【感想・ネタバレ】2052 今後40年のグローバル予測のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

40年後の未来を様々な観点から、その道のプロフェッショナルが事実をベースとして予測している。
現在が過去のままの状態ではないように、未来もまた現在と同じような状況ではないことは、頭では容易に予測できるが、受け入れ行動にまで影響を及ぼすのは難しい。
だからこそ、このような本で、深く考えたり、思考し続けたりする機会のなかったトピックについて、かじってみることは大切である。
特に、興味を持ったのは、エネルギー関連と食料関連の話。まずは興味を持った分野から掘り下げていきたい。

〈著者からの20のアドバイス〉
①収入より満足に目を向ける
②やがて消えていくものに興味を持たない
③最新の電子エンターテイメントに投資し、それを好きになろう
④子どもたちに無垢の自然を愛することを教えない
⑤生物多様性に興味があるなら、今のうちに行ってみておこう
⑥大勢の人に荒らされる前に世界中の魅力あるものを見ておこう
⑦気候変動の影響が少ない場所に住みなさい
⑧決定を下すことのできる国に引っ越しなさい
⑨あなたの生活水準を脅かす持続不可能性に着いて知ろう
⑩サービス業や介護の仕事が嫌なら、省エネ関連か再生可能エネルギーの分野で働きなさい
⑪子どもたちに北京語を習うよう勧めなさい
⑫成長は良いことだという考え方から脱却する
⑬化石をもとにした資産は、ある日突然、その価値を失うことを忘れないように
⑭社会不安に敏感でないものに投資しよう
⑮相応の義務以上のことをしよう。将来後ろめたい想いをしなくて住むように
⑯現在の持続不可能性の中にビジネスの可能性を探ろう
⑰ビジネスで、高い成長性と高い利益率を混同しないように
⑱選挙で再選を望むなら、短期的に結果が出る公約を掲げよう
⑲未来の政治は物理的限界に左右されることを覚えておこう
⑳政治において、限りある資源の平等な入手は、言論の自由に勝ることを認めよう

1
2014年12月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本書は、『成長の限界』(ローマ・クラブ)の共著者が2052年の世界を予測し、パラダイムを変換する必要を述べるもの。広義の環境問題が半世紀後はより深刻化し、政府の役割がより重要にならざるを得ない、という指摘は仕事の上でも頭の片隅に置いておくべきと感じました。ちなみに、ページ数の割に中身は重畳的です。

(主なポイント)
●世界の総人口は2040年直後に81億人でピークとなり、その後減少(都市化が進み、出生率が急激に低下するため)。
●世界全体のGDPは成長が遅くなるが、2050年に現在の2.2倍に達する(人口増加率が鈍り、労働生産性が減少するため)。
●生産性向上のスピードは鈍化(経済の成熟、格差等による社会紛争、異常気象のダメージのため)。先進国では、省エネ・再生可能エネルギーと介護ビジネスしか伸びしろはない。
●消費の成長率も鈍化し、2045年にピークとなる(資源枯渇、環境汚染、気候変動、生態系の損失、不平等といった問題を事前に予防又は事後的に修復するため、GDPの大部分(現在の1.5倍、GDPの36%)を投資に回さざるを得ないため)。
●今後数十年で社会投資が増え、資源と気候の問題は2050年に壊滅的なレベルには達しない。しかし、21世紀前半に集中的な対応策を強制的に進めておかない限り、21世紀後半に気候変動は歯止めが利かなくなり、人類は大いに苦しむことになる。
●予想外の敗者となるのは現在の経済大国、なかでも米国(次世代で1人当たりの消費が停滞)。勝者となるのは中国。インド、ブラジル等の新興国は発展する。残りの地域は貧しさから抜け出せない。

➔ 今後は、国家(政府)の役割が極めて重要になる。化石燃料に課税(100ドル/t-CO2)をするなどの増税によって、消費財・サービスの需要を縮小させ、資源配分を変えていく必要。

➔ 20のアドバイス(希望を失わず、来るべき危機と折り合いをつけて生きる術)
①収入より満足に目を向ける、
⑦気候変動の影響の少ない場所に住む
⑧決定を下すことのできる国(数十年先を見越した行動ができる国、民主主義と自由市場だけに頼っていない国))に引っ越す
⑩サービス業や介護の仕事が嫌なら、省エネ関連か再生可能エネルギーの分野で働く
⑪子どもたちに英語に加えて、中国語を習わせる(職を得る上で優位な立場に立てる)
⑫成長は良いことだという考えから脱却する
⑰ビジネスで、高い成長性と高い利益率を混同しないこと

