あらすじ
花魁・夕顔の推理を頼りに、遊郭内での事件を次々と解決してきた隠密廻り同心の木島平九郎は、体調不良のため出仕できなくなってしまう。夕顔は、代役の新人同心とともに、再び事件解決にあたるが……。書き下ろしシリーズ第2弾。
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Posted by ブクログ
1作目から時系列を少し戻し、頭脳明晰な花魁・夕顔と病気療養中の木島に代わり面番所に勤めることになった新米同心・余七郎が難事件に立ち向かうシリーズ2作目。
夕顔の安楽椅子探偵ぶりは相変わらず。だが、身籠った子を堕ろしたことが彼女の心に澱のように溜まって苦しんでいるという設定が遊女としての悲哀を強調していた。
余七郎の胸の内にも、武家社会の掟が故の苦悩がひしめいており、鬱屈した感情がいつ暴発するや分からぬ危うさがあって、何事も無ければ良いがと思いながら読んでいた。
前作から定番の(襖に心張り棒を支った)密室に加え、下手人の消失や死体の瞬間移動といった魅力的な謎が各話を彩り、本格ミステリの面白さがパワーアップしていた。
人間ドラマもさらに芳醇に。吉原という特殊な環境が生み出す悲哀のドラマが物語を、謎解きを大いに盛り上げて、時代小説ならではの趣、人情の奥深さを演出する。
各話に張り巡らされた伏線が収斂する五の控「陽炎」が本書の白眉。切り裂きジャックを彷彿とさせる遊女連続殺人を、余七郎が夕顔の助成無しで解こうと奮闘するのだが、全く予想外の結末が待ち受けていて驚いた。
上記の余七郎に関する杞憂が的中する形となったわけだが、武士の世の理にやるせなさを覚えずにはいられなかった。沈んだ心に追い打ちをかけるような内容の「付記」が、なんとも言えない読後の余韻を齎した。