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とにかく濃厚な文章、スピーディな場面転換、さらには多彩な視点でぎっしりと物語が描きこまれている。ショッキングな冒頭から、シリアルキラーと戦う特捜班の知恵比べが始まる、薄皮を剥ぐように次々に意表を突く展開が待ち受けながら、少しずつ話が収束していく様は見事としか言いようがない。練られたプロットには驚くし、伏線が至る所に張り巡らされている。
生き残った少女がヒロインであり、彼女に捧げる犯罪?というのオチがスゴイ。結局犯人は捕まっていないわけだからこれは続編が望まれる。
それにしても、6本の腕、5人の行方不明の少女、謎の囚人、自傷癖の女刑事、息子を抱えた心理学者、パレイドリア(幻視)能力を持つ修道僧、催眠術による証拠探し、豪邸に閉じこもった富豪・・・さまざまなガジェットが少しずつ絡まって一つの物語を形作るさまは圧巻で、ハンニバル・レクターのような犯人像も鮮やか。ただ、なぜ心理学者が奥さん?子供?(そもそも誰を殺した?)を殺したのか、そしてどうやって操ったのか辺りは不明なのが残念。早くこの作家の次回作を読みたい。しかしこれは映画化間違いなし。
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いやー、面白かった。
グイグイ引き込まれた。
ちょっとてんこ盛りすぎる気もするし、ひとつ二つ欠点というか、ソレにしちゃったのはもったいないという点もあったけど、夢中にさせてくれたので、とりあえずOKです。
あまり良くない頭でついていくのは大変でしたけど^^;
Posted by ブクログ
不思議なことに、国籍のない作品である。イタリア発の作品ではあるけれども、物語の舞台はどことも取れない。作者はいつの時代でもどこの国でも通用する時代や場所にとらわれない物語を書きたかったらしいのだ。いわば人類共通の物語というものを。
そうした思いを抱く作者にとっては幸いなことに、この作品は世界23ヶ国で翻訳出版され、バンカレッラ賞、フランス国鉄ミステリ大賞、マッサローザ文学賞、カマイオーレ推理小説賞、ベルギー推理小説賞、地中海推理小説およびノワール小説フェスティバル大賞などいくつもの多国籍に渡る賞を受賞している。イタリア版『羊たちの沈黙』とさえ語られ、ヨーロッパ各国でビッグヒットを飛ばし、ロシア、ブラジル、ヴェトナム、イスラエルでも出版された(日本はなんとこの動きにたっぷり遅れをとっているわけだ、なんという文学的更新国家なんだろう)大物小説である。
ある森の中で6組の少女の腕が発見されたことから、連続殺人の存在が明らかになり、物語は幕を開ける。捜査陣の代表は、失踪人搜索のエキスパートであるミーラ・ヴァスケスという過去のある美人刑事である。警察組織外から犯罪学者であるゴラン・ガヴィラという個性的な専門家が呼ばれる。ステルン、クラウス・ボリス、サラ・ローザと、一癖も二癖もある捜査官たちがチームを成す。
事件は一人一人被害者が明らかになってゆくが、六本目の腕の持ち主が判明しない。まだ生きているかもしれない被害者を探す時間的制約のある捜索の中で、いくつもの真相にたどり着くのだが、そこには別の犯罪者ばかりが残され、真の犯人は見えてこない。一つ一つの被害者を探すことで、次々と、意外な犯罪者の存在が浮き彫りになるという複雑な構造の中で、真犯人は警察を引きずり回してゆく。
どこを切っても面白さの切り口しか見えてこない、弛緩のないジェットコースター小説であり、それとともに謎解きの面白さ、人間同士のぶつかり合い、騙し合いなどが豊穣な物語の厚みを読者にもたらす。また、ヒロインであるミーラの過去の深みが印象的であり、この小説の極めつけの武器ともなっている。
刑務所内の報告書や、拉致被害者と思われる少女の独白などが、ストーリーの合間に挟まるが、それがどうメイン・ストーリーに絡み合ってゆくのかなかなか見えにくいままで思わせぶりに進んでゆくのだが、いずれももちろん周到な伏線である。ここまでツイストにツイストを重ねた物語はなかなか知らない。ジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライム・シリーズに似た展開の面白さとスリル、『羊たちの沈黙』のサイコな展開、時効との戦いなどなど、およそミステリの持つ娯楽要素を満遍なく詰め込んだ圧巻の傑作小説である。
Posted by ブクログ
原題は”ささやく者”、意味するところは”暗示者”
イタリア版『羊たちの沈黙』と称されるだけの事はある。
物語は森の中で六人の少女の腕が発見されるところから始まる。犯罪学者ゴランと行方不明者捜索のスペシャリスト、ミーラが主役となって物語は展開していく。
次々に発見される少女の遺体、まるで「セブン」の様に猟奇的な展開、やがて発見場所に意味が有ることが判明、背景に全く別の殺人事件が有ることが捜査の過程で浮かび上がってくる。
3人目くらいまでは絶好調、この勢いが最後まで続けば凄い作品なんだがと思ったが、やっぱり少し多すぎた、4人くらいのほうが緊張感が持続したんじゃないかな。
捜査チーム内の葛藤が描かれ、ゴランとミーラの生い立ちも二人が親しんでいく中で徐々に明らかになっていくが、実は二人の生い立ちも事件に絡んでいる。凄い複雑なプロット、やや盛り込みすぎな感もあるが、伏線大好きな人には堪りません、最後まで息もつかせぬ面白さでした。
4人目以降が若干だれるが、それを除けば満点の出来。ラストの「そうじゃなくて・・・・・、フランキーって呼んでた」にはもう吃驚!
今年の「このミス海外部門」には必ず上位に入るでしょう!
