あらすじ
「わしのこと以外、書くことなんてないやろ」
カンザキさんは、悪魔だったのか、それとも――。
大学卒業後、引きこもりを経て、僕が働くことになったのは、離職者続出、いつでも求人中の超絶ブラックの配送会社。
そこで先輩として出会ったのが、誰にでも優しい人格者のミドリカワさんと、「殺すぞぼけ」と人を罵り、蹴りを入れる悪魔のようなカンザキさんだった。
ナンバーワンの配送員になって幹部を目指す!と豪語した同期は、カンザキさんと組んで入社2週間で辞めた。要領の悪い同期はカンザキさんに殴られ続け、走るトラックの助手席から飛び降り、入院してしまう。そしてカンザキさんと組まされた僕は、カッター片手の彼に、荷台の上へ引きずり込まれ「服を脱げ」と命じられて――。
圧倒的な暴力と不条理の果てに、見えてくる戦慄の光景。
注目の劇作家による初小説! 第47回野間文芸新人賞受賞作。
【著者略歴】
ピンク地底人3号(ぴんくちていじんさんごう)
1982年生まれ。同志社大学文学部文化学科美学芸術学専攻卒業。劇作家・演出家。2019年「鎖骨に天使が眠っている」で第24回劇作家協会新人戯曲賞受賞。2022年「華指1832」で第66回岸田國士戯曲賞最終候補。初の小説である本作で第47回野間文芸新人賞受賞。
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Posted by ブクログ
評価が低いのは主人公の精神年齢が低く荒唐無稽と思っている人が多いからだと思う。実に奇想天外で興味深い作品だと私は感じた。損な役回りを受けたくない気持ちや一人に期待して裏切られたら空想に避難する気持ちは非常によく分かる。カンザキさんは身勝手で自分の威厳を保つために、新人の粗探しをして言葉の揚げ足を取る。こんな人が一人でもいれば、辞めたくなる。煙草を額に擦り付けられる等まで酷くはないが、身に覚えがありすぎました。 最後は音から連想して過去の記憶にカンザキさんが現れてしまうという幕切れだが、夢や空想にパワーハラスメントをしてくる人物が出てきたら逃げなきゃダメだよと主人公に言いたくなる。五感から連想して妄我に浸る筆致が巧みでした。
精神疾患から休職している方やハラスメントに合っている方なら、本作を読んで共感できるのではないか。純文学こそ、社会的マイノリティの方に読んでほしい。個人的にエンタメ小説より共感できる。