あらすじ
ニホンカモシカは険しい山でくらし、他の動物が通れないような急な崖も、上ったりおりたりすることができます。著者前川さんは、20年以上にわたって青森県の山に通い、その姿を撮影してきました。そして出会ったカモシカの子をパールと名づけます。やがてパールは子を産みますが、暑い夏や雪深い冬を超えて、子育てはうまくいくのでしょうか。
*電子版には、折り込み付録の「ふしぎ新聞」および年3回の一枚絵付録はつきません。
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Posted by ブクログ
青森県にある脇野沢で出会ったカモシカのパール。動物写真家の前川氏が、同個体を何年にもわたって密着したドキュメンタリーのような一冊だ。
まずとても写真が良い。野生のニホンカモシカの生態を一枚一枚の写真がよく表している。緊張感があって、適度な距離を取ろうとしているのに警戒感からくる真っ直ぐに見つめる正面顔。動物園だけであるがよくニホンカモシカを見る自分にとって、優れた写真の数々に目を奪われた。
パールは雌のカモシカだ。何度も子どもを産み、育て、生き延びる。しかし産んだ子どもはそうはいかない。前川氏が何度も彼女に逢えたのは奇跡に近い偶然なのだ。
前川氏はパールを撮り続ける。なかよくなれたらどんなにいいだろうと想像する、とある。しかし続ける。
「野生動物が特定の人間と深く関わるなど、たぶん、あまり自然なことではないからです。」(本文引用)
この言葉にかえって深い愛情めいたものを感じる。本当に動物が好きな人間は野生動物との距離も大切にするのだ。共感することばかりだった。
野生動物の生存維持はとても難しい。ニホンカモシカは人間にとって今のところ脅威ではないが、昨今のクマ問題と重ね合わせる。害のある無しで判断し生存維持が難しい野生動物に対し、人間の価値観での「線引き」をどうしたら良いのか。永遠の課題と思う。