【感想・ネタバレ】大地の咆哮(ほうこう) 元上海総領事が見た中国のレビュー

あらすじ

現代中国をどう認識し、どう対応するのか、日本の対中外交はいかにあるべきか――上海総領事であった著者が、末期がんの病苦をおして書き上げ、2006年に刊行されるやベストセラーとなった本書。中国の実態を鋭く抉って各界の絶賛を浴びたその内容は、文庫化にあたっていささかも古びることなく、むしろ現実の方が本書の議論を前提に進行している感さえある。外交官としての長年の中国勤務の体験をもとに、実際に担当し、かつ現地で見聞した情報を踏まえた叙述には、視点の鋭さと深さ、説得力がある。政治・経済・外交・軍事から農村問題に至るまで、“現代中国の真実の姿”を幅広く見極めようとする著者の真摯な思いが行間から伝わってくる。2004年5月の上海総領事館員自殺事件の折、総領事として部下を守れなかった無念から本書を執筆したという著者。“近くて遠い隣国”との付き合いを考える上で、思わずハッとさせられる示唆に富んだ好著である。

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Posted by ブクログ

病気により死期を予感しながら書かれた、元上海総領事の渾身の一冊。等身大の中国、中国と日本の抱える問題を語る。愛国者、かつ、冷静な視点。最近の日本で失われつつある、中国の立場をも斟酌した日本に求められる国際的態度を、論理的に説く。特にODAを巡る価値観の衝突は、我々が基本認識として保持すべき視点。靖国参拝に対してもそう。妥協するのではなく、言いなりになるのでもなく、偏らず、歩み寄る。新たな知恵。花を持たせて、実を取る。そういう解決策が必要だ。

バチカンと中国の国交の必要性は、今、私の興味である、歴史の監視役という視座からしても、面白い考え方だ。ただ、カトリックの拡大可能性や、実際的かというと疑問は残る。そもそも、貧困層が宗教にすがるという著者のロジックに従うなら、監視網としてのカトリックネットワークが機能すべき富裕層は、その枠組みに入らない。国際警察やインテリジェンス機関のように、積極的姿勢を示すなら、別だが。

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2014年07月26日

Posted by ブクログ

本書はいわゆるチャイナスクールに属し、長年、外交官として関わってきた著者が「現代中国をどう認識し、どう対応するのか、対中外交はどうあるべきか」まとめた本である。
内容は圧巻の一言に尽きる。ODAの問題、水不足、搾取される農民、役人の腐敗、反日、靖国問題など多岐にわたっている。
一言でいうと、とても面白い講義を聞いたような気分にさせてくれる。
大きな隣人が何を考えているのか理解を深める一助となる事、間違いない。

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2012年05月26日

Posted by ブクログ

いわゆるチャイナスクールの方ですが、読み進めていくと一般のイメージである売国的な方々とは全く違う人物であることが分かります。
おそらく凄くいい人だろうな~と思っていたら、上海に在住していた叔父さんが飯仲間だったのでビックリ。(やはりいい人だったそうです)
内容は国家間の事よりも、中国の現実や体験してきた出来事を終始淡々と書かれています。
でもこういう本に良書が多いんですよね、稚筆な感想ですいません。

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2011年02月09日

Posted by ブクログ

上海総領事が描く中国との交渉体験。
2004年春、上海の総領事館でハニートラップにかかった電信員が自殺した。
本省はこの件を抹殺しようとしている。
さらに、自分も末期癌のようだ。
これは自分の生命を賭け中国の光と影を書き上げた遺書である。

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2023年09月16日

Posted by ブクログ

@yonda4
巨大な隣人、中国。隣の国なのに日本人の多くは中国をよく知らない。レッドクリフは観るけど、今の中国ってよく知らない。最近日本にも中国人観光客が増えたな~。位の認識だと思う。

内閣府世論調査によると、2008年の日本人の対中国好感度割合は約30%。1980年の78%に比べると、多くの日本国民が中国を快く思っていない。小泉首相の靖国神社参拝問題、04年サッカーアジア杯、毒入り餃子事件、など、中国関連の事件を見るとこの数字もそりゃそうだよな、と言いたくもなる。

ところが、嫌だな~と思っても国と国として付き合っていかなければならないことは事実。特に経済面にて中国依存は大きい。

本書は現在の中国を知る上で、日本人としての立ち位置をしっかり示してくれると思う。

現状の中国は、解決しなければ問題がたくさんある。
農村部と都市部の貧困格差。深刻な水不足。日本以上に急速に進む高齢化社会。経済倫理の欠如、金を借りるバカ、返すバカ。中国政府が行う反日教育。などなど、本書を読んでいると中国がどういう実情かがわかってくる。

この内容をふまえて、今後日本がどう付き合っていくか。国同士の問題であるが、国民一人一人が考えていないといけないことでもある。

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2011年04月07日

Posted by ブクログ

中国、この厄介な隣人

著者は、上海総領事館の職員が中国のハニートラップに引っかかって自殺した時の総領事。また、自らが末期がんであることを知り、本書の執筆を決意したという。

外交官として文字通り中国と格闘してきた筆者の中国分析には、他の学者やジャーナリストの中国本にはない迫力、生々しさがある。それにしても、こんなに仕事をする外交官が外務省、それもいわゆるチャイナスクールにいるとは、率直に言って驚きだった。

中でも印象に残ったのは、ODAについてのくだり。大都市の巨大プロジェクトの場合では日本の貢献を必死にアピールしなければならなかったのに、地方の小さな要望をくみ上げて援助するようにしたら頼まなくても感謝してもらえるようになったとのこと。金は巧く遣いたいものだ。

全編に、中国の脆弱さが書かれている。環境問題、水不足、社会保障制度の未整備、官僚の汚職による経済の非効率、大都市の高層ビルの非耐久性などなど。そして何より、筆者が「義憤を覚える」というほどの農民搾取の実態。どう考えても、共産党はこれらの難問を解決できそうにない。面積も人口も中国は巨大すぎるし、地方政府や末端の官僚が中央のトップの意向通りに動かないからだ。

それにしても、我々は厄介な隣人を持ったものだ。だが引っ越すわけにはいかない。せめて我々は、中国がハードランディング、あるいはクラッシュしないように建設的な関与をしていくしかないのだろう。それが筆者である杉本氏の遺志でもあると思う。

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2009年10月04日

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