あらすじ
大好評ロングセラー『発声と身体のレッスン ─ 魅力的な「こえ」と「からだ」を作るために』の続編! アマチュアからプロまで、表現力を豊かにするための、演技のバイブルついに登場。
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Posted by ブクログ
物凄く丁寧な説明。
ルビもかなり簡単な漢字にさえうってある。
子どもにも日本語が苦手な方にも親切。
そして内容がとても興味深い。
良い本に出会えた感でいっぱい。
Posted by ブクログ
演技どころか演劇すら知らない身でしたので、視野広げるため、演出を知りたくて読みました。
演技と演出がセットになっている理由は演技のないところに演出なし、演出ないところに演技なしなのかもしれません。
演劇というものを理解する一助になりました。
Posted by ブクログ
言わずと知れた演出家でタレントの著者による、舞台や映像で効果的、魅力的な演技をするための考え方や練習方法を紹介したもの。たくさん「エクササイズ」が収録されているので、誰かとこの本を実践するのは確かに面白いし役に立つかもしれない(でもやっぱり講評してくれる人は欲しいと思うけど)。「世界で初めて、演技の秘密を解明し、演技へのアプローチを科学的に体系化した人」(p.17)と言われているロシアの俳優・演出家スタニフラスキーが提唱したスタニスラフスキー・システムという演技訓練方法に基づいている。著者自身がイギリスで苦労しながら身につけたということが伝わってきて、必ずしも上から目線でもない感じも良かった。
文章がとても分かりやすく読みやすい。内容も面白いのでスイスイ読める本だった。おれは昔演劇をやっていたのに「スタニスラフスキー」という人を初めて聞いた。これはプロの人たちにとっては、こういうメソッドがあるというのは常識の範疇なのだろうか。どれくらい受け入れられているものなのか、客観的な評価とかは全く分からないので、別に手放しに肯定することはできないけれど、それでも自分が演劇をやっていた時にどこかで言われたこととか、なんかやったり見たりしたことがあるエクササイズが載っていたので親近感を持てた。
あとは自分が気になったところのメモ。まず演技をしている時の理想は「考える」と「感じる」をうまくバランス取る、という部分で、「『感じること』と『考えること』のせめぎ合いを、ぎりぎりコントロールすること。それが、一番、感動的な演技なのです。」(p.16)というところは納得した。大人になってからちょっとだけ演劇に参加したこともあるけど、その時は「考えること」ばっかりで、まったく下手くそだったなあと思う。もうセリフを言うだけで頭いっぱい、みたいな。おれやっぱり向いてないかも、と思った。言い換えると、「演技とは、『心で体験する芸術』と『形で表現する芸術』の総合されたもの」(p.125)ということらしい。そして心に集中するのか、形の結果として心が生まれるのか、という2つのアプローチでスタニスラフスキーという人は方針を前者から後者へと変えた、ということらしい。プロの人でもこうやって方針が変わるんだから、アプローチはいろいろあるんだろうな、と想像できる。表現と内面が双方向(p.168)、とか、状態を行動にする(p.111)、という話とも関連すると思う。
他に演技について印象的な言葉がいくつかあり、まず「演技は、他人になることではありません。演技は、自分の人生のありえた可能性を追求することです。」(p.63)というのは演じることの面白さ、楽しさを表している気がして、ゾクゾクした。狭い演劇経験から思っていたことは、演技うまいと思う人ってその人の素と、役を重ねられる人だよなと思っていたけど、確かにこういう捉え方はできるかもなと思った。あとは「派手な表現をしようが抑えた表現を選ぼうが、観客が見ていて面白いと感じるのは、心が激しく動く瞬間です。強烈な感情が自然に湧き上がる俳優を目撃することが、観客の興味につながる」(p.76)も分かりやすいし、ここがポイントであると思った。これをどう自然に湧き上がらせて表現につなげるか、ということに苦心するのがこの本でやろうとすることだと思う。そして実際に「行動」として表現にうつすために、「目的」と「障害」がある、という話で、「『目的』と『障害』の緊張感のあるワンセットが成立しなくなった時に、ドラマの緊張も失われ、面白さや興味深さ、スリリングさが作品から失われる」(p.83)ということだから、自分の役の瞬間瞬間で「目的」と「障害」を意識する、ということが重要だそうだ。例として『ロミオとジュリエット』のセリフのない「門番」の役だったらどうするか、という話が書かれていて、プロになるとこういう役にこそ演技の方法を見出すものなのか、と思った。「俳優は、『予想を裏切り、期待に応える』必要がある」(p.210)って、ほんと難しい技術だなと思う。あとは上手い演技とは、という話の裏返しとして、下手な演技とは、という話を読むのも参考になるが、「俳優を目指す若者は、日常、『しゃべっていること』と『考えていること』が違うことがよくあるのに、セリフになると、例えば、『私がやります』というセリフがあると、一生懸命、『私がやります』と叫び続けます。」(p.181)という部分があったが、これは下手な例、ということだと思う。最後に、「自然な感情」と「ひねった表現」と「面白さ」の重なるところが目指すべき演技、ということだが、この3つの軸を知っていれば、いろんな人の演技を見て分析できる指針になりそう、と思った。個人的にはこの「ひねった表現」というところがやっぱり一番難しいが、必ずしも特殊な表現をすることではなく、「日常的または生理的なうなずきや動きを削ぎ落とす、というのも、じつはひねった表現」(p.246)は、おれも昔やったことあるなあと思った。あえて絶対に動かないようにする、みたいな。最後に、「観客は、あなたが自慢することやカッコつけることや気取ることからは、何も感じません。けれど、あなたが勇気を持って、人間が人前では隠したいと思っていること、取り繕いたいと思っていることを表現すると感動するのです。」(p.281)ということだから、俳優の素質や動機って「出たがり」というのがあると思うけど、それと矛盾したところに目指すべきところがある、という点ではとても難しい技術職、ということがわかった。
