あらすじ
父母も、社員も、犬も。
大切なひとを、慕う。
わたし、小玉小鉄は、
社長の息子と同じ日に生まれた柴犬だ。
その縁で、株式会社こだまの一員となった――。
本屋大賞発のベストセラー『ひと』からつながる感涙のドラマ
わたしにとって大事なときに、そこにいてくれた人。
その人を、したう。
株式会社こだまは、主に塩化ビニル管をつくっている中小企業だ。社員数、24人。当然、皆が知り合いだ。社長は、2代目の小玉新一郎がつとめている。
わたしは、新一郎の息子優一郎と同じ日に生まれた。5月5日生まれ。偶然そのことを知った新一郎にもらわれてきた、柴犬だ。小鉄と命名されたわたしと優一郎は、こだまの社員に囲まれ、双子のように育った。
わたしを散歩に連れ出してくれるのは、小玉夫妻だけではなかった。事務仕事をこなす大江都子。若手オス社員の高桑雅永。やらされるわけではない。自らやってくれるのだ。
そんな彼らにも、悩みはあるようだ。仕事、子育て、恋……。そしてわたしにも、ある異変が訪れていた。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
株式会社こだまを舞台に、さまざまな意味の「したう」をテーマにしたお話。
うん、やはり好きです。
小野寺さんの作品したっています(笑)
日常生活などでささくれていた気持ちが、読み進めていくと癒されていく感じが本当にしたってしまいます(笑)
本作は荒川のある平井のストーリーではなく、架空の町みつばのお話でしたが、モデルとかあるのかな。
以下、作品内の好きなシーンとセリフ。
◾︎離れがたく思う
p131優一郎「選んだって感じでもないみたい。最初に抱いたのが小鉄だったんだって。それも縁てことで、小鉄。あとの3匹は抱かなかったらしいよ。情が移っちゃうからって。それこそ選んだみたいになっちゃうからって」
絵凛「へぇ。お父さん、いいね。何か、偉い。カッコいい。」
→ここものすごく小野寺さんの小説らしくて良いなって思う。選ばないことの優しさって素敵だな。そういうのを縁って感じられるのって粋だな。と思います。
◾︎恋しく思う
p223(草野球を断るつもりでいた高桑くんの気持ち)これは自分でも意外。気持ちが、何というか、上向きになってるのを感じる。前向きとはまたちがう。上向きだ。
何故か。
自分でもわからない、とごまかしたいところだが、わかる。美弓さんとご飯を食べに行けたから、だ。それだけ。ちょっと恥ずかしいが、本当にそれだけ。
→わかる(笑)恋愛ってそういうちょっとしたことでも、人の日常を上向きにさせてしまう。
p292(この店は美味しいとか、この店はそうでもないとかの話はするかもと言った美弓さんの言葉)あ、でも、このお店はそうでもない、は言わないかな。それはやっぱり悪口になっちゃうし。自分でしてて、たぶん、いやな気持ちにもなっちゃうので。
別にいう必要はないですもんね。あのお店はおいしいからそこに行こう、だけでいいわけですし。
→すごくよくわかります。実際私の周りにも、あれは嫌だ、これは嫌だという人がいて、その人と一緒にいると息が詰まる思いをします。
人が不快になるようなことは言わずに、一緒にいて過ごしやすいなって思われるような言動をしたいものです。
Posted by ブクログ
居心地のいい株式会社こだま連作短編集。社員49歳女性や社長宅で飼われてる犬、目上の人に惹かれる人、野球部に入る人。
良かった。小野寺クオリティ。こういう会社に勤められれば人生穏やかに幸せなんだろう。こんな会社は存在するんだろうかね?
Posted by ブクログ
「懐かしく思う」「離れがたく思う」「目上の人に惹かれる」「恋しく思う」──“慕う”という感情を、三人と一匹の視点で描いた連作短編集。
本作でも小野寺さん特有の柔らかな文体は健在。
日常では殆ど使わない“慕う”という言葉。
けれど本作を読みながらなんて美しい表現なんだろうとしみじみ感じ入った。
登場人物は私達の周りにもいそうなごく普通の人たち。
その素朴さが物語の世界をより身近に引き寄せてくれる。
二話の「離れがたく思う」は我が家でも長年柴犬を飼っていたこともあり、柴の小鉄への愛おしさで胸が一杯になった。
ラストは涙涙。
Posted by ブクログ
『ひと』『まち』『いえ』『うたう』等、小野寺史宜さんのシンプルタイトル小説の新刊。
タイトルは「したう」…漢字だと「慕う」と書くのだろうが、したう相手は恋人だけではない。『懐かしく思う』『離れがたく思う』「目上の人に惹かれる」「恋しく思う」いう様々な意味があり、幅広い気持ちが込められている。
その『したう』の様々な気持ちが章立てとなり、株式会社こだまという社員24人の小さな会社の社員のそれぞれの事情が語られる。おまけに第二章は、この会社の人たちに飼われている犬の小鉄の目線での『したう』話だ。
特別な事件も起こらず、いつもの小野寺節、会話文の羅列で物語は進む。普通の人たちの日常を丁寧に追いながら、最後には人と人とのつながりが胸に残るハートフルな小説でした。
欲を言えば、表紙や帯を見ると『犬』との愛情がメインの小説と勘違いさせるのがずるいかな。(もちろん第二章の小鉄版は犬目線ではあるが)