あらすじ
男だけの戦闘集団で生まれ育ったレオン。劣悪な環境から逃げ出し、道中でドラゴンを倒して美少女リリアを救出する。その才能を見込まれ、彼女が教官を務める勇者訓練学校に入ることになったのだが……。
「またモン娘に負けたんですか。お仕置きですね」
女の子に免疫がないせいで、あまりに無様な敗北を繰り返すレオン。そんな彼に納得がいかないリリアによって、お仕置きは日々エスカレートしていく。さらに同級生のシエラに赤ちゃん扱いされ、ギャルのフィオナにもてあそばれ、レオンの尊厳は行方不明! なのにレオンは、自分でも知らなかった「ある感情」に目覚めていく――?
新たな自分の一面に気づいちゃうファンタジーラブコメ、開幕!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「理屈が通っていて反論できないので、代わりに殴らせてください」
「理屈が通っているなら怒らなくていいのでは!?」
このやりとりだけで惹かれたドMなあなた、そう、あなたです。そんなあなたにはおすすめの一冊です!以上!
……ではあまりに短いので、もう少し続くんじゃよ。笑
※
以下、政治的主張、ネタバレを含みます。
散文、個人的雑記となります。
時間の許す方のみお付き合いくださいませ。
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めちゃめちゃ面白かったです。笑
冒頭でご紹介したやりとりからして痛快すぎますし、面白かった場面を紹介し始めたら、全ページに及ぶほど。さすがの岩波せんせです。軽快なやりとりにかけて、『はと』さんに並ぶ天才だと思います。なので、今回も私の脳内劇場はほぼほぼノラととキャストになりました。笑
場面の応酬が面白いのはもちろん、他作品で『三幕構成』を例に挙げておられたことによろしく、教養が非常に豊かであることも、容易くうかがえるのが岩波せんせの魅力。特に今回は、魔王に打ち勝つための勇者養成学校の登場人物たちが、何を学ぶのか、という描写には深く共感するものがありました。
どんなところに居ても、衣食住を欠かさないために、生存を果たすために最初に知るべきは、滋養を満たす手段と水を組める場所を見つけること、原生動物と出会った際の対処法、野営の建設技術などなどです。それを順を追って、「薬草学」「独創学」「心理学」「歴史学」としているあたり、呪術的な歴史に、人の恋やら思惑やらが多く絡み、またその呪術にはこれまた多くの草花が用いられたことも、さりげなく描かれているといっていいでしょう。まさに、ハーブ王子・山下智道さんが伝えている教養そのものです。実際、傷を負った際には血を失うため、鉄分をはじめ、血を作り出すために必要な滋養を得る方法……動物の解体と食肉加工、塗り・飲み薬の加工、患部の刺激と効果する肉体への相関図の把握……など、野営で生存する戦士として必要な知識は、まさに薬草学と歴史学に直結するのです。
現代となってはロックフェラー医学が中心となっていて、薬草そのものに興味を持つ人は減ってしまいましたが、ロックフェラー医学の根本は、人を健康にすることではなく、傷ついた兵士を1秒でも早く戦場に戻せる状態に直す、体の切り貼りの技術や、痛み止めの技術であったのです。戦争のための技術として発展した、闇の歴史は、まさに呪術的と呼んでもいいものでしょう。しかし、もともとは、野営で傷ついた身体を癒すための薬草学であり、事前にあるものから身体を治すという思想こそが、大切な原点であることを、市井の人たちにも、医者を志す人たちにも、どうか覚えていてもらいたいです。
魔王の侵略により家族を奪われた少女が、幼少期に滋養のある食事に恵まれなかったため、自身が魔王討伐を叶える身体に成長することはできなかった。そのことを悔いるのではなく、願いを託すに相応しい後継者を育てると決意する。リリア先生の経緯が、想像以上に暗く重いものであるものも、この世界の争いが、冗談などではなく、互いの生存圏を駆けている、生きようとする尊い命のぶつかり合いであることを伝えています。
できることなら、日本人である私たちが長く縄文時代に学び、聖徳太子が完成させた、あの「和を以って尊しとす」と、世界中の人たちと繋がりたい物ですが、悲しいかな、令和7年時点の世界は、未だ、嘘と裏切りが上手い人ほど支配の力を得るという仕組みで動いています。だからこそ、彼らの理屈で言うなら、「騙されないからこそ尊敬できる」のです。和を説いた聖徳太子も、煬帝に手紙を送らせた小野妹子を何故信じて送り出せたのかと言えば、彼が絶対に騙されない教養と、負けることのない合気道の達人であることをよくよく知っていたからなのです。リリアさんが、「魔族の命乞いも涙も、何の価値もありません」と決めてかかるのは、分かり合うことを諦めていると日本人には見えるかもしれませんが、古代の日本人こそ、西洋の嘘と裏切りの作法をよく知り、それに負けない賢さと強さを持ちながら、決して嘘と裏切りの思念に染まらないようにと、穏やかに生きていたのです。私は、リリアさんの選択を尊重したいと思いました。
近年のヒット作でいえば、フリーレンさんの考えにも近いかもしれません。実際、リリアさんとフリーレンさんは、家族を亡くした境遇が全く重なりますし、おそらく彼女たちの悲劇のモデルは、古代中国の六韜から来ているであろうことからしても、実在の私たちへの、風刺的な内容を含んでいるのは、むしろ自然なことかもしれません。
最後に、個人的脳内劇場配役紹介。敬称略。
レオン:石川界人 リリア:大地葉
シエラ:仙台エリ フィオナ:種崎敦美
です!石川界人さんは、青ブタの変態さんの印象からお招きしました。
あとはご存知の通り、ノラととキャストです。笑
ルーシア姉さん、未知ぱい、明日原ユウキさん、ですね。前述にフリーレンさんを紹介しましたので、奇しくも一致しました。笑