あらすじ
100万部読まれてほしい、史上最高のデブ小説!
九段理江さん(小説家)
この一年で読んだ小説の中で、一番好きかもしれない。
ラランド・ニシダさん(お笑い芸人)
あなたは人に「デブ」と言えますか?
欺瞞の薄皮をぴりりと剥ぎとる、
笑いと皮肉てんこ盛りの、傑作中編小説集!
三國造船で働く安井は、職場の人たちを「サンゾウ」と一括りにし、直視せぬようやり過ごしてきた。労働組合からの要請を受け、改めて個々のサンゾウを観察し始めるが・・・・・・。
――「世紀の善人」
小学校を卒業した望は、友人とディズニーランドに行く計画を立てたが、自分の顔が嫌いで乗り気になれない。「奇跡の一枚」を目にしたことで、自意識が変わり・・・・・・。
――「小人二十面相」
タナマル水産の広報部員として働くアヤノは、自他ともに認める「デブ」である。担当する食べ歩き企画で、その食べっぷりと自虐ネタが「おもしろい」と話題になり・・・・・・。
――「わたしを庇わないで」
【著者略歴】
石田夏穂(いしだ・かほ)
1991年埼玉県生まれ、現在東京都在住。東京工業大学工学部卒。2020年に「その周囲、五十八センチ」で大阪女性文芸賞受賞。2021年に「我が友、スミス」が、第45回すばる文学賞佳作、第166回芥川賞候補作となる。2022 年「ケチる貴方」が第44回野間文芸新人賞候補に。2023年「我が手の太陽」が第169回芥川賞候補、第45回野間文芸新人賞候補となる。他の著作に『黄金比の縁』『冷ややかな悪魔』『緑十字のエース』『ノーメイク鑑定士』等。
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石田夏穂さんの小説は、見事に斜に構えた物語が大変魅力である。
本作の中で「世紀の善人」の''安井の仕事''は、全くもって理不尽でありながらも、視線を合わさず生きぬきながら無神経な男性社員たちを暗く見つめる。
そしてついに反撃に出た安井の行動と結末のカタルシスは、抑圧から自らを解き放つ安井への応援となっていった。
「わたしを庇わないで」のデブという言葉が、デブを庇う人間の裏側の感情を皮肉にも見事に表していく。
アヤノに対してデブを口にしない偽善者との戦いが、読者も意にしない展開が皮肉に溢れて読み手を飽きさせなかった。
人や社会や会社を独自な視点から痛烈に皮肉る石田夏穂作品は、他の作者では味わえない魅力があって止められない。
Posted by ブクログ
『 世紀の善人』
めちゃくちゃ笑った!
すばるに掲載されていた2024年に読んだ時も、2024年に読んだ小説の中で一番好きだったけど、単行本で改めて読んだらやっぱり面白かった。1ページのなかで笑っちゃう文章が沢山出てきて、思わず音読したくなった。
本当に、サンゾウ(職場の昭和的なおじさん達)の気持ち悪さについて、ここまで色々な表現で数十ページにわたって面白く書けるのすごいなーと思う。
職場のおじさんが嫌いな女性達に布教したい。
『私を庇わないで』
デブに「デブ」と直接言わないことで、暗にデブと言っている罪についての話。これも面白い。
直接的に「デブ」と言ってくる人を「正直者」や「挑戦者」と書いて「カウボーイ」と読ませ、間接的に「デブ」と言ってくる人を「偽善者」や「臆病者」と書いて「スナイパー」と読ませてるところとか、日本語の使い方のセンスがすごすぎる。
他にも、「規格外」と書いて「デブ」と読ませたり、「私」と書いて「デブ」と読ませたり、ミス・グランデとか、ミス・ショートとか、体のサイズをコーヒーのサイズで表していたり、「目でデブと言われた」とか、「グッドルッキングは眼福、私(バッドルッキング)は眼災」とか、すごい表現がてんこ盛りで、面白かった。
Posted by ブクログ
笑ってる場合じゃないくらい刺さるし重いテーマなのに、ユーモアの質と量があまりに圧倒的で笑ってしまう…。これで笑えるってことは私は当事者じゃないのか?当事者だからこそ笑えるのか?と常に疑問が渦巻くような、脳が混乱してくる作品です。
3つの短編からなりますが、どれも展開も目まぐるしく一気読みしました。
1作目「世紀の善人」は、昭和気質な会社勤めの身としてはめっっっちゃわかると頷きながら読みました。そうそう、殺意や鬱を通り越すとなぜか庇護欲のようなものに変化していくんだよね…。認知的不協和と言えそう。
Posted by ブクログ
社の食レポ広報を任される太った主人公が周囲の欺瞞に気づいていく。
3作品どれも面白いけど表題作がずば抜けて面白かったです。面白く、そしてすごかった。
石田夏穂さんの文章、端々に散りばめられた皮肉、自虐、悪意が本当に面白くて、コラム書いたらナンシー関みたいになるのではと思うほどですが、本作はそれに加えて薄い良識やルッキズム批判、ポリコレ的なものをビリビリに引き裂く強烈さがあります。
その昔、小人プロレスが世間の声に押されて消えたのと同じような、良識ある差別者の圧力を受け止める主人公の思考の変遷はすごくささるものがありました。
デブ、ハゲ、チビ、その他容姿コンプレックスを抱える人はぜひ読んでほしいと思いました。すごい切込み方をしている。
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自分の思い込み、世間のノーマルを誰かに押し付けていないか自問自答したくなる。
言いたいこと言えないで真面目に生きてる人必見!!
