【感想・ネタバレ】戦争みたいな味がするのレビュー

あらすじ

朝鮮戦争を生き延び、在韓米軍基地周辺で働いた著者の母は、アメリカ人男性と結婚後に渡米し、差別的な眼差しの先に置かれつづける。その背景には、人種、階級、ジェンダー、セクシュアリティにまつわる差別構造があった。朝鮮半島にルーツをもつ母娘の記憶を通して見える現代社会の論点、植民地主義、人種主義、精神疾患など複雑な難題が家族に及ぼす影響を、コリア系アメリカ人女性の社会学者が紡ぐ珠玉の回想録。2021年、全米図書賞ノンフィクション部門最終候補作。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

訳者の方のお話を聞く機会があり、読むことができたことを感謝している。個人的なことは社会的なこと。お母様のトラウマを、直接聞き出すのではなく、多方面から調べ尽くす手法にとても説得力があった。日本の過去も関わっていることに、胸が痛む。一方、韓国料理のレシピが美味しそうで、思わずメモをした。

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2025年11月29日

Posted by ブクログ

筆者のオンマが今の世の中を見たらなんと言うだろう。MAGAに対しては眉間に皺を寄せ、The summer I turned prettyの人気には「オモ!」と驚くだろうか。
晩年(読後直ぐの今この言葉を書くのがすごく寂しくて哀しいけれど)、筆者と食事を共にした3人目の母の様子は、1人目の時のエッセンスを残しつつ2人目の時の儚さをはらんでいて切なかった。
精神疾患におけるリカバリーは、病気になる前に戻るのではなく病気を経て新たにアップデートすることとされるけれど、その様はまさしくリカバリーで、伴走する筆者の苦慮や省察の言葉には胸に迫るものがあった。

PTSDを抱え、命からがらどうにかたどり着いた新天地で筆者の母を待っていたのはたいていのアメリカに住む韓国系移民女性が経験する差別。かといってアメリカ人との子どもを連れて帰る母国の暮らしも悽愴なことは想像に易く、どれだけ不安で心細かっただろうか。苦難の道を強いられ続ける人生すぎる。
そんな中、自力でコミュニティに根ざす努力をし、夏はブラックベリーレディ、秋はマダムマッシュルームとなった姿にはちょっとしたアメリカンドリームみすら感じた。かっこいい。
1人目の母の頃の描写には、オベントウの力やサンクスギビングの翌日に残りものの七面鳥にテンジャンとキムチを添える逞しい韓国のオンマの姿がある。
過労に近い生活リズムにあっても食べることに手を抜かないオンマの姿勢の根底には、周りの人がお腹を空かせているのを二度と見たくないという苛烈な戦争体験から来る思いが垣間見え、韓国ドラマでよく挨拶がわりのセリフとして出てくる「パンモゴッソ?」が戦争の名残であることを痛感させられた。
私がテキサスに住んでいた時、おからを求めて何キロも車を走らせる先輩日本人の行動力に驚いたことがある。
郷愁をおからに見出し、手に入れることに全力を注いでいた姿を著者の母のキムチのエピソードで思い出した。
人間は食べることをエネルギーに変えることができるし、食べることでエネルギーを蓄えることができるんだと思う。

2人目の母のターンで、当時15歳だった筆者が独学で母の疾患名に辿り着き、さらに母の様子とDSMの症例を比べる描写があり、どれだけ不安だっただろうかと悲しくなったが、ブラウン大へ進学することで地元を離れ「わたしたちは力強くて美しいかませ犬!」と仲間と笑う若者らしい姿も記されていてホッとした。ヤングケアラーではない時間が筆者にあって本当に良かった。この頃の出会いがこの本の訳者と繋がっているとあとがきで知り、胸が熱くなった。

3人目の母と表記される晩年の闘病描写は哀しいけれど、ブラックベリーレディの頃に著者のことをクラストガールと愛を込めて呼ぶ姿がちらりと垣間見える日があり、母然としていて美しく切ない。1人目の母に戻ることはないけれど、3人目の母の中に1人目の母は確実にいる。
「知性で働きなさい、身体ではなく!」という毅然として取り入る隙のないオンマの姿勢は、時代に翻弄され凄惨なくらしを送ってきたオンマとして、娘が性産業で生きる選択に直面する必要がないようにするためのまっすぐな愛で、筆者が読んでいた"学ぶことは、とびこえること"そのものだなと思う。
生存と従属が隣り合わせのくらしを経て、娘の世代ではおなかいっぱい好きなものを食べられるよう愛と教養を授けたオンマの生き様に涙が止まらない。

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2025年10月05日

Posted by ブクログ

お母さんは食でアイデンティティを維持してたんだな。お母さんのキムチ、ブラックベリーパイとても美味しそう。最後のチーズバーガーのお話が想像以上に悲しかった。ノラ・オクジャ・ケラーの小説『狐の少女』も読んでみたいけど、まだ未翻訳とのこと。

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2025年09月15日

Posted by ブクログ

手に取るかどうかを迷われているのなら是非!中身についての感想は控えますが(書ききれない)、筆者の取り上げたテーマだけではなく、むしろ痛々しいながらも温かさを失わない(失いかけながらも)家族記として読むのがいいかもしれない。親子という関係は誰にとっても避けようのないものだから、誰が読んでも痛みを感じる部分があるかも。

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2025年09月01日

Posted by ブクログ

とても個人的な読書体験でもあった。
筆者同様、私も幼児の頃に両親と共に生まれた国から育った国に移住した。ネイティブ言語や文化、常識を親と共有していないことによる相互不理解、衝突、もどかしさ、時に疎外感。周囲の無邪気な言葉に容易く引き裂かれる、複雑なアイデンティティ。そして大人になってから真に思いを馳せることができる、両親の味わってきた苦労と差別。もちろん筆者と私は全く異なる人生を歩んでおり感慨も必ず異なるのだが、シンパシーを感じた。
そんななかで、筆者は主観性と客観性のバランスを巧みに取っていて、淡々とした「腑分け」としても、切実な私小説としても、読み応えのある作品となっている。筆者の母の精神疾患の背景にはあまりにも多くの構造的差別の問題があり、差別は人を殺す、という事実を改めて突きつける。そして日本で暮らす者としては、やはり侵略戦争と植民地支配が落とした影を重く受け止めたい。

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2025年08月27日

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