なぜこの本を読んだのかと言えば、少しまた久しぶりに演劇に参加する機会に恵まれたからだけど、今度は「感じること」も十分できるように、でも「嘘くさく」ならないように、楽しみたい。「レッスン13」の「癖ではなく、表現」という部分をもっと頑張りたいと思い、著者が書いた別の文庫本も早いうちに読もう。(25/01/27)
Posted by ブクログ
主に、スタニスラフスキーシステムを元にした演技論。
台本を読んでどのように状況と設定を作りこみ、それをどのように表現するのかの方法論が具体的に書かれている。私は演技はしないが、なぜあの役者の演技が素晴らしくて、なぜあの役者の演技は拙いと感じるのか、その理由が明確に見えるようになったのがとても収穫だった。
Posted by ブクログ
正直、職業的な興味でふっと衝動買いした本です。
割と面白かったです。
内容は所謂ワークショップ本とでも言いますか、鴻上尚史さんが、あちこちで若い人向けにワークショップをやるときに、やることや言うこと、を効果的にまとめました、みたいな感じです。
面白かったのは、何が良い演技・良い俳優なのか、という定義不可能な問題について、鴻上さんは、
「それはまあ分かんないし、天才とかいるし、才能とかあるし。でもとりあえず、あなたが職業俳優になった場合に、"なるたけ失業期間の短い職業俳優"、になるには、どうしたら良いか?」
という、もうちょっとブレイクダウンした具体的な次元で、まず課題を設定していることですね。
その上で、スタニスラフスキーシステム。昔、スタニスラフスキーの本はちょっと読んだんですが、正直まったくピンときませんでした。訳が悪いのか・・・。スタニスラフスキーって、名前からして早口言葉ですよね。
で、鴻上さんは、スタニスラフスキーシステムは、テレビドラマ的大量生産の現場での演技術の中で崩壊した、と考察していて、まずそれが、うんうん的確だなあ、と思うんですね。それだけでも興味深いんですが、鴻上さんは、
「記憶と感覚、みたいなスタニスラフスキーシステムは、スタニスラフスキーの前期の考え方です。
それはそれで無論価値はあるんですが、僕はそれよりもスタニスラフスキーが晩年に至った考え方、内面よりもまず外面、体の動きを重視する考え方が好きです」
と、立場表明する訳ですね。
面白いですねー。ちょっとドキドキしますねえ。・・・普通、何が何だかワカラナイですよね。
ものすごーく大雑把に言うと、役柄とか芝居を考えるときに、
「自分がいちばん傷ついた記憶をさぐる」 とか
「内面を深く掘り下げて感情の源からどうのこうの」 とか
そういう、そりゃーほとんど新興宗教じゃねーか?
と聞こえかねない言葉があって、
それはそれで言葉がいい加減に使われているだけで考え方は悪くなかったり、方法の一つとしてはアリだったりするんですね。
ただ、そういうことよりも、
「悲しい」 という状態は、表現はできない。無理にしても紋切りになるだけ。
悲しいなら、何をする?
どういう状況にいるのか、自分で細部まで妄想する。
例えば、17歳で川沿いで失恋して誰も見てなくて夕焼けがあるならば、「叫んでみる」とか「川に飛び込んでみる」とか「しゃがみこんで空を見つめる」とか。
とにかく、「悲しい」ということを自分の中で具体にブレイクダウンして、外面化する、みたいなこと。
その辺を妄想する思考力?想像力?それを表現できる身体性。
例えば声の出し方のバリエーションを持っているか。
しゃべりかたのテンポのバリエーションを持っているか。
自分で集中するときに、集中の段階を使い分けられるのか
(独りの内面に入る。相手とふたりの関係に没頭する。周辺の社会まで意識する。みたいなパターン分けができるか)。
みたいに、とにかく切れば血が出るような具体性を意識して書かれている。結構面白かったです。
というワケで、ヘンに過剰に超人的内面性に依拠した演技論とか、スタニスラフスキーの前期の思想をなんだかヘンテコに衒学的に訳した本に依拠した、一見カッコイイけど具体的には 「結局そりゃアンタの主観次第じゃん」、 となってしまうような演技論とか、そういうものを読むよりは、俳優志望の人や、実際俳優の入口に立っている人、入っちゃった人とかには、お薦めですね。
なーんて言いつつ。
僕は実は、かつて鴻上さんの監督映画「ジュリエット・ゲーム」を封切りロードショーで観たんですね。誰も知らないだろうなあ・・・。
村上弘明さんと国生さゆりさん主演で、一目惚れ映画で、とにかく劇中でRCサクセションがバンバン流れて、それが好きだったんです。
それから、ずーっと後年ですが、鴻上さん作・演出の演劇「リンダリンダ」を観た事があります。山本耕史さん主演で、ブルーハーツが流れまくるんですが、僕はコレも感動しちゃいました。
不勉強なことにそれだけで、第三舞台とか観たことないんですけど、その二つの体験は割と覚えてるんですね。
そんな体験があるから、何となく説得力があるように読めちゃうだけかも知れませんけどね。
ま、でもコレ、シリーズなんで、いつか別のモノも読むかもです。