(真面目に、は自称でOK)
これはもう読んでもらわないと面白さが伝わらない。独特な文体の中に、どこか救われる部分もあって石田さんの流儀を感じました。
笑うだけでなく、圧倒的に「「社会」」が詰め込まれていて最終的にゾッとする
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作品の切り口の鋭さに驚かされた。体型や容姿についての発言が自粛される現代の風潮を、これほど皮肉とユーモアを交えて描けるのかと感心した。太っている人に対して多くの人が無意識に抱く偏見や好奇の視線が、あまりにも率直に言語化されており、思わず笑ってしまう一方で後ろめたさも覚える。主人公がミス・グランデに語りかけながら自虐的にピザを頬張る場面や、ナナミ先輩から「デブ」と呼ばれる場面には、滑稽さと哀しさが同居していた。人の飲食や身体を娯楽として消費する社会の視線を突きつける、痛烈で印象深い作品。
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石田さん、最近立て続けに本を出してくれて嬉しい。
しかも今回はいつもよりちょっと厚めの本だし。表題作含む3編のお話どれもが面白い。
なんでこんなに人の微妙な心理を描くのが上手いんだろう。
自分の容姿が嫌いすぎて、写真をたくさん撮るであろう場所:ディズニーランドに行きたくない女子とか、会社の奴らを全員「サンゾウ(会社にちなんだ呼称)」と呼んでいる女性とか、現実にもいそうな人物が主人公。彼女たちの気持ちにちょっと共感しつつ、オチはどうなるのだろうと期待感を高めながら読み、どちらの短編も満足。
表題作が1番好みだった。「デブって言う単語を使わないでください」って言うこと自体が「you are debu」かぁ。その発想はなかった。これは面白い。体型について揶揄するのはもちろんダメなことだが、本人が自分のことをネタにする分には良いんじゃないかな。世の中、なんか面倒くさい。昔は平気で禿げだのデブだの皆使っていたな。決してそれは良いことじゃないけど、婉曲に外見をディスられるくらいだったらいっそはっきり言われた方がマシかもね。
Posted by ブクログ
著者の筆は時に摂生、時に過剰。新作を食むたび、私は高カロリーと低血糖のW撃ちに遭ってきた。
今作は短編集。トップバッターの「世紀の善人」は三國造船、通称サンゾウで働く社員たちをつぶさに観察し分析する安井が主人公。有象無象の憎きサンゾウたちから、クミゾウ、フーゾウ、センゾウなどと対象を抽出し仕掛けていく。
ラストに向かって安井は常軌を逸していくのだが、不謹慎にも笑いが止まらない。「◯△□!」安井の背を押す私は共感以上に、狂気に乱舞だったのか。
冷静になった今”庇わないで“とごちていた。
今後も更なる脱皮作に期待する。
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人と人との間に生じる構造的な権力関係やアンコンシャスバイアス。ルッキズムやポリコレ。それらを抉るような鋭いカウンターパンチ。
庇うという行為の傲慢さ。庇う側が自分の正しさや価値観を押し付けることで、当事者の選択肢や主体性を一方的に奪ってしまう。これは致命的に矛盾してしまっている。
「庇うという行為はその庇われる人の劣勢を一方的に確定してしまうこと」
正しさについては常に考え続けることにします。
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「世紀の善人」「小人二十面相」「わたしを庇わないで」3篇の中編。
パワハラやルッキズムに対するコンプライアンスやポリコレの欺瞞に対して痛烈な皮肉と毒をもって切り込んでいく作品。
石田さんの作品はほとんど読んでいるが、毎回そのテーマには胸躍らせる。
今回秀逸だったのはやはり表題作で、ルッキズムに対する通りいっぺんの“コレクトネス”に対して痛烈なカウンターパンチを喰らわせる。
