あらすじ
「女の地獄って地続きなんだよね。」
恋愛・結婚・親子関係・不倫・友情・美容・美醜――
あらゆることに絶望しながらあらゆることを諦めて
それでも希望を捨てきれない女性たちを
新進気鋭の作家 白井瑶が描く短編オムニバス小説。
『死者とセックス』『まだ「女の子」やってるの?』ほか
著者ブログで連載の短編小説に加え、
SNSで話題「全自動お茶汲みマシーンマミコ」
シリーズ完結の新作書き下ろしストーリーを収録。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
すっごく面白かった!!
この世界観はなんだろう。
スキップしてるくらい軽やかで柔らかい雰囲気なのに、登場人物の心情や人間味がリアルで心がぎゅっとなる。
マミコの魅力も含めて、この世界観に魅了される。
しかもただの短編じゃない。
最初から最後までちゃんと繋がってる。
色んな人物の色んな恋愛模様や人生観が色んなところで繋がってる。
それもすごく面白い。
女ってめんどくさくて健気でまっすぐで馬鹿で本当に最高ですね。
まるで女の子の聖書だ。
Posted by ブクログ
書店員から転職して、今度新しい職場で事務員になる。事務という仕事が未経験で何か参考になるかとこの本を手に取ってみたが、何とも凄い。
全自動お茶汲みマシーンから全自動お酌マシーンになり全自動既婚者性欲処理マシーンになる。でもマシーンだから傷つかない。
と言う最初の話の文章から釘付けになる。
赤裸々〜
リンクする短編の途中に入る主人公のお気に入りコスメ情報も今を生きている感じがして、実在している自分や自分達に似た女子感が凄い。
生っぽさがパッキングした秀逸な話。
読後悪くない!
Posted by ブクログ
衝撃的なタイトル。だが、なんと、中身はもっと衝撃的なのだ。
おそるべし、全自動お茶汲みマシーンマミコ。
この本は全自動お茶汲みマシーンマミコが主役の短編シリーズと、十三の読切作品で構成されている。
マミコは東京の中小企業に勤務する二十代のOLだ。マミコが勤務するその会社には「『一番若い事務員が』『自主的に』『誰の評価も求めずに』行うことを期待される昭和の残り汁に漬けたボロ雑巾のようなクソルーティン」がある。
一時間前に出社して行うゴミ出しやデスクの拭き掃除、朝のお茶汲み、飲み会でのお酌。それらにはパワハラセクハラすれすれの(つまり、本人が申し立てれば明らかにそうなる)ものも含まれている。マミコはそのたびに全自動お茶汲みマシーンになったり、全自動お酌マシーンになったりして、人間だったら怒ったり傷ついたりもやもやしたりする出来事を受け入れてこなしていく。
たとえば、こんな風に。
『マミコは1㎜の好意もない男に不意に身体的接触をされても鳥肌が立たない機能をオフにしていた油断を悔いたが、1㎜の好意もない男に不意に身体的接触をされても不快感を表に出さずに可愛らしいリアクションをとる機能のスイッチはオンになっていたので事なきを得た。』
ーーこれは営業部長のお土産のケーキを食べていたところ、美味しそうに食べるねと頭をポンポンと撫でられた時に描写されるマミコの心情(機能?)。
マミコには現在、付き合っている男が五人いて、しかもそのうち一人は既婚者だ。「若くて可愛い」しか取り柄が無いマミコは、男にすがって生きていかなければならないと思っている。それなのに、男のことは嫌いでみんな馬鹿に見えてしまい、本気で婚活をする気になれない。後々、登場する本命のテツくんも中島健人似の顔と大企業勤めのプロフィールだけが好き。だが、彼の方だって本命の自立した彼女がありながら、都合よくマミコに甘えて搾取する。マミコはここでは全自動性欲処理マシーンになる。大変だなあ。
この本にはそんなマミコが傷つき、擦り切れて故障し、ついには人間に戻ることを選ぶまでが描かれている。マシーンの殻はとても便利で、彼女は色んな機能をオフにしたりオンにしたりして傷つかずに生きていた。でも、そんな風にして向き合うべき事をごまかして過ごしたツケは確実に積み上がり、マミコの心は決壊するのだ。
確かにマシーンになれば楽だよなあ、と思う。求められることだけして、それが不公平でも怒りを感じる機能はオフにして、給料が安くても疑問に思う機能をオフにして、無理な押し付けに笑顔を返す機能をオンにするなど。
マミコの物語はいろんな場面で少しずつ、自分と重なる。
彼女が勇気を出したように、わたしも勇気を出せればいいなあと思う。
他にもDV男から離れられずにいる友人に対する憤りと悲しみや、サブスクのように養っていた男との決別の風景など、味わい深い読切がずらり。文体も軽やかでそれでいて時折毒が入り、素敵。
個人的には口裂け女に返り討ちになる加害男の話がイイです。
Posted by ブクログ
なんで女ばかりがこういう思いをさせられるんだろう。職場のお茶くみは若い女性がやるというクソルーティン、お菓子をあげれば若い女性は喜ぶというバカバカしい思想…他にも数えあげればキリがない。マミコはこんなバカバカしいルーティンを全部素直に受け入れて、流している。
通常、私はマミコのような女は嫌いである。こういう女がいる限り、クソルーティンは変わらないし、自分がクソ上司どもに気に入られる行動ができないのを自覚しているので、それを笑顔でこなすマミコには邪魔だという気持ちしか湧かないだろう。
しかし、マミコは違う。自分の本当の気持ちを無理やり閉じ込めるために、全自動マシーンになっているのだ。それが文章の端々から伝わってきて、少し切なくなり、マミコのことが嫌いにはなれない。
マミコはずっとずっと、我慢して生きてきた。自分のためだけに可愛いコスメを使って、ゆっくり時間を過ごせる日はそう遠くないだろう。
…それにしても、紹介されているコスメ、数も種類も多過ぎる。見ていてワクワクする人が羨ましい。
Posted by ブクログ
心の機敏をできるだけ無くすように、自分を守っているんだろうなと思った。色々と経てマミコが心を取り戻せたみたいでよかった。
気分が上がるコスメって大事!!
結局人には人の地獄があって、他人が羨ましくみえるから自分の手持ちのカードで生きていくしかないよね。結婚やパートナーがいること=幸せ、の価値観が薄まっていきますように。