あらすじ
明治29年(1896年)東京。市谷に妻子と暮らす帝大教授、ラフカディオ・ハーンこと小泉八雲のもとに、松江から上京してきた少女・好乃が現れ、女中として雇ってほしいと申し出る。不愛想ながら利発で怪異にも詳しい好乃のことを、八雲やその家族、下宿人である書生の己之吉らは気に入るが、実は好乃には誰にも明かせない秘密があった。八雲はそれを知った上で好乃を雇い入れるが……。
日本の原風景と怪異をこよなく愛する八雲は、急速に変わりゆく東京の風景や、怪異を迷信扱いする風潮に心を痛めていたが、近代化の進むこの町でも怪しい噂はまだ辛うじて生きていた。森の中の食人鬼、怨霊に夜毎誘われる音楽家、妖怪を使役する易者、幻影の美少年、そして雪女やのっぺらぼう……。街でささやかれる数々の怪談を追う中で、八雲や好乃は、華やかな文明開化の陰を目撃し、失われていくものたちの声を聞くこととなる。
怪談はなぜ生まれ、なぜ語られ続けるのか。好乃の真の目的とは何か。そして、小泉八雲はどうして「怪談」を書かなければならなかったのか――。激しい変動の時代を背景に、名著「怪談」成立の裏側を描く文豪×怪異×ミステリー。
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Posted by ブクログ
峰守先生の作品でついに小泉八雲先生のお話を読めるとは!と興奮しながらの読書。
『怪談』の元ネタとなった出来事を八雲先生や登場人物たちが経験する話であり、八雲先生が優れた「耳」や「鼻」でその出来事の謎を解くミステリでもある贅沢なお話。
各話最後のコラムもまた興味深くて楽しかったです。
どの作品でもこのコラムが楽しみで楽しみで。
八雲先生のカタコトな日本語が何とも可愛らしい。
それでいて、先生の言う「ゴースト」の話になると割と流暢に説明し出すのもまたいい。
八雲ご夫妻が「パパさん」「ママさん」と呼び合ってるのもまた微笑ましくていい。
オリジナルの登場人物も『怪談』を知っているとニヤリとする「音」のキャラがいて、ちゃんとラストにそれが伏線になっているのもよかった。
女中の好乃の正体は少し想定外だったけれども。
苗字から何となく想像してたら違ったというね……途中しっかり匂わせあったけれども、元ネタ知らないとスルーしてしまうかと。
気付いた方はマニアだわ……
ある目的で八雲の家に転がり込んだ好乃、その目的は達成できるのか。
様々な経験をして気づきを得たあるキャラが一念発起して告げたこととは。
そして、八雲先生は一体どんな思いで『怪談』を書き上げたのか。
もちろんフィクションではありますが、八雲先生の足跡を学びつつ、こういうこともあったかもしれないなと想像(妄想)できる物語だったと思います。
本当に不思議な経験をしたからこそ、日本の怪談に惹かれたのかもしれないと、そう思わせる力があったので。