1
2013年10月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

まず、日本。
今後労働人口が減少し、GDPは減少する。成長戦略の見直しが必要。売上増を目指すのではなく、利益率の確保を追求する?国内ではモノが売れない、所得が伸びない中でどうするか。ただ、近年は消費量が伸びていたって事実は知らなかった。
次に気候。
温暖化が進むことで、海面が上昇し、幾つかの地域では住めなくなる。そして流氷が溶けることで塩分濃度が薄まり海流に影響が出たり、天気に影響がでたり、干ばつや洪水がおこったり。土木業は仕事がありそう。あと50年で2度気温が上昇したら大変だ。貝とかも貝殻作れなくなるなんて。
次にエネルギー。
原子力や化石燃料は無くなるかな。太陽光発電とか技術進歩でなんとかなりそう。あとはバイオエネルギー。ただ、こちらは途上国の人口増で難しいかもなっていう印象。
中国は経済の中心になるけどピークは労働人口が減少するまで。新興国も政治が不安定になれば発展は怪しいいけど、なにせ人口は多いもんな。
概して思ったのは「人間は長期的な利益より目の前のコストに目がいくので投資できない」(政治家の任期は短いからすぐに結果が出ないものには力を入れないとか?)
あとは、全体の利益と個人の利益どちらを優先するかって話になった時、究極的にはやっぱり個人だろうなって。
社会起業家を育てるEVOKEというのはやってみたい。
生物の絶滅を危惧しているけど、大昔からその世界に適合できない種は淘汰される弱肉強食の世界なんだよ。

1
2013年05月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

これからの40年で世界がどうなるかを推測している。警告の書。
既に地球は需要超過(オーバーシュート)の状態に陥っている。つまり、既に持続不可能な状態である。一方で、民主主義は短期志向である上に、「問題の発見と認知」には時間がかかり、さらに「解決策の発見と適用」にも時間がかかる。将来は、資源枯渇や環境汚染、気候変動や不公平といった問題を解決するために、より多くの投資が必要になり、生産性の伸びは鈍化する。多くの先進国では、経済成長は滞り、失業と不公平はますます拡大するだろう。
最終章に、20の個人的アドバイスが載っている。面白いと思った5つが以下。

(5)生物多様性に興味があるなら、今のうちに行って見ておこう
(9)あなたの生活水準を脅かす持続不可能性について知ろう
(12)成長は良いことだという考え方から脱却しよう
良い成長と悪い成長を見わけ、良い成長と良い衰退を等しく祝福できるようにならなければならない。
(15)相応の義務以上のことをしよう。将来後ろめたい思いをしなくてすむように
(20)政治において、限りある資源の平等な入手は、言論の自由に勝ることを認めよう

推測は厳しい内容が多く、しかも当たりそう。しかし、気を滅入らせたり、あきらめたりする必要はない。やるべきと思ったことをやるだけ。以下の言葉に賛成。

P44
私は、この予測が間違っていることを願っている。19世紀の小説家で人道主義者のロマン・ロランは、こう述べている。
「知能の悲観主義は、意志の楽観主義を締め出したりはしない」と。

0
2013年10月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1972年の「成長の限界」から40年。当時の著者の一人、ヨルゲン・ランダースによる最新の未来予測。40年を振り返りつつ、今後の40年=2052年までの世界がどうなるか。

「成長の限界」が世界に与えたインパクトの大きさから考えると、著者らが当時30歳前後だった事に驚かされる。

「成長の限界」と「2052」との違いは、前者がシナリオ分析であるのに対し、今回ランダースが行ったのは、彼が最もありうると考える未来予測である事だ。

そしてその結論は、本人は「悲観的」と表現しているが、「成長の限界」での帰結から比べると、幾分穏やかに修正されているとも言える。

「成長の限界」では、21世紀の前半には人類文明は物理的限界に達し、「管理された衰退」か「自然な崩壊」のどちらかしか起きないとしている。一方の「2052」では、21世紀前半にはそうした危機的な状態にはならないとしている。ただし、後半に訪れるという。

危機の時期が少し先延ばしになった理由は、都市化による少子化により人口増加が従来の予測よりも下方修正され、2040年に80億人でピークになるという予測と、再生可能エネルギーへの転換が急激に進み、化石資源等の供給制約の問題が発生しないということが根拠になっている。