「この世に無害な褒め言葉はない」はそのとおりだし、「“庇う”という行為は、その庇われる人の劣勢を一方的に確定してしまうことだ」というのも深く頷ける。
表面的な正義じゃなく、一歩踏み込んで自分の頭でいろんなことを考えなきゃって思った。
次はどんなテーマで楽しませてくれるか、本当に楽しみな作家さんです。
Posted by ブクログ
石田夏穂さんは、女性軽視のパワハラ・モラハラ、容姿や体型の揶揄など、社会的風潮へ皮肉と笑いを誘いながら強烈な「毒」を吐きます。その衝撃に心揺さぶられ、深くえぐられる3編です。
3編の共通テーマを強いてあげればルッキズムが根底にある気がしますが、表題作が出色の出来と感じました。水産会社の広報部員・アヤノは「デブ」を自認しており、食べ歩き企画の代替リポーターをインスタにアップしたところ、その食べっぷりに予想外の反響があり…。
人に「デブ」なんて普通言えません。でも、この暗黙のタブーに石田さんは切り込みます。主人公は、美辞麗句の偽善者より罵詈雑言の正直者がマシだと思い、自分を守る臆病者よりリスク上等の挑戦者でありたいと考えるものの、デブを忌避するのに庇おうとする矛盾や暴力性に屈辱を覚えるのです。
メディアで画一的な容姿の美が基準とされ、個人の認識が歪められ特定の価値観が刷り込まれる危険性が、これでもかと描かれる印象です。配慮が行き過ぎてモノ言えないのもどうかと思いますが、皆んな素の自分のままコミュニケーションがとれる優しい世の中になるといいですね。
人の心の内にある偏見や欺瞞を鋭く突いてくるこの「毒」が、受け入れ難いかクセになりそうかは、読み手次第でしょうか? 笑い以上に隠れた毒がキツいこの一冊、貴方はどう受け止めますか?
Posted by ブクログ
たとえそれが善意であっても、知らずに人に嫌な思いさせるよねというのを、嫌な思いしてる側の視点で描かれている
主人公のものの捉え方が、わかるんだけど、独特でユーモラスな部分あり面白い
結局自分の本心に気づく感じの、各エピソード終わり方がいい
Posted by ブクログ
デブの人をデブだと思っていても口に出して言わない、デブと言ったら負けみたいな風潮。わかる、わかるけど。
どの話も自意識と他人に対する観察眼が強すぎて毒に当てられて疲れた。
Posted by ブクログ
興味のない人たちをサンゾウ、クミゾウ、〇〇ゾウとまとめて呼ぶの面白い。真似したくなった。◇私も鏡嫌いなタチなので、小学生の話が一番共感した。◇庇わないでと言いつつ、庇わなかったら文句言われそう。何かの肯定は必ず何かの否定かぁ、難しいね。最後の1行がアヤの本音かな
Posted by ブクログ
3作入った中編集。2作目の『小人二十面相』が面白かった。自分の見た目に囚われる小学6年生が主人公。3作目の表題作『私を庇わないで』もだが、ルッキズム関連へのアンチテーゼ。私自身も美醜体型に関してはまだ何がOKで何がNGなのがわからず、勉強中だし、一体なんだろうなと考えさせられた。
Posted by ブクログ
笑いの中に多数の毒を散りばめた3篇を収録した短篇集。「世紀の善人」は三國造船で働く安井が主人公。彼女は職場の人たちを心の中で“サンゾウ”と呼び、直視せずにやり過ごしてきたが……。
「小人二十面相」は自分の顔が嫌いすぎて鏡を見られない女子(小6→中1)の話。だが、ある条件が揃うと実は……。
表題作は自他ともに認める“デブ”が、会社の広報の仕事によって一躍人気者になるが……。
どれもおもしろかったが、非会社員が主人公の「小人…」が目新しくてよかった。
Posted by ブクログ
表題は大笑いしながら読んだ。本人を見ると全く太っていないのにこういう太った人を書くのが本当にうまい。自分が一時期太っていたときの自虐の感じを思い出した。世紀の善人も好きだった。主人公が三者三様とにかく勢いがあるところが好きだった。