【感想・ネタバレ】三浦綾子 電子全集 北国日記のレビュー

あらすじ

日常風景から人生を語りながら、癌と闘う姿を日記風に綴ったエッセイ。

「私の日記のテーマ、というより生きるテーマは、『死』である。『死』を考えることによって私は『生』を考える。つまり『死』について思いを深めることが、私には『生』を深めることになる。」(「おわりに」より)。
人間関係を日録ふうに綴りながら、一方では癌発病におびえ、生と死の葛藤がめぐる。さまざまな日常風景を、透明で明るい筆致で著した、感動のエッセイ。

「三浦綾子電子全集」付録として、「小説すばる」に執筆した本書の紹介エッセイを収録!

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Posted by ブクログ

体調の心配をしながら、執筆とか面会とか、本当に忙しく動かれていたんだなと思った。ずいぶん体調が悪そうだったので末期の作品かなって思ったら、このあとまだたくさん作品を発表されていた。どういうモチベーションでやっていたのか?信仰が支えになっていたんだろうなぁ。

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2022年07月28日

Posted by ブクログ

著者の病養中の日記。いたるところに、著者の感銘した出来事や言葉が綴られている。

人間はパンのみにて生きるにあらず、神の言葉によって生きる

「愛し合ったから結婚したのではなく、愛し合うために結婚するのです」という祝辞あり。まことに然り。結婚必ずしも熱い愛によってなされるとは限らぬ。外見に迷ったり、金に迷ったりの、軽薄な動機で結婚する者もいれば、行きがかり上心ならずも結婚する者もある。人間は意外に浅はかに結婚するものだ。だが、結婚の目的は愛し合うためなのだ。結婚した以上、深く、全力を注いで愛し合いなさい。一生を終えて、一人の妻を愛し貫いたと言えるならば、それは実に大きなことなのだから。

他人の過失や弱点は、それはどんなものであろうと、努めて耐え忍びなさい。あなたもまた他人が忍ばねばならぬ多くの点があるからである。われわれは他人が完全になることを求めて、しかも自分の過失は改めないのである

水はありがたいねー、栓を捻るだけで水が出るのだから。三浦は蛇口をひねる度に、いつもこう思うのだそうだ。そして神に感謝を捧げるのだそうだ。開拓農家に育った三浦は、少年時代遠くの川まで水汲みに行ったとか。そのことを覚えていて、水道への感謝を忘れたことがないらしい。また三浦は、入浴する度に、これまたその都度、神に感謝しているという。十年前、この家を建てて、初めてわたしたちは銭湯に行かずにすむようになった。当の自分は風呂に入る度に感謝してはいない。家が与えられるという同じ体験であっても、三浦は毎日感謝し、わたしはたまにしか感謝しない。同じ運命に会っても、一人は喜び、一人は当然な顔をする。自分の人生を豊かにするのも貧しくするのも、その人間の心のあり方によるのだろう

愛は損すること。利用するのは愛ではない

愛するとは甘やかすことではない。きびしいだけでもない。許すこと、耐えること、望みを抱くこと、不義を嫌うこと、いらだたないこと、微慢にならぬこと、恨みを抱かないことなどなど、新約聖書コリント第一の手紙十三章には、愛について書いてある。だが、わかったからといって、愛する力をわたしたちは持ち得ない。人間は愛するよりも憎しみを抱く存在だ。人の悪口を言いたい存在だ。そんなわたしたちだから、神の前に身を屈めて、「愛することを教えてください、愛する力を与えてください」と、絶えず祈らなければならないのだろう

われわれ人間に対する神の要求に次の三つあり。
一、喜べーすべてのことを
二、祈れー常に
三、感謝せよー都合の悪いことも

われらは意見のちがう者を嫌う。しかし自分に好意を持たぬ者と仲よくせよ。気に入らぬ者を大事にせよ。そうした人と喜んでつきあえ

ベートーベンは、「本当の芸術家という者は、決して傲慢ではない。なぜなら、本当の芸術家は、不幸にも芸術には限りがないということを知っているからだ」と言っている。つまり芸術にゴールはない、ということなのだろう。

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2024年11月22日

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