あらすじ
中学の入学式で新入生を代表した八神奏羽に瞬時に胸を撃ち抜かれ、推しとして崇め始めた金山富子。日々彼を観察し、妄想たっぷりに極秘のノートに書き綴る。抜け駆けを許さない空気の中、奏羽にはおいそれと近づけず、これは推しへの気持ちなのかそれとも恋なのかと悩み苦しんだ結果………性的修行をして彼の一番の女になると決意! 数年後、再会した奏羽はなぜか距離を詰めてくるが富子の早合点で取り返しのつかないことに――平凡女子が運命を引き寄せようともがく、ひたむき過ぎるラブストーリー!
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Posted by ブクログ
八百屋の娘・金山富子が恋に落ちた。
相手は中学の入学式で答辞を読んだ同級生、八神奏羽。
頭脳明晰、眉目秀麗、非の打ちどころがないキラキラ男子。
その日を境に富子の“推し活”が始まった。
綴られる妄想日記は赤面もの。
でも、健気で一途な姿を誰が笑えるだろう。
高校、大学と時が流れても、推し活は止まらない。
ついには「奏羽を虜にする!」と、何故か性的な熟練技巧者を目指し始める。
(いや方向性おかしいから!)…私の心の声が届くはずもなく、富子は今日も危うい道を突き進む。
紆余曲折あった二人だけど、今はその関係がとても尊く思える。
Posted by ブクログ
著者初読。
本作は「推し活」という現代的なテーマに惹かれて手に取った一冊である。
物語は、中学校の入学式で新入生代表として立つ少年・八神奏羽を目にした瞬間、初潮を迎えた少女・金山富子を主人公に据えて始まる。
その出来事は、彼女の人生における転換点であり、同時に“推す”という感情の原点となる。
富子は奏羽を崇拝に近い形で推しながらも、直接言葉を交わすことはできず、距離を保ったまま彼を観察し続ける。
そして日々の思いや妄想を、誰にも見せることのない極秘ノートに綴っていく。
その姿から、当初は精神的に不安定な少女の物語を想像していたが、読み進めるうちにその印象は裏切られる。
富子は驚くほど自分を客観視できる、芯の通った少女だった。
もちろん、時折見せる突飛な発想や、理解の及ばない精神の跳躍に戸惑わされる場面もある。
しかしそれすらも、思春期特有の感情の揺らぎとして自然に受け止められる描写であり、物語に歪さではなく生々しさを与えている。
そして迎える結末は、過剰でも不足でもなく、静かに胸に落ちる「良い終わり方」だった。
どんな距離であれ、どんな形であれ、相手を思い遣り続けること。
その姿勢を失わない富子の存在は、ひたすらに尊く、読後に温かな余韻を残す。
推し活を描きながらも、人を想う心の本質に静かに触れる一作だった。