あらすじ
夫の突然の腹痛、そして入院。検査を繰り返すが、原因は不明。
ようやく診断がついたときには、余命わずか数週間。
「原発不明がん」とは、いったい何なのか?
第22回開高健ノンフィクション賞最終候補作
【各界から絶賛の声、続々!】
理不尽極まりない、まさに「見えない死神」。明日は我が身。震え上がりながら一気に読んだ。
――成毛眞氏(「HONZ」代表)
哀しみの底に沈みながらも、決して諦めない。検証し続ける。その圧倒的な想いの強さに胸うたれる。
――小池真理子氏(作家)
著者は、愛する人を「希少がん」で亡くすという個人的な体験を病の普遍的な記録にまで昇華させた。苦しみを同じくする人々や医療難民にとって必見の情報と知見がここにある。
――加藤陽子氏(歴史学者)
【あらすじ】
ある休日、夫が原因不明の激しい腹痛に襲われた。入院して検査を繰り返すが、なかなか原因が特定できない。ただ時間ばかりが過ぎ、その間にも夫はどんどん衰弱していく。
入院から3ヵ月後、ようやく告げられたのは「原発不明がん」の可能性、そして夫の余命はわずか数週間ではないか、というあまりにも非情な事実だった。
この「原発不明がん」とは、一体いかなる病気なのか?
治療とその断念、退院と緩和ケアの開始、自宅での看取り・・・・・・。発症から夫が亡くなるまでの約160日間を克明に綴るとともに、医療関係者への取材も行い、治療の最前線に迫ったノンフィクション。
【著者プロフィール】
東えりか(あづま・えりか)
書評家。1958年千葉県生まれ。信州大学農学部卒。動物用医療器具関連会社で勤務の後、1985年より小説家・北方謙三氏の秘書を務める。2008年に書評家として独立。2011年から2024年までノンフィクション書評サイト「HONZ」副代表を務める(現在閉鎖)。日本推理作家協会会員。『週刊新潮』『小説新潮』『婦人公論』『本の雑誌』『公明新聞』『日本経済新聞』で書評を担当。文庫解説担当著書多数。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
最後の解説p324〜駒込病院希少がんセンター長、下山先生の文章が素晴らしかった。客観的なので状況がよくわかる。
原発不明がん、これほど最先端の医療が発達しているのに腫瘍専門医でも知らない希少がんがある事にショックを受けた。医学的なこと以外で驚く事も。
がん治療のため腫瘍内科に入院しても抗がん剤を使えない状態になったら緩和ケアに入院できるようベッドを確保しておくことが転院の条件、が本を読んでいる自分にもなかなか理解できなかった。
焦っている本人たちには到底理解も納得もできないと思う。ただ反対側から見ると加療の必要がないなら早くベッドを空けてほしいと思うだろうし…
この本を読んで原発不明がんの理解が進み、国立がん研究センター希少がんセンターにもアクセスできるようになる人が増えるといいと思う。
Posted by ブクログ
言葉にならない読後感。強いていうならば、感謝。哀悼。尊敬。
この壮絶な経験を世のために共有してくださったことへの感謝。
どうぞ、ご主人が安らかに眠られ、著者ご自身が健やかにすこみされますように。
尊敬は、もう著者の感性と行動力と判断力、ネットワーク、筆力に。心から。
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次は自分かもしれないし家族かもしれない。備えつつ、日々豊かに生きていくことは大事だなと。著者のご主人は、最後は好きなものに囲まれて、コロナ禍でも友人や家族に会い、自宅でゆっくり過ごされたみたい。それがとてもよかった。
Posted by ブクログ
よくこれを書いたな、と思った。家族が謎の病魔に襲われるという混乱の中で、次々に生じる問題に必死で対処しながら、愛する夫を失っていくという、本当に凄まじい数ヶ月だったと思う。そしてこれほど良くやる家族は一握りではないかと客観的には思うけれど、それでも押しつぶされそうな罪悪感を抱え、その一方で原発不明がん・希少がんに苦しむ人々に情報を提供し、社会を変えようとする。その姿勢には心打たれるものがあった。
また、最初の病院の対応に不誠実さを感じるくだりでは、患者さんや家族の不安に、私はきちんと寄り添おうとしているか、本気で解決しようとしているだろうか、と自問せざるを得なかった。
そして私はパートナーを、一緒に過ごす時間を、大切にしようと思った。
最後の方に出てくる、若松英輔さん、小池真理子さんの語り、そして下山医師の誠実な文章も大変良かった。