【感想・ネタバレ】名著でひらく男性学 〈男〉のこれからを考えるのレビュー

あらすじ

日本では1990年代にいったん注目を集めた男性学が、近年再び盛り上がりを見せている。家父長制による男性優位の社会構造を明らかにするフェミニズムに対し、その理解が進む一方で、アンチフェミニズム的な声も目立つ。また一枚岩的に男性を「強者」として把握できない実像もある。構造の理解と実存の不安、加害と疎外のねじれの中で、男たちはどう生きていけばいいのか。本書は、批評家、研究者、実践者など4人が集まり、それぞれの視点から男性学の「名著」を持ち寄り内容を紹介・解説した後、存分に語り合う。多様で魅力的な男性学の世界にようこそ。

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Posted by ブクログ

この本は、名著の解説と対話形式を通して、現代の男性学を学ぶ入門書だ。1990年代に注目された男性学が近年再燃するなか、男性が抱える構造的な加害性と、実存的な生きづらさ(疎外・不安)のねじれに焦点を当てている。

批評家、研究者、実践者など4人の著者が、それぞれの視点から男性学の「名著」を紹介・解説し、そのテーマについて深く語り合うことで、「男」のこれからを考えるきっかけを提供してくれる1冊である。男性学といっても分野は様々で、それぞれで活躍する男性が名著を持ち寄っていたが、別のフィールドにいるからこそ、多方面から男性学についての語りが展開されていた。

私が特に興味深かったのは「戦争」に関する内容と、男性に向けられる「キモい」という言葉についてだ。「キモい」ということ自体が孕む差別的な視座があるという指摘である。”ある種の健常者主義(エイブリズム)と新自由主義(ネオリベラリズム)的な自己責任論が絡み合って、コミュニケーションが円滑な人間こそが「キモくない」んだ、そうでない人間は「キモい」んだ、という基準がたぶん強くある。”という指摘には唸った。たしかにそういう面があると感じるからだ。

男性学には距離を取っているリベラルや左派もいるだろうが、こういう指摘を受け、気まずくなることは必要ではないかと思う。男性を一絡げにしたくなる気持ちは多いにわかるが、かといってそれでいいわけがない。私は誰であろうがもっと生きやすくあってほしい。

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2025年12月01日

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