く、それを後押しする情報も世の中には溢れている。しかし本書は、そうした楽観的な言説とは一線を画し、バイリンガルに育てることに伴うリスクや難しさを丁寧に説明した一冊である。
日本に住んでいれば日本語が「自然に」身につくと思われがちだが、実際には、特に幼児期における保護者との言語的なやりとりが、日本語習得にとって極めて重要な役割を果たす。本書は、私たちがあまりに無意識に日本語を習得してきたがゆえに、この点を軽視しがちであることを鋭く指摘する。そして、バイリンガルに育てるとは、第二言語の導入によって第一言語への接触量を必然的に減らすことでもあるという、いわば「当たり前だが見過ごされがちな視点」を改めて提示している。
さらに本書は、今後日本社会で増えていくと考えられる、日本語を第一言語としない家庭で育つ子どもたちの言語教育をどのように考えるべきかという問題にも踏み込む。とりわけ、言語発達の遅れが見られる場合に、それが環境要因によるものなのか、あるいは障がいによるものなのかを判断することの難しさについて、これまでの研究を踏まえながら解説しており、実践的にも示唆に富む内容となっている。バイリンガル教育や多言語環境での子育てに関心のある読者にとって、必読書と言えるだろう。
一方で、著者が研究者として誠実であるがゆえに、研究結果の差異や解釈の幅がある点については、結論を断定せず、慎重で曖昧さを残した書き方がなされている箇所もある。研究者であれば理解できる姿勢ではあるが、一般書として読む場合、読者によってはやや分かりにくく、混乱を招く可能性もある点は指摘しておきたい。
Posted by ブクログ
言語獲得について、とても興味深く最後まで読みました。
母語や継承語の大切さ、
家庭言語と教育言語、
学習言語と会話、
言語発達と心の発達、問題行動の関係性など、
さまざまな角度から説明されています。
外国語と日本語、手話と音声言語など、様々な場面を想像しながら読みました。
日本で暮らし、海外に出る予定のない私ですが、外国から来られ、子育てされる方も増えてきている今、本書の内容を1人でも多くの方と共有していきたいと思いました。
Posted by ブクログ
まず、バイリンガルの人が羨ましい。憧れる。素直にそう思う。
この本は、最新の研究成果をもとにバイリンガル教育の落とし穴、効率の良い言語獲得などについて興味深い材料を与えてくれる。
小さなお子さんを持つ教育熱心なお母さんにぜひ手に取って貰いたい本。
人間が言語を獲得し、操る力をつけるためには、生まれ育つ環境が非常に大事。
新生児は母親が母語で話しかけてくれるとき、最も正確に相手の感情を理解する。
乳幼児期に子どもは親しい養育者との会話を通じて愛着を形成し、心に関する語彙を習得する。
子どもの健全な言語と情調の発達を願うなら、養育者は母語で子どもとたくさんの会話をすることが大事。
改めて子どもとの会話が言語習得にとって大事なことであると理解する。
本書のメインテーマはバイリンガルの知られざる苦悩であると思うが、僕にとっては、人間がどのようにして言語を習得していくか、モノリンガルとバイリンガルの言語習得の違いについて考えながら読み進めた。改めて、人間の言語習得は本当に高度な能力だと思う。これを幼児期の子どもが普通に行っていることに驚きを覚える。
おわりにで、大人の外国語学習について少し語っているが、「新しい語彙を学習する能力に臨界期はない」との主張、加齢を言い訳にする自分が恥ずかしい。