この様な未来感の違いが、今回メドウズの名前が殆ど出てこない理由の一つなのかもしれない。メドウズの最近の記事などを見ても、彼はまだ1972年の予測が正しいと考えているようである。

ランダースは、化石資源の制約や気候変動の問題は21世紀前半には危機的水準には至らないとしながらも、彼の予測は悲観的であるという。

まず、過去40年間、あれだけの警鐘が世界に広がったのに、人類の対応は遅々としていた事がある。ランダースは特に温暖化の問題に取り組んで来たが、1960年代の地球温暖化問題の発見から始まって、1988年のIPCCの設立、1997年の京都議定書と、様々な取り組みは始まっているものの、そうした活動が必要十分に温室効果ガスの削減に貢献したとはいえない。

40年間を振り返った結論は、現在の民主主義・資本主義社会では、意思決定は遅れ、地球的な問題への対応は間に合わないという事だ。ランダースは、その傾向は今後の40年間も残念ながら変わらないだろうと考えている。

ランダースの予測がマイルドになった理由は、人類が賢いからではなく、少子化という必然的な変化から生まれたもので、叡智の勝利ではない。

もう一つのランダースの悲観は、彼の予想通り人口が抑えられ、再生可能エネルギーが爆発的に普及したとしても、温室効果ガスの削減は十分には行われず、2050年に2度、2080年には3度の上昇が免れないという事だ。そうして、世界の植生は変わり、異常気象が猛威を振るう。彼は個人へのアドバイスとして、自然の風景を愛するならば、守る為に行動せよというよりは人類のエゴの必然を受け入れて、今のうちに見ておきなさいという。

マクロな提案として、民主主義を超えた世界の意思決定機関の設立を提唱しているが、その実現についてランダースはそれほど現実的とは思っていない節がある。

つまり、21世紀の前半は破滅的な限界は訪れないが、徐々に経済活動を抑制するような出来事(=コスト=異常気象への対応、再エネの増加、軍事費の増加等)が増えるという。現在そうした消費以外の割合は25%だが、それが2052年には36%になると予想している。そうした影響は、人類の行動を大きく変えるほどのインパクトはないので、現在の延長線上で意思決定は遅々として進まないという。

彼が採用したモデルは、彼自身によるいくつかのカギとなる想定から導かれている。出生率の予測から人口構成・生産年齢人口を産出し、労働生産性の改善の予測と生産年齢人口からGDPを算出。そこからエネルギー使用量を算出し、想定再エネ比率からGHG排出量を計算。そこから異常気象等への対策コストをGDPから引いて、消費量とする。

これが彼のシステムダイナミクスフローの主な流れである。

エネルギーを専門とする私からすると、彼のエネルギー需給予測はかなり甘いものに見える。21世紀前半に厳しい供給制約が発生することは私には避けられないように思う。

こうした未来予測につきものなのが、楽観と悲観、実証主義と規範主義などの対立である。
どのようなスタンスに自分が立脚するのかは、結局「このままいけば」(いわゆるBAU)をどのように想定し、さらに「(ありうる)あるべき姿」をどのような範囲で捉えるかがカギになっている。

ある問題に対して、計算上はどのような行動を社会がとるべきかはある程度は事前に分かる。しかし、非常に厳しい選択肢の場合は、結果的にそうした選択を取らない可能性の方が高い。

なんらかの危機がもし本質的に必然だとしたら(資本主義下でのバブルの発生など)、一種の諦観に立ちつつ、起きる事象をあるがままに受け止めるだろう。もしそうだとしたら、対策のとりようのない一番確度の高い必然的未来を描くことは、学術的になんの意味があるというのか。
それは、エゴイスティックな好奇心や、世間の好奇心を満たすためだけと割り切るしかないのかもしれない。所詮、一人で世界全ては救えない。

また、この本はシステムダイナミクスという手法がたどった40年という歴史の現在の終着点でもある。現在は、需要成長を前提とした短中期の経済シミュレーション(一般均衡モデル等)が主流だが、代替弾性値のセッティングによってかなりモデラーのさじ加減に依る事を考えれば、未来予測の手法はさほど進歩していないようにも思う。

この本を読んだ人の受け止め方は様々だろう。
こうした先人の「杞憂」を乗り越えて、我々が未来を作って行かなければならないんだなと感じた。

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2013年05月28日

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