【感想・ネタバレ】魔剣少女の星探し 十七【セプテンデキム】のレビュー

あらすじ

「母様。リットは星を見つけました」

魔剣の使い手が争った戦争が終結して一年。母の願いにより最強の魔剣使いを目指すリットは、魔剣の所持が許される唯一の都市「セントラル」を訪れた。そこで彼女は各国の思惑が絡み合った《はぐれの魔剣》を巡る陰謀に巻き込まれ、優れた魔剣『山嶺』の使い手である少女、クララと決闘をすることに――。

「リット・グラントと魔剣『十七』、謹んでお相手いたします」
「もっともっとわたくしを楽しませてくださいまし!」

様々な目的を持つ魔剣少女たちが出会い、剣戟で幕は開かれる。
『ウィザーズ・ブレイン』の著者が放つバトルファンタジー、推参!

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Posted by ブクログ

魔剣の相性の中で、自分の持ち味を活かして戦う。マッチアップを考えるのが楽しいのは、前作ウィザーズ・ブレインから健在です。もう少し平和な感じの世界観ですが、ちゃんと世界が滅びそうになります。巨人が出てきて、戦います。前作1巻を読んでいて思い出しました。ただ、どうしようももない袋小路にいない分だけ、ハッピーエンドが遠くに見えていて、気持ちは楽です。今のところは笑

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2025年05月20日

Posted by ブクログ

何だか凄い世界観、というより闘争に次ぐ闘争といった印象の作品だね
そもそも作品背景が凄いね。魔剣戦争が2000年も続いた世界であり、その戦争前にも魔物と人類が闘った時代もある。それだけの闘争を経ながら、リットが生きる現代は平和が訪れている。それは争いを当然としていた時代に生まれた者達からすれば慣れない時代だろうね
というか、平和になったのがたった1年前である為か、リットを始めクララもソフィアも戦争時代を前提とした考え方が根底にあるね。その意味では彼女らの在り方は少々荒っぽいとまで言えるのだけど、それは結果的に魔物が再臨する騒動に対して迅速な対応を可能としているね


リットは一本気質というか行動原理の中心に剣一つで世を渡っていく信念が据わっている為か、非常に直線的な性格をしているね。それでいてある程度の貴族的教養を躾けられながら山籠り生活という変わった人生を歩んできた経験がミックスされ、あまり見た事のないタイプに仕上がっているように思えたな
そのような彼女の性質はそれこそ戦争の時代であれば、英傑と成り得るものであると受け止められる
でも、これから争いの無い時代を目指していこうとする時代で彼女の在り様は異質と成る

この平和にそぐわない異質さはクララやソフィアにも言える事だね
クララは魔剣の主に選ばれる筈がなかったのに選ばれてしまったから強さを求めつつその強さは婿探しを兼ねているなんて珍妙な事態となっているし、ソフィアは戦争を利用していた組織の端くれでありながら既に存在しない組織の陰謀に振り回されている
リット含め3人共に時代にも状況にも相容れない。だからこそ、この3人は気の合う部分が有ったのだろうね

ただ、3人は傷の舐め合い的な感覚で同調するのではなく、時代に相応しからぬ強さを互いに持つと知れたから同調していくのは特徴的
人生の大半を剣の修行に明け暮れてきたリットは当然として、溢れ出る才能に拠って他者を蹂躙するクララも、他人の魔剣であろうと自由自在に操って見せるソフィアも。3人の力量は常人を遥かに凌駕している。そんな3人は互いに対して容易に勝てやしないからこそ互いを尊敬し仲良くなれる余地が生まれる
そうした特異性により仲良くなっていく3人の関係は独特の気持ちよさが在るね


戦乱の世から平和な世となってなお強さを求めるリットだけど、先祖が繰り返してきた戦乱で活きる強さを求める性質が根幹に在るかというと、厳密にはそうではないと判る点が終盤の展開において活きてくるね
リットは確かに母の願いを承ける形で天下に名を轟かせんとセントラルにやって来たわけだけど、その本懐に在るのは母を喜ばせたいという親を愛する子供らしい感情。平和ではなく闘争を娘に教えた事を母が死の直前に悔やんだ姿が目に焼き付いている。だからそれを間違いではないと証明しようとしつつ、同時に母が自分の幸福を願ってくれた事も知っている
それは後半で自身の来歴を明かすジェレミアと対を成すものだね

ジェレミアとて父祖から承けた想いがあり、それが彼を平穏な世になろうとも受け容れられず計画を実行する様は少々リットと重なる部分はある。けれど、リットと決定的に異なるのは父祖から受け継いだ役割にジェレミアは想いを見出だせていなかった点だろうね。だから「この行いに何の意味があるのかは知らぬ」なんて平然と言えてしまう
それ故に彼はリットと思想的な対立は起きず、敵役でありながら打倒すべき敵には成り得ない

リット達の前に現れる敵は無機質な魔物に厄災、あまりに強大過ぎる敵だけど、何の理念も矛盾せずに敵と言える存在だからリット達は想いのままに戦える敵である。その瞬間に奇妙な縁で繋がった少女達が完全無欠の運命共同体的親友兼戦友となっていく描写は本当に良いね
そこからのバトル展開は壮絶オブ壮絶と言えるもの。てか、巨大な魔人を相手に人間サイズのままに人間の力で太刀打ちするなんて常識外れにも程がある。けれど、リット達の実力とて常識外れであると既に示されていたから彼女らなら打倒できるとも信じられる
それでも最後の一刀としてリットが生み出した至高の剣には仰天させられたけどさ。あれだけ様々な魔剣が登場した作品で最強に至る剣があれだなんてね。良い意味で度肝を抜かれたよ


ちょっとした歴史に名が残りそうな難事を解決したリット達。けれど、グラントの家名を復興するにはまだ武勲が必要なようで
ここでリット個人の問題と言えそうな件なのに、クララもソフィアも当然の顔して協力するつもりで居る様に心が暖かくなってしまったよ
彼女らは出会ってそれほど多くの時間を共にしたわけではない。けれど、星が夜空を流れ去るような短い時間の間に一蓮托生の間柄になった彼女らの在り方は特別。人生の終わりまで共に居るのではないかと思える程の仲の良さを見せつけてくれるラストには微笑ましくなりつつ、今後彼女らが解決するだろう世界規模の問題がどうなるのかも見届けたくなってしまったよ

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2025年09月16日

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