あらすじ
日本人は1日平均200グラムのウンコを排出する。欧米と比べて、日本は世界有数のウンコ排出大国といえる。ウンコは肥料の三要素のうち、窒素とリン酸を豊富に含む。リンの主要産出国である中国が禁輸に動き、ウクライナ危機も重なって、世界的な肥料不足が懸念されるなか、ウンコの価値が世界で評価され始めた。自動車燃料、発電、ロケット燃料として、下水熱を使ったビル空調や、冬場に凍結した雪を融かす熱源として、養殖海苔の栄養塩として、ウンコの活用分野は、想像以上に幅広い。日本経済の切り札「ウンコノミクス」の可能性を探る。
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Posted by ブクログ
内容はだいたい帯に書いてある通りだが、ウンコや下水処理に関する情報が網羅的にまとめられているので理解しやすく、全ページ「ウンコ」の3文字が散りばめられているため、非常に真面目かつ実用的な内容なのに、笑えるやら和むやらで楽しい。ウンコ好き必読書。
とにかく、はしがきから最後のページまで、ウンコにまつわる目から鱗の情報ばかりで素晴らしい。
特に心に残ったのはウンコバンクと現在フィナーレを迎えつつある大阪万博。その会場である夢洲は大阪府民が50年積み上げたウンコで出来ており、メタンガスによりいつ爆発するかも不明な状態のまま開催されているらしい。今も多くの人々が喜んで大枚叩いてウンコ島に行っているのだと思うと笑える。新自由主義が極まったお金にがめつい大阪万博が、かつての「金肥」の山で開催されている。こんなにふさわしい会場もない。あと神戸市のウンコが肥沃であるのも笑った。やはり富とウンコには縁があるようだ。
完全循環型社会だった江戸時代においては金肥として宝だったウンコが、近代化による社会衛生の進歩につれ次第にゴミと化してゆくという歴史も興味深かった。言われてみれば昭和初期の小説なんか当たり前のように紳士が「さなだ虫」と共存していてギョッとする。いまや清潔好きとして有名な日本人も、ほんのちょっと昔まで「下肥え」につきものの寄生虫と共生していたのだから、国のイメージなどいい加減なものだと思ったし、有機農業は先進的なイメージがあるが、実はそうでもないよなと考えが改まった。
もちろん今では寄生虫を処理する技術も上がり、虫なしの有機肥料も作れるだろうし、ウンコからリンを抽出するシステムはすでに神戸で運用中だそうだから、中国との国交がますます難しくなってきた現在、農作物に欠かせない肥料の供給源として再びウンコが宝に返り咲くのかもしれないと、本書を読みつつ未来にワクワクできて良かった。
Posted by ブクログ
たまには、今の仕事に関係する本でも読もうと思い、購入した本。環境、特に水処理や資源循環の分野は、学生時代から専門としていることもあり、サクサク読めました。
著者は今後の国内のリン不足を予測し、汚泥やし尿に含まれるリンの有効活用法を提言していました。方法の一つとさて、堆肥化を促していましたが、現代の日本ではハードルが高いように思います。
著者のいうとおり、重金属によるリスクは昔と比べ下がっているのかも知れませんが、やはり、「し尿や汚泥由来の肥料で育てた野菜を食べたいか?」と問われると、生理的に抵抗を感じるくらい現代の日本人は潔癖になっているのではないかと思います。
とはいえ、リンの値段がひきあがっている昨今において、あまり悠長なことも言ってられないのも、また事実なのだと思います。リンの循環利用というのは、長年考えられてきた非常に難しい課題なのでしょう。
下水に関わる色々な施設への取材もしていて、初学者にもわかりやすいように書かれているので、いろんな人に読んでほしい本です。個人的には、もっと技術的、科学的な部分も知りたいと思ってしまいました…。