【感想・ネタバレ】どの口が愛を語るんだのレビュー

あらすじ

SNSでの炎上から田舎へ逃れてきたぼくは、なぜ無軌道な不良と猿に火をつけたのか?(「猿を焼く」)。台湾政府が同性婚の合法化を認めた。ゲイで詩人の莊祐明(ジュアン ヨウミン)は、その報せを喜ぶ彼・何安得(アンディ)からの電話に複雑な感情を抱いていた。その違和感の正体は一体何なのだろう・・・・・・(「恋は鳩のように」)他3編。――みんな必死でみんなできそこない。これこそが生身(できそこない)の人間の、究極の(どうしようもない)愛だ。愛に憧れ、愛を憎み、愛に傷つき、愛にすがる全てのひとびとのための、迫力の恋愛小説集。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

『猿を焼く』イチゴ農家になるという両親の思い付きで、熊本の田舎に連れてこられた中学三年生が出会ったのは、一人、大人びた目をした少女、ユナ。全寮制の高校に進学することで、田舎を一抜けした彼は、堕ちていくユナの姿に、自分の無力さを知る。切ない。

『イッツ・プリティ・ニューヨーク』中二で転校した学校で出会った亀山亀は、イジめられていることにも無頓着、ザ・ゴーイングマイウェイな男。前科者の父親と狂った母親、アバズレのお姉さんと暮らしているそいつへの苛立ちと、そのお姉さんへのほのかな恋心。第一志望になれなかった彼は、数十年後の再会で、亀山亀のことを理解する。見下していた男が、自分とは違う世界を見ていたこと、それが認められたことで、自分の矮小さに、気づいたのかな。ほろ苦い味わいが残る。

『恋は鳩のように』同性婚が認められた、記念的な日から始まる。「地下室」と呼ばれる詩人と、その同性の恋人と、その恋人の浮気相手(同性)と、そして何年も前から地下室の愛を欲している異性。それらの愛の駆け引き。

『無垢と無情』街にゾンビが溢れ、外出もままならない中、オンラインでつながる人たち。感染した両親と兄妹を締め出し、殺した主人公。生きている意味を、何に見出せばいいのか。オンライン上の相手の生を望むことは、愛ゆえか、それとも自分の生を肯定したいからなのか。極限下で、愛は生まれるのか。

『CRYING』マチアプで女漁りをする主人公。そのせいで、命が脅かされる事件があり、一切足を洗う。守るべきものは、妻なのだ。が、その妻の浮気を目撃し、再開する。

『CRYING』ではマタイによる福音書からの引用「あたながたは地の塩である。だが、塩に塩気がなくなれば、その塩は何によって塩味が付けられよう」が、話の根にある。「ぜんぜんしょっぱくない塩もやっぱり塩って言えるのかな」と問う少女。「しょっぱいものが欲しいときにはしょっぱいものを求めればいいし、癒されたいときは癒してくれるものを求めればいい」という主人公。本質がどうであれ、構わないのか。フィッツジェラルドの引用「自分が壊れたという認識は、受けた打撃と同時にもたらされるのではなく、猶予期間を置いて後日やってくる」もかっこよかった。

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2026年01月31日

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