【感想・ネタバレ】メソポタミアのボート三人男のレビュー

あらすじ

川旅は土地のいちばん低いところを行く――。
トルコ東部のティグリス=ユーフラテス川上流域をボートで下る辺境作家(高野秀行)と探検家(山田高司)。彼らの行く手には予想もしない出来事や人々が立ち塞がる。そして第三の男の正体は?
自然と文明、名言とぼやき、危機と笑いが交錯する前代未聞の川旅ノンフィクション。『イラク水滸伝』のB面的側面を、たくさんの写真とイラストでお送りします。

■目次
プロローグ トリアーナの舟
第一章 川の源はトラブルの源
1-1ユーフラテス川源流はゲリラの拠点
1-2衝撃の出発
1-3妖精一家のマネージャー
1-4メン・イン・ブラックの惨劇
1-5トルコし苦労の村
第二章 不条理な人生、理不尽な旅
2-1ムシュで虫になる
2-2ハンマームでエビになる
2-3橋の下をたくさんの水が流れた
第三章 世界でいちばん美しい川
3-1知られざるトルコ最大の「秘境」へ
3-2多次元宇宙ダルスィム
3-3奇跡の聖地ムンズル
3-4大きくなった妖精たち
第四章 アレヴィーの聖なる楽器サズ
4-1「趣味」を調べることなかれ
4-2幻のサズ奏者を探せ!
4-3サズとアレヴィーとコミュニスト
第五章 川と歴史は遡るべし!
5-1非常識なほどの紆余曲折
5-2人類の歴史を塗り替える遺跡
5-3ディープグルメ vs ディープヒストリアン
5-4火と水の都ディヤルバクル
第六章 ティグリス川 世界最後の舟旅
6-1超巨大ダム湖に沈む川
6-2川の番人「バクチ」
6-3濁川芭蕉も涙する夕べかな
6-4大峡谷の探検
第七章 異世界のメソポタミア
7-1「江戸ポタミア」の舟旅
7-2十条のメソポタミア
7-3真逆のクルディスタン
第八章 帰ってきたボート三人男
8-1鳥の目、虫の目、タヌキの屁
8-2王様の川下り
8-3ソウルフードをめぐるささやかな体験
8-4ロストロストロスト

【著者プロフィール】
高野秀行(たかの・ひでゆき)
一九六六年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。
早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』をきっかけに文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。〇五年『ワセダ三畳青春記』で第一回酒飲み書店員大賞、一三年に『謎の独立国家ソマリランド』で第三五回講談社ノンフィクション賞、一四年同作で梅棹忠夫・山と探検文学賞、二四年山田高司とのチームで「イラクの巨大湿地帯(アフワール)探検」により、2023植村直己冒険賞、同年『イラク水滸伝』で第三四回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

メソポタミアという壮大な歴史を持つ土地を、実際にボートで川を下りながら旅する。その臨場感が、本書の何よりの魅力だった。水の流れに身を任せ、刻々と変わる両岸の景色を眺め、ときには予想もしなかった出来事に巻き込まれる。陸路を移動する旅とはまったく違う、川の上だからこそ味わえる不安や高揚感が、ページをめくるたびに伝わってくる。読んでいるこちらまでボートに同乗し、一緒に川を下っているような気分になった。

そして、「川から世界を見る」という視点も実に新鮮だった。人々が暮らす町や村を陸側から訪れるのではなく、古くから人や文明をつないできた川をたどることで、土地の歴史や人々の生活がこれまでとは違った角度から見えてくる。メソポタミアという言葉から連想する古代文明が、決して遠い昔の話ではなく、現在を生きる人々の暮らしと地続きに感じられるのも面白い。

特に興味深かったのは、トルコ東部のクルド人地域の日常や文化に触れられたことだ。正直なところ、これまでクルド人についてはニュースなどから断片的な情報を得るだけで、あまりポジティブな印象を持っていなかった。しかし、本書を通して彼らの歴史や文化、そこで暮らす人々の姿を知ることで、一面的なイメージだけで物事を判断していたことにも気づかされた。

壮大な川を旅する冒険の面白さを味わいながら、自分の知らなかった世界や人々への理解も深まっていく。笑いながら読み進めているうちに、いつの間にか自分まで遥か遠いメソポタミアの川を旅していたような気分になる一冊だった。

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2026年09月05日

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