あらすじ
「情熱の歌人」と呼ばれる与謝野晶子は、短歌だけでなく、詩、社会評論、童話・童謡など、さまざまな分野で多くの仕事を成し遂げた。
しかしその活躍が多岐にわたるがゆえに、「君死にたまふことなかれ」や「母性保護論争」など限られた側面しか知られていない。
本書では、晶子の幅広い業績をたどるとともに、教育や労働について鋭く論評し、たくさんの子を産み育てた「ワーキングマザー」でもあった、ひとりの等身大の女性像を描きだす。
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Posted by ブクログ
女性の暮らし・無駄のない人生
昔の女性、母は強し、といっても過言ではない与謝野晶子の生涯。小説家でもあり、評論家でもある晶子は生涯に13人の子(2人は死亡・3人を養女に出す)を産んだ母になり、家庭に、子育てに、教育に、そして仕事に燃えた女性だ。近代社会にも通じた考え方(女性の仕事、教育)や新しいことへの情熱(科学技術)など現代では考えられない力強い、そして逞しい母親像が見える。現代、一人っ子でも大変な時代なのに11人もの子供を養育し、仕事を抱える毎日は気の狂いそうな人生だったに違いないが、その合間に詩集、評論、童話などへ時間を割き活躍した人生に感服する。人は暇な時間があることは逆に真っ当で充実した人生を送っていないことになるのかとさえ思った。
Posted by ブクログ
与謝野晶子といえば、情熱的な歌を歌う人というイメージしかなかったのですが、それだけでなく計算が得意で数学の才能があったことや、沢山の子を働きながら育てる悩みや、男女平等な世界を目指していたことなど、今まで知らなかった与謝野晶子を知る事の出来る本でした。晶子はとても芯の強い女性だったと思います。興味深く面白かったです。
Posted by ブクログ
平塚らいてう、山川菊栄、山田わからによる母性保護論争。国家による母性保護を主張したらいてうの勝利にも見えるが、女性の自立、仕事と家庭の両立、男女の賃金格差の是正、育児の社会化、家庭教育の責任など幅広い論点で議論され、かみ合わないことも多かった。
らいてうが、女性の妊娠、分娩、育児は、国家の問題であり、不払い労働、経済活動として保護すべきという立場に立ったのに対し、晶子はあくまでも町人として、「国家が個人の延長であって、国家が個人を支配するものでなく、個人と国家が一体のものであるというのは、なんという合理的基礎があるのか」とし、個人を国家に優先させて考える町人、市民の思想が息づいている
時代は、育児を社会的、国家的仕事であり、良妻賢母になることが女性の地位向上の第一歩と考えていた。そのなかで、晶子のルネサンス的個人観は
、時代に逆行していた。