あらすじ
長良由布子は、古い大学ノートに密かに綴られた、自分あての異様なほど長い手紙を受け取った。
差出人の少女が暮らす「守ノ関村」は、戦時下とは思えないほど不自然に豊かな、たくさんの牛が住む土地で、周囲からは「旅人を殺して埋めている」「住民はみな化け物だ」とひどく恐れられていた。手紙の少女は由布子に「必ず最後まで読んで」と執拗に懇願する。そこには、予言にまつわる村の凄惨な因果だけでなく、現実の由布子を待ち受ける恐ろしい運命が隠されていた……。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
私が大好きな作家さんのひとりである、尾八原ジュージさんの新作です。
少女から届いた一通の長い長い手紙で語られる怪異の数々は、ゾクゾクとする怖さがあるのですが、手紙の書き手である塔子ちゃんが非常に可愛らしく、飽きずに読み進めることができます。
そして本作は、ただ恐ろしくて魅力的なホラーというだけではありません。最後に明かされる手紙に隠された目的には、思わず胸がぎゅっとなり、切なさに涙が滲んでしまいました。
また、カクヨムに掲載されている、ある登場人物に関する後日談も、本編の余韻をさらに深くしてくれるものでした。本作を読まれた方には、ぜひそちらも併せて味わっていただきたいです。
Posted by ブクログ
KADOKAWAの編集課に届いた一通のテキストデータ。それは顔が人間で、体が牛の予言する妖怪「くだん」に関する、手紙の色合いの強い大学ノートだった。第二次世界大戦中、岡山県の山間の村「守ノ関村」の地主の娘だという蔵橋塔子(トコちゃん)が、長良由布子に宛てたものだという。差出人の塔子は長良由布子が義理の姉であると書き、「ねえさん」と呼ぶが、一度も会ったことはないらしい。
なぜか他の村と違って豊かな暮らしを送り、「人間じゃない」と噂される守ノ関村の話や死んで顔がなくなった家族の話、妖怪「くだん」の予言の話を綴った手紙は(作中人物にとって)真実めいていたり小説めいていたり虚実が曖昧なまま、どこか違和感を帯びていきます。奇妙な話のつるべ打ちのようなとても怖いホラーなのですが、その真意が緩やかに紐解かれていく様子はミステリ的にも魅力的な一冊になっています。怖さの先に待っている切ない余韻も素敵で、読み終えた時、まだこの物語に浸っていたいな、と思える読後感がとても良い小説でした。