あらすじ
なぜドイツはイスラエルを批判できないのか?
ーー犠牲と加害の反転はどのようにして進んだか
『歴史修正主義』(中公新書)で注目された歴史学者が提示するガザ紛争を理解するための新たな視座!
ドイツの戦後の歩みはユダヤ人を究極の犠牲者にした!
紛争によりガザが破壊し尽くされた中、イスラエルの姿勢はホロコーストの記憶とも結びつけられる。
ドイツはナチ犯罪者を最後の一人まで裁き続け、「反ユダヤ主義」の撲滅を掲げてきた。
そのためドイツによるイスラエル支援は、補償にとどまらず武器供与まで及んだ。イスラエルへの安全保障は「国是」だったのである。
ドイツの「過去の克服」は、両国の政治、経済、軍事の利害と密接に絡んできた。その歴史を解きほぐし、変化を迫られる姿を描くーー。
世界は戦争を止められないのか。ナチズムの克服は、より良い世界をつくるためではなかったのか。
ドイツとイスラエルの特殊な関係をつまびらかにすることで、ガザ紛争を防げなかった世界構造のねじれが見えてくる。
序 章 世界の機能不全はどのようにして起こったか
第一章 国籍──国民の境界は歴史が形づくる
第二章 裁き──犯罪をどこまで、どう裁いたか
第三章 国際法──反省から生まれた新しい秩序
第四章 償い──和解のための補償、安全保障へ
第五章 言葉と認識──私たちはパレスチナを理解する言葉を持っているか
終 章 ゴルディアスの結び目
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Posted by ブクログ
ホロコーストのような大きな不正が起きてしまった後は、克服は長く複雑な過程を辿らざるを得ず、ねじれが生じてしまう事を複数の視点から教えてくれる本。
あらゆる事がそうたが、物事の二面性もしくは多面性があり、より複雑化する事が分かった。賠償は償いの側面もあるが、経済協定でもあり、経済関係が結ばれることで戦争は抑止される。しかし、ドイツがイスラエルに行った武器輸出はパレスチナ問題に影響を与えてしまっている点。パレスチナの難民の帰還は正当であるものの、武力にる帰還を目指した頑なさが和平交渉を遠ざけてしまい、また、他国に逃れた難民が自国に帰還する名目を失う為に、その国の帰化をせずに難民状態が続いている。イスラエルの緑化政策が不可視化するパレスチナへの抑圧。まだまだ沢山あるので次はメモをとりながらの再読したい。
また、著者が自身の専門から外れて日本に言及する箇所にも意思を感じた。大戦後の在日コリアン・台湾人に日本国籍の選択権を与えなかった背景があるにも関わらず、今の排外主義の蔓延は理不尽だ。また、国家として過去の克服・清算を能動的に行わなかった為に、結果として第三者的な安全圏に留まっている論は、日本のことを指しているはずなのだけど、自分の人生に繋がるような話に思え、振り返り情けない気分になった。
Posted by ブクログ
2023年から始まったイスラエルによるガザ地区への攻撃は停戦交渉と戦闘が繰り返され、終わる気配は中々見えてこない。両者の外側の立場で見る日本人の私から見れば有無を言わさずイスラエルが悪だ。誰がみても大凡そのように見えているだろうし、先に手を出した(人質をとった)のがハマス側(アル•アクサの洪水作戦)だとしても、イスラエルのその後の反撃は過剰に感じるだろう。そしてその被害を何よりも大きく被り皺寄せ先となっているのはガザ地区の無辜の市民である。彼らの病院や住居がイスラエルにより破壊された映像を見る度に強い憤りを感じるに違いない。勿論、報道は世論を過剰に誘導したり、それらしい映像ばかりを繋ぎ合わせた編集側のストーリーだから鵜呑みにするのは誤りだと判っている。だがこれだけ悲惨な映像の全てが嘘ではないし、市民に被害が広がり続けているのは紛れもなく事実だ。
今、世界はイスラエルを批判し、何とかこの戦争を終わらせようと各国が圧力をかける。だがイスラエルは大国アメリカの後押しでその手を緩めようとしない。その他の国はどうだろうか。イギリスやフランスといったヨーロッパの国々はイスラエルを非難し自制を求める。遥か離れた極東の日本も(珍しく)批判的な立場をとっている。その様な中でドイツの立ち位置はどうだろうか。
かつてドイツ帝国は世界を混乱に陥らせた第二次世界大戦の火種となった。その後ナチス•ドイツはユダヤ人へのホロコーストにより600万人とも言われるユダヤ人大虐殺をおこなった過去を持つ。本書はそれら歴史を振り返りながら、その後のドイツの戦後賠償やユダヤ人に対する補償の流れと合わせ、今のドイツがイスラエル(ユダヤ人)に対して強い態度を取れない、という状態の分析から始まる。果たしてドイツはユダヤ人に対してどの様な対応ができるのか。
またそれに対比する様に、日本が太平洋戦争後に抱えてきたアジア侵略に対する補償などの対応が正しかったかどうかについても、同時に比較分析していく。ニュルンベルク国際裁判後もナチス関係者を独自に捜索し続けたドイツ。戦後補償を早々に終わらせ、既に戦争とそれに付随する犯罪行為がなかったかの様に振る舞う日本。後者も極東軍事裁判で裁かれはしたものの、基本的には戦後保証は終わり、「なかった」かのように扱う日本。この戦後補償に対する2つの大国の態度を比較しながら、戦後補償のあり方に言及すると共に、それが齎した弊害という立て付けで、今のガザ問題に代表されるドイツの対イスラエル外交の在り方を考える内容となっている。
果たしてドイツはイスラエルとユダヤ人に対して、(戦争を止めろと)強い態度を取ることが出来るのか。終戦から80年以上が経過し、当時を生きた人々が今となっては毎年、多くの方が鬼籍に入る。戦争を知らない人口層に世代が交代し、ある意味ユダヤ人に対する罪の意識は、学んだものとしてしか心得ていない世代が中心になる。過去を正しく精算しつつも、未来へ向かってイスラエル(ユダヤ人)との関係をどうしていこうとしているのか。
本書はそうしたヒントに溢れる一冊である。