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Posted by ブクログ
「北方水滸」で早々に命を散らすことになる青面獣楊志、そしてその養父の死を目の当たりにするあたりからかなり特異な光を放ち始め、挙句、続く「楊令伝」ではタイトル・ロールを演じることになる楊令。 そんな2人のルーツ(と言っても楊令は楊志の養子だから厳密な意味ではルーツとは言えないかもしれないけれど)ともいうべき宋建国の英雄・楊業とその一族の物語ということで、ついつい手を出してしまった1冊です。 全2巻のうち現段階ではまだ上巻なので話は始まったばかり・・・・・という感もなきにしもあらずですが、年代的にはこの後に続く水滸伝、楊令伝でも描かれた文官 vs. 武官の確執とか、多くの小国が建っては滅びていくその空気感みたいなものがじわ~っと漂ってくる物語だと思いました。
さて、この楊業さん、現代の少子高齢化日本では想像できないほどの子沢山で7人の息子と2人の娘がいるそうな・・・・。 そしてこの男の子たちがそれぞれ「武家の男」として鍛え上げられているわけだけど、それぞれが少しずつ資質が異なり、戦の仕方や配下の兵との接し方も違うらしい。 そのあたりの書き分けみたいなものは「水滸伝」や「楊令伝」と比較するとちょっと粗いような気もするんだけど、これは上下2巻という冊数の少なさによる部分も大きいのかもしれません。
KiKi にとって「水滸伝」や「楊令伝」が面白かったポイントに、テンポ・臨場感のある戦の描写というのももちろんあるんだけど、それ以上にそれ以外の部分(時に世論的には「中ダルミ」と捉えられがちだったみたいだけど)、特に心理描写や生活様式、生産活動やら経済活動といった周辺の描き込みの部分に魅せられたということがあったのでそういう面ではこの作品はちょっと物足りなさも感じないではありません。 武家の物語だから仕方ないのかもしれないけれど戦、戦、調練、戦という感じだし・・・・・・。
でも、そんな不満をちょっぴり抱きつつも、結構楽しめちゃったのは敵側(≒ 遼側)の描写が緻密なうえ、恐らくこの楊家軍の最大の敵となるであろう「白き狼」こと遼の名将・耶律休哥という人物が何とも魅力的だったおかげかもしれません。 それに宋という国が文治主義の国であるのに対し、遼という国が古代ギリシャのスパルタそのものの軍国家であるというあたり、この2つの毛色の異なる勢力が乱世の中でどんな風に絡み合っていくのか、好奇心をかきたてられます。
Posted by ブクログ
楊家の武人たちが、政局の思惑が入り乱れる中にあっても、武人としての誇りを最後の最後まで貫き通す。物語にはつきものであろう「愚将」との対比効果もあるんだろうけど、その凛とした生き様がとにかく格好良い。読み終えた後には、なんとなく背筋がシャンと伸びるような一冊。爽やかな読後感が欲しい人にお勧め。続編も読んでみたいな。