Posted by ブクログ
本文512ページ。
なのにこの膨大な量を読み終わった心地よい疲れは何?
一冊の本の中に詰め込まれている驚きと深さと痛さ。
『登場人物』として挙げられているだけの人数ではなくしかも、誰も彼も
内に抱えているモノの鋭さが一行なんかではない。
ストーリーは一言で言うと5人の誘拐被害者の少女、
次々発見される痛ましい遺体。
発見されたのは6本の左腕。6人目の生死はいかに?
捜査官たちのプライベートな悩みもすべて呑み込んでゆく事件の深さ。
読み終わったときには背筋がゾワゾワしました。
また凄い本に出会ってしまった。
Posted by ブクログ
久々に読み切った!
最近、なんだか入り込めず挫折する本が多かったけど、
この作品は一気にいけた。
でも、なんだか、最後がもやもやもや・・・・
話がてんこ盛り過ぎて、消化し切れない、もったいない。
Posted by ブクログ
始まりはミステリーだったはずが、進むにつれてホラーに。
左腕が発見されたにもかかわらずその少女が生きているとか、
その親が警察内部の者で仲間の刑事を陥れることを強要されるとか、
少女のモノローグが主人公の過去だったとか、
独り言の録音を聞かせて殺人を暗示し実行させるとか、
いない子供を見た気にさせられたとか、
ミステリー要素はとても面白いのに、
霊能者の登場を差っ引いても、ホラー。
どうしても、ホラー。
最後のどんでん返しが強烈に怖いからかも。
Posted by ブクログ
イタリアのミステリ、大学で法学を先行した気鋭の新人作家の力作。イタリア版「羊たちの沈黙」と評されるが、主人公が女性というところは同じでも、ストーリィはオリジナリティが強く、引き込まれる。精神異常者による連続殺人の心理を展開するのに目が行き過ぎて、物語の整合性の方は時々踏み外してしまって、うまく繋がっていないような気がする。
Posted by ブクログ
暗い!とにかく暗い。救われない…でも面白い。登場人物それぞれの個性もしっかり描きつつ、話が進んでいく過程は見事。肉太なミステリーだけど、読み終わった感想に爽快感はなく…ぜひ、映画化して欲しい。監督はフィンチャーで。
Posted by ブクログ
外国の作品もたまには読んでみようと思い、手に取ったのがこの本でした。
結構リアルな描写も多く、楽しく読めました。
ですが、最後の方は話がごちゃごちゃしていて何を言いたいのか理解できませんでした。
Posted by ブクログ
FBI捜査官とレクター博士との緊張感溢れるやりとりが「羊たちの沈黙」の魅力だとすれば、本書は連続殺人犯の異常さと事件に対峙する犯罪捜査班内のインサイダー同志の葛藤が重層的に拡がりサスペンス感を絶やさない。二転三転する展開に戸惑いさえ覚えるが、進化したサイコスリラーを堪能できる。
Posted by ブクログ
森の中で見つかった六本の左腕は誘拐された五人の少女のものだった。
発見されていない6人目の少女を救うべく、失踪捜査のエキスパート・ミーラと公明な犯罪学者ゴランは特別捜査班に加わる。
スピーディーな展開。
途中までは想像の範囲内(六人目の少女の保護者はお約束)だったけど、きっちり話をひっくり返してくれてその辺は楽しかった。
霊能力者が出てくる件は鼻白んだけれど、そのあとの展開に効果的に繋がっていてちょっと感心してしまった。
ハッピーエンドで終わらず、尚且つはっきりしないラストも、作品の主題に沿っていてよかったと思う。
ただ展開はかなり強引かなー。
結構拍子抜けする部分があるよ。
しかし子供が酷い目に合う話は読んでいて辛いな…。
Posted by ブクログ
6人の少女の連続失踪事件。つまり細かく見れば6件の事件が起きているということで、その顛末がひとつずつ明らかになってゆく。
少しずつ事件が解明される過程には引き込まれるが、終盤に一気に謎が明らかになるタイプの物語ではないので爽快感はそれほどでもない。
作者は事件の舞台を「どこでもないところ」として書いたらしいが、
作中の食事の描写や警察がすぐ容疑者を射殺しようとするところなどは
イタリア的だな~と思いながら読んだ。
Posted by ブクログ
とある森の中で、六本の切断された左腕が発見される。
行方不明人捜索のエキスパートであるミーラ・ヴァスケス捜査官は、犯罪学者ゴラン・ガヴィラがまとめる特別捜査班に加わり捜査にあたることになる。
腕の主は五人まで判明している。未だ明らかになっていない六人目の腕の主の捜索のために、ミーラが呼ばれたのだ。
高い知能で捜査班を翻弄する連続殺人犯“アルベルト”、忌まわしい過去と無共感性に悩むミーラ、深淵の縁に踏み止まりつつも妻を失った傷に苦しむゴラン。複雑怪奇な事件の展開に、個性的な登場人物の動きが絡んで物語は二転三転する。
海外ドラマ『クリミナル・マインド』のファンとしては非常に好きなジャンルであり、途中まで楽しく読者していた。
だが360ページでいきなり登場する人物の設定や、ミーラとゴランの突然の進展に驚かされた。遺体が発見されるにあたり関係する殺人犯の人生や動機も濃くて、目まぐるしいことこの上ない。結局よくわからない部分もあったりした(笑)。
だがこのつめこみぶりが、いかにもデビュー作という感じでもある。
オチは好みだが、主人公サイドが常に後手に回っているのが、読んでいる途中はもどかしかった。
捜査のエキスパート、と銘打たれているのに優秀さが伝わってきづらかった。……経験があるってだけで別に優秀設定ではなかったのかな?