あらすじ
★新入生ゼロの小学校が続出 ★親が子の結婚に猛反対
★38度線に接する最前線部隊が解体 ★国土の半分が「消滅危険地域」
常備兵が5年間で10万人減少し、釜山が「消滅危険水準」に突入するなど急激な人口減に直面しつつある韓国。合計特殊出生率は、1970年の「4.53」から急落の一途を辿り、2024年には「0.75」となった。その背景にあったのは、深刻な格差と競争をひとりで生き抜いた若者と、かつての儒教主義に苦しんだ親世代の「本音」だった。未曾有の人口減少に直面しつつあるこの国で進む地方の崩壊、窮余の移民政策、そして後がない中での少子化対策の内実を現地記者がレポートする。
●少子化が改善されなければ「韓国は2750年には消滅する」と予測
●常備兵が5年間で10万人減
●第2の都市・釜山も「消滅危険水準」に
●エリート教育は乳幼児にまで「低年齢化」、うつ病になる子どもが激増
●高齢者貧困はOECD加盟国ワースト
●産育休が最大4年半、出産に約1100万円支給など企業による破格の育児支援
【目次】
はじめに
第1章 消える学校、綻ぶ韓国軍――今、この国で何が起きているのか
第2章 SNSが加速させた超競争社会
第3章 激変する男女の意識――ジェンダー対立の深層
第4章 結婚を止める親たち――伝統的家族観のゆらぎ
第5章 空回りする280兆ウォン――少子化対策の実態
おわりに
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Posted by ブクログ
合計特殊出生率0.75というショッキングな数字。
他山の石ではない日本の現状も念頭に、K-POP,韓流ドラマというエンタメで世間を席巻している華やかなイメージの裏側を垣間見る。
熾烈な競争文化。韓国独特の表現である「相対的剥奪感」には、常に比較に晒され生きねばならない実情が詰まっている。ソウルへの一極集中は日本の東京集中の比ではなく、ソウル周辺しか職がない、さらには評価されないという現象が現代にも残っているというのが驚き。
家父長制もそうだけど、まだ日本と同様に燻っているのか。こんな状況に若者たちは諦観し、将来の不安を肌で感じることでこんな厳しい世界に子どもを引き入れるなんてかわいそう、となる。個人的に非常に共感。子どもを持つことへの躊躇はまずは生活への不安、合わせて子ども将来への不安。国家成長を維持するためという大局観と、子どもを持つという全き個人的な問題の齟齬が甚だしい。
実態として自分が生活していくだけで精一杯という心理を払しょくして、子どもと安心して暮らせる社会を築くことが政府の喫緊課題であることは、韓国も日本も変わらない。
外国人労働者への依拠や政府の子育て政策の的外れは既視感がある。日本の近い未来を投影しているよう。手をこまねいている場合ではないが、個人的な問題では解決は難しい。悩ましい問題ではある。しかし当事者として少子化・高齢化というグローバルなトレンドは関心を持つ続けよう。