あらすじ
薬師寺の僧侶・景戒によって九世紀初頭に編まれた、日本で最初の仏教説話集『日本霊異記』。仏教の教えを説こうとしながらも規範的な思想にはとどまらない、古代人の生き方が投影されている。一寸法師の源流、奪われた衣を取り返す力持ちの女――。上代文学研究の泰斗が、『古事記』『日本書紀』などの神話からの影響や、霊異記以後の伝承とのつながりを読み解く。国の創成期、エネルギーに満ちた人々の姿が鮮やかに蘇る。
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Posted by ブクログ
日本最古の仏教説話集『日本霊異記』は、景戒という僧によって9世紀初頭に編纂された。収められた話の多くは、律令と仏教が日本列島に定着することによって大変貌を遂げようとする8世紀という時代を背景にもち、そのなかで生きる多彩な人びとの不思議な日常を姿を描いている。仏教を信じる人も、仏教を謗る人も、仏教なんて関係ないという人もいて、みな、時代のなかでたくましく必死で生きている。8世紀という時代と、平城京およびその周辺のごくふつうの生活を知りたいのなら、『日本霊異記』を読むのがいちばんいいのではないかと思う。その導入として、お勧めしたい一冊である。