【感想・ネタバレ】メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「メルトダウン」(講談社ノンフィクション賞受賞)を読んで、日本の原子力行政に対して、ショックと怒りがいっぱいです。
★2008年のスマトラ沖地震で、インドのマドラス原発の非常用海水ポンプが機能を喪失したのを受けて、保安院は電力各社に注意を喚起し、東電は明治三陸沖地震と貞観津波のシュミレーションを行い、波高が15m以上になる結果を出していた。にも関わらず何の手も打たず放置し、さらにひどいのは、震災の3日前には、文部科学省が改定しようとしていた「地震活動の長期評価」が改定される際には、貞観地震の震源がまだ特定出来ないとか、繰り返し発生しているようには読めないようにしてほしいと働きかけている。
★原子力安全委員会の斑目委員長は2007年浜岡原発の訴訟で証人として出廷した時、非常用発電機が起動しない事態を問われると「そのような事態は想定していない。そんなことは割り切らなければ、設計なんか出来ない」と言ってのけている。
こんな人が日本の原子力行政の責任者なんです。
★震災当日には、東電の勝俣会長は仕事には関係のない中国ミッションで北京におり、さらにひどいのは清水社長にいたっては、秘書と奥さんを連れてウイークデイにも関わらずお忍びの奈良旅行をしていた。一番緊急時の2日間は両トップが不在という失態を演じている。
★情けないのは、政府関係の窓口になった東電本社が、原子力に関しての知見が皆無で、全部現場任せであったばかりでなく、管首相の顔色ばかりを窺い、海水注入の了解を取るのは難しいと勝手に判断して、当初現場の吉田所長が進めていた海水注水を止める指示を出している。(これに関しては吉田所長は本社へは止めると報告しているが、実際は作業を進めさせた)当然政府の原子力委員会も保安院も知見は皆無です。
★福島原発事故で大気中に放出された放射性物質の量はセシウム137で見ると、広島の原爆の168個分、ストロンチウム90で換算すると2.4個分。
★一番危険だったのは水素爆発を起こした原子炉建屋ではなく、使用済み燃料棒を保管していた4号機の燃料プールだった。ここは圧力容器も格納容器もなく、コンクリートの箱の水槽の中に燃料棒がむき出しになっていたので、地震でコンクリートにひびが入り水が漏れだしたり、階上にあるので底が抜けたら最悪の事態になっていた。
最悪事態のシュミレーションでは半径250kmが避難。当然東京を中心とする関東圏はこの範囲に入っており、3000万人が避難対象になっている。
★この他、東電存続に関しての意見対立や各金融機関の思惑。政府内での責任の押し付け合いや権限争いなどと続いていくのです。
混乱する政府の命令系統、責任逃れをするばかりの東電本社。
所管省庁の危機感のなさ、縦割り行政、責任のなすりつけ合い、権限争い・・・・それはまさにメルトダウンしていく日本の姿に重なりあっていると・・・読んでいて怒りを通り越して、情けなくて涙が出てきそうです。

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2013年06月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本書の帯にもあるように、まさしく「愚かな人間たちの物語」である。
書名の『メルトダウン』は福島第一原発だけのことではない。東電も政治家たちも霞ヶ関の役人たちもマスコミ各社も皆、自らの保身と責任転嫁に明け暮れている姿は、浅ましさとおぞましさが同居している。モラルがメルトダウンしているのだ。
民主党から自民党に政権が移行して、ますますこの溶融は進んでいくだろう。被災者・避難者は取り残されたままだ。
著者には取材を続けて、是非とも第二部も上梓していただいきたいものである。

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2013年03月04日

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