あらすじ
「HHH(エイチ エイチ エイチ)」とは、
Hindi Hokkaido Horseman(ヒンディー・ホッカイドウ・ホースマン)のこと。
インド人が急増している町が北海道にある。
競走馬の産地、浦河町。
(2025年初夏時点で、400人ほどがこの町に暮らす)。
今、競走馬の生産現場は、多くのインドからの働き手によって支えられているのだ。
そこに密着2年間。そしてわかった
「インド人がいなかったら、日本の競馬は成り立たない!」というリアル。
そして「なぜ、この町では多民族が共生できているのか?」の謎。
・インド人は、なぜ灼熱の地から氷点下10℃の北海道にやってきたのか?
・彼らは競走馬の調教に長けているのか?
・日本社会を彼らはどのように見ているのか?
・一方で、日本社会は彼らをどのように受け入れているのか?
・そもそも、競走馬の育成システムはどのようなものなのか?
・JRAはなぜ「競走馬の育成は、外国人がいなければ成り立たない」という現状に沈黙を続けるのか?
・そして、外国籍の方に対して厳しい日本は、少しでもマシな国になっていくのか?
・・・・・・など。
何も問題がないなんてことはありえない。むしろ、毎日問題は起きている。
でも共存。だって仲間で、同じ人間じゃないか。
競走馬育成の現場を通して多文化理解を志す人々を見つめた、
友情と傷心と希望のノンフィクション!
【著者プロフィール】
河野 啓(こうの さとし)
1963年愛媛県生まれ。北海道大学法学部卒業。1987年北海道放送入社。ドキュメンタリー、ドラマ、情報番組などを制作する一方、ノンフィクションの執筆に取り組む。著書に『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』(第18回開高健ノンフィクション賞)、『北緯43度の雪 もうひとつの中国とオリンピック』(第18回小学館ノンフィクション大賞)、『ヤンキー 母校に恥じる ヨシイエと義家氏』など。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
競馬の世界にいない河野氏によるノンフィクションルポ。HHHはヒンディー・ホッカイドウ・ホースマンの略称(造語)だが、登場人物はヒンディーに限られず、イスラム教徒もいるし、出身地もインドに限らずベトナム・南アメリカ・ジンバブエなど幅広い。また、取材地も北海道が中心だが、千葉に行った人を追いかけたりもしている。
北海道ではインド人が多数いることや、マレーシア人のエージェントがいることはなんとなく噂では聞いていたし、地方競馬場では日本人ぽくないルックスの方が馬を引いているのをよく見るようになった。
そのあたりの事情が非常によく分かる。
浦河町では2015年に13人のインド人が初めて住民登録をし、2025年には327人にもなっているとのこと(39頁)。10年で激増している。
「日本人の若い子は入って来ないし、来てもすぐやめるし……成り立たないですからね、彼らがいなかったら。この辺の牧場、全部つぶれてますよ」という辻牧場及川氏の言葉(54頁)がことの発端。この現状を受け入れることが出発点。
しかし、登場するホースマンはいずれも良くも悪くも個性的。勤勉さは必ずしも期待できない。古くからいるオーストラリア人などは「技術もないし、態度も悪い」と厳しい目を向けている(73頁)。
中には(過失は不明だが)死亡交通事故をおこした人もいる。逃げた人もいる。アルコール中毒の人もいる。これらの人への取材の結果がしっかり残っている。死亡事故をおこしたマヘンドラとのやり取りは重い。まあ「そんな奴は日本から叩き出せ。代わりはいくらでもいる」というのは簡単だし、今はそういう意見の方が受けるんだろうけど。
とはいえ、インド人のセクハラ問題について「日本人も同じですよ。日本人の方がもっと陰湿かも……」(192頁)という意見もあったりして、馬産地の闇は深い。
さらに、エージェント側の様子も、その報酬分配の実態までしっかり踏み込んでいる。社会保険加入問題も赤裸々に語られている。
ラマダンの様子(236頁)も興味深い。断食をしていた乗り役は過去1人だけらしい。
最終10章では、JRAへの取材結果も。川崎競馬の山崎尋美調教師はインド人導入積極派で、大井と船橋が反対しているらしい(262頁)。また、橋本聖子議員のコメントも取っており、突っ込んだコメントを取っている。今の自民党的に大丈夫なのだろうか。
とまあ、とにかく取材の成果が存分に現れた、素晴らしい本。これだけの具体的なエピソードを載せたのは本当に凄い。競馬界にいない著者だからこそ、変なしがらみもなく書けたのかもなあ。
Posted by ブクログ
ポップな表紙や語り口とは裏腹に、余りにもハードでドライで物悲しい競馬牧場の外国人達のドキュメンタリーだ。
浦河町に限らず日本は既に多民族国家で、且つ選ばれない国になりつつある。だからこそ気取ったり現実逃避したりせず、共に生き抜く為の知恵と勇気が必要だと思った
Posted by ブクログ
精神科医の香山リカさんは現在、北海道むかわ町の診療所でかかりつけ医として働いておられる。
週に1回、毎日新聞にコラムを書かれていて、読むのを楽しみにしている。
ある日「HHH」という本のことに触れられていた。
北海道のインド人たちが日本の競馬会を支えている?
本は一期一会、私はネット書店に注文した。
さて、先ほど読み終わったのだが、泣けてきてしまった。
涙腺のパッキンが緩みきった還暦オヤジであることを差し引いても泣ける本だ。