あらすじ
TVアニメ『宇宙よりも遠い場所』の公式ファンブック。女子高生4人の笑いあり涙ありな南極への旅路をビジュアル満載で徹底解説。さらに“ここだけの話”満載のいしづか監督×制作スタッフ陣のインタビューやキマリ、報瀬、日向、結月、吟、かなえを演じたキャスト陣のインタビューも収録!
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Posted by ブクログ
作家のインタビュー記事であったり、映画のパンフレットのスタッフコメントであったり、あるいはゲームの資料集であったり、作品の制作裏話や設定集というのは、その作品が好きであればあるほど、ワクワクするものがあります。
この『宇宙よりも遠い場所』のファンブックは今までもパラパラと見返してはいたものの、がっつりと全部のページに目を通すのは、今回がおそらく始めて。
というのも、撮影監督や美術監督など、技術方面の方の話は、ちょっと入りにくいかな、と思っていたから。今回その箇所も含めて、スタッフインタビューを読んでみると「そりゃ"よりもい"面白くなるわ」と納得してしまいます。
他のアニメのファンブックには詳しくないので、比較してどうこうは言えないですが、キャラやストーリー紹介は、ビジュアルが豊富で十二分に満足できました。特にメインキャラの一人、報瀬に対する、監督のいしづかあつこさんと脚本の花田十輝さんのコメントがおもしろい。
いしづか監督は報瀬が祖母のことを「ばあちゃん」と読んでいるのを聞いたときに、報瀬の家が一気に浮かんできたそうで『不思議と些細な会話で家が一軒建つんですよね』とおっしゃり、
花田十輝さんは1話のトイレでのシーンの「ありがとう」で、報瀬のキャラクター性が掴めたとコメントしています。
この二人が選んだベストシーンも、制作者ならでは、という印象を受けます。いしづか監督は一話冒頭のキマリとキマリの母の会話のシーンから、こういう日常を描いた空気感ならイケる、と確信し、
花田さんは1話のキマリが広島に行くかどうか逡巡するシーンでの、細かい演出を挙げます。これは改めてそのシーンを観たくなるなあ。
自分みたいな受け手はどうしても、ドラマチックなシーンとか、劇的なシーンが頭に浮かんでくるのですが、制作者側はそこに到るまでの、本当に細かいところに着目するのだな、と感心しました。「神は細部に宿る」という格言があるけど、まさにそういうことなんだなあ。
シナリオでの苦労話も良いなあ。4話、7話、8話が脚本を作る上での難関だったという話も興味深い。女子高生4人にどうやって南極へのプラスのイメージを持たせたまま、話を展開するか、花田さんは苦労されたそうです。
確かに船酔いなんて、三半規管の弱い自分には地獄に思えるけど、4人の女子高生たちは、それもプラスに変換して乗り越えた感じがします。4話の訓練シーンも楽しそうだったけど、それも一歩間違えると、全然違う空気になったのかもしれないのか。
7話の報瀬と吟隊長のファーストコンタクトの空気感は、本当に丁寧というか、観ていて全く引っかかりがなかったけど、それもこうやって裏話を聞くと、確かに大変だよなあ、と感じます。
よりもいの1話を初めて観たとき、トイレのシーンの背景が異常にリアルだったのも印象的でした。その狙いであったりコンセプトを読んだときは、美術とか背景ってそういうことなのか、と今更ながら実感。
そして空の青さに込められた思いと覚悟は、文章としては短いけど、内容はものすごく詰まったものになっているように思います。
撮影監督のインタビューで印象的だったのは、最終話の報瀬がメールを受け取る場面の話。確かに言われてみれば、そこが表現できなかったら、最後の感動の部分の根底が崩れるもんなあ。その困難なハードルを完全に乗り越えていることに、改めて脱帽します。
次回作品を見返すときは、そうした部分部分を再発見しながら作品を楽しめそう。やっぱり名作には名作たるゆえんがあるものなんですね。