あらすじ
僕が恋したあの人は、“風の記憶”を読むことができる――。
横須賀で暮らす二十二歳・野々村帆高。
職を探す彼が偶然見つけたのは、『ガラス雑貨専門店・風読堂』でのアシスタントの募集だった。風読堂の店主・級長戸辺風架さんは、ガラス雑貨の販売に加え、もうひとつ秘密の依頼を受けている――“風読み”の仕事だ。
にわかには信じがたい風架さんの力を求めて、今日も風読堂には悩みと願いを抱えた依頼主が訪れる・・・・・・。
著者累計100万部突破、『桜のような僕の恋人』の書き手による圧倒的新境地。
爽やかな風が織りなすファンタジック・ストーリー!
【著者略歴】
宇山佳佑(うやま・けいすけ)
脚本家として、『スイッチガール!!』『信長協奏曲』『君が心をくれたから』、映画『今夜、ロマンス劇場で』などを執筆。著書に『ガールズ・ステップ』『桜のような僕の恋人』『君にささやかな奇蹟を』『この恋は世界でいちばん美しい雨』『恋に焦がれたブルー』『ひまわりは恋の形』『いつか君が運命の人 THE CHAINSTORIES』などがある。
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Posted by ブクログ
安定の宇山佳佑作品でした。
いつもと違い、一章ごとに相談者が現れる短編でした。
風の記憶を映像化できる、風読堂店主級長戸辺風架と、ニート野々村帆高がコンビを組んで問題を解決していく。
帆高は、仕事をやめて家に引き籠もっていたが、母が引き出し屋に依頼し、自立支援の施設に連れて行かれそうになるが、仕事をすることを条件になんとか免れる。
そこで見つけた仕事が風読堂のアルバイト。
募集要件は、バイクに乗れること、ファンタジーを信じること。
先に述べたように、風架は風の記憶を集めて映像化できる能力をもつ。
一章は両親に日頃の感謝を込めサプライズプレゼントで、風の記憶を見せてあげようとする女子高生若葉のお話。実は逆サプライズで、本当の両親がいるという話を聞いた若葉は、本当の親の話を知ることに。
二章では、事故で息子を亡くし、臓器移植を承諾した母が、その後移植された人はどうなったのか知りたいという依頼。
移植を受けた人と臓器提供者は、お互い知ることはできないが、追尾する2人。なんと移植を受けた人は、闇バイトにどっぷりはまってしまっていた。移植を受けてからは、亡くなった人の分まで生きないといけないと言われながら育ち、それが強いプレッシャーとなってい。
臓器を提供した母は、自分の為だけに生きて欲しいと願っている。
三章は、急に売れっ子になった画家の息子からの依頼。実は、息子は絵に没頭し、母の葬儀にも出なかった父に嫌気がさし、絵をすべて売ってしまおうと考えていた。一方父は息子との仲直りをしたいと考えていた。
母の気持ちを風の記憶でみて、本当の思いを知る事になる。
四章は引っ越しで離れ離れになった高校生男女ふたりのお話。男の子は、骨肉腫で足を切断しなければならず、女の子はいじめに遭い不登校になっていたが、ふたりともそれをお互いに知られないようにしていた。本当の事を知った男の子は、帆高のサポートの元力を振り絞り、元陸上部として、走りを見せて勇気づけようとする。
特に三章はなきそうになるくらいいい内容でした。
Posted by ブクログ
一見マイナスに見える人物の裏に、隠された事情や優しさがあることを描いた、王道ながら心に残る展開だった。特に、画家のお父さんをめぐるエピソードが印象的だった。ぶっきらぼうに見える彼が、妻や子どもを想う姿に、人は見かけや態度だけでは測れないと感じた。