【感想・ネタバレ】おひれさま ~人魚の島の瑠璃の婚礼~のレビュー

あらすじ

京都の美大に通う柚希は、同級生・さつきの葬儀に出席するため、高知県沖にある故郷の離島・天沼島へ帰省した。島には『当たり年に選ばれた一組の男女が婚礼を行って島守になる』という因習があり、柚希は花嫁に選ばれていた。だが、柚希が想うのは花婿の翔馬ではなく、かつて自分を助けてくれた明人。実はここには人魚が棲み、ひそかに人魚漁が行われていた。そのため島民は、人魚の別称『おひれさま』の名を持つ地主神を強く信仰している。昨今は漁獲量が減り、『おひれさま』の祟りに怯える島民に婚礼を急かされながらも、二人は因縁に抗うように惹かれ合っていく。そんな中、さつきの死を巡る謎が浮かび上がり…。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

本当に怖いのは祟りをもたらすという「おひれさま」そのものか。
それとも「おひれさま」を盲信して何でも、本当に何でもやってしまう島の人たちか。
そもそも「おひれさま」の祟りは本物なのか。

因習に囚われた島と、その因習から脱出しようと足掻く若者たちの物語。
人魚である「おひれさま」は迷信の存在なのかなと思っていたら、作中にさらっと、実にさらっと実在のものとして出てきたので、結構驚いた。
驚いたと言えば、島の子供たち(といっても成人はしているが)の考え方が、因習からの脱却側に傾いていたことも。

因習の実像は語られるが、それで全てを説明された訳でもないし、問題が十全解決する訳でもない。
確かに若者たちは脱却を図った。
ただその結果が分かるのは、本編より後になりそうだ。
そもそも「おひれさま」が実在している点、「因習通り」惹かれあってしまった恋人たち、そして脱却前の結果だけを見るなら「因習通り」な点から考えると、簡単に逃れられないようにも思える。
主人公たちは自分たちで終わらせると確固たる意志でいるが、その未来を明確に語られていない以上、読み手側が好きに解釈できる仕様。
「おひれさま」の最後の行動も真逆の解釈が可能なので、読み手によって印象も解釈も変わる物語だと思う。
自分としては、無事の脱却を願うばかり。
犠牲になってしまった彼女が願った通りに。

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2024年07